「従来型の広告モデルは通用しない時代になってきている。消費は、瞬間的、直感的になされる時代」――。
ユニクロブランドで全国津々浦々、老若男女を相手にするSPA(製造小売り)最大手、ファーストリテイリングは、消費行動の変化を敏感に察知し、接触メディアの多様化に機敏に対応すべく、組織を変え、業務を変えた。
コミュニケーションにまつわる人員と機能を、グローバルコミュニケーション部に集約。本格的なグローバル展開を前に、ウェブを基軸としたブランディング戦略に精を出し、下地を作った。
「UNIQLOCK」は直接、世界中の消費者とつながる自前のメディアとして機能し、同時にユニクロブランドが浸透していない海外で「Cool Japan」を強く印象づけた。
2009年10月に4番目のグローバル旗艦店、「パリ オペラ店」を出店したときは、大量の屋外・交通広告でパリの中心街を埋め尽くし、行列と話題を誘った。テレビCMは一切、打っていない。
数年後の主戦場、海外では、すでに旧来型のマスマーケティングと距離を置き、マスメディアに依存しない独自のコミュニケーションを追求しているユニクロ。その改革は、約800店舗を展開する国内市場にも波及しつつある。(文中敬称略)
※「ユニクロがウェブを愛する理由(前編)」からお読みください
全国のユニクロの周辺で異変が起きていた。コンビニには、普段と違う客層が大挙して訪れ、普段は滑走路のように開けた道路がクルマで混雑している。
昨年11月21日、まだ夜が明ける前の午前5時過ぎ。140文字のつぶやきメディア「Twitter(ツイッター)」をリアルタイムで監視し、人気のキーワードを自動的に抽出しているサービスは、このキーワードが瞬間的に最もつぶやかれていると伝えていた。
「ユニクロなう」
1時間後の午前6時は、全国のユニクロ店舗の半数で早朝セールが実施されるタイミング。深夜にもかかわらずツイッターや巨大掲示板「2ちゃんねる」では、店舗からの現場報告が飛び交い、それを見たユーザーが呼応する。
「俺も行ってくるわ」「あんパンもらいに行こうか」…。
400店の大半で行列ができ、開店後も次々と人が飲み込まれていく。東京・銀座店には2000人以上、大阪・梅田店は約650人が開店前に並び、マスメディアは終日、ユニクロの行列をネタにした。
パリ旗艦店のオープン時に現地メディアがこぞって報じたように。
直前での情報開示と強いファクトのオンパレード
この日は、ファストリの前身から数えて創業60周年を記念した過去最大級のキャンペーンの初日。広告宣伝やプロモーションを統括するグローバルコミュニケーション部にとっては、パリ旗艦店オープンに次ぐ大仕事となった。
メディア向けにプレスリリースを公表したのは、セール初日のわずか3日前、11月18日。要旨は以下の通りだ。
11月21日から12月31日の期間中、創業60周年を記念したキャンペーンを実施。期間中、1万円が10万人に当たる総額10億円のくじを配布。初日は路面店を中心に全国約400店舗を午前6時に開店し、「600円のヒートテック」や「10円の靴下」など超目玉商品を数量限定で用意。開店前に並んだ人には、あんパンと牛乳を配布…。
瞬間・直感型の消費行動に合わせた、直前での情報開示。日本中を瞬間的に駆け抜けるような、強いファクトのオンパレード。
こうした事実は、発表された18日中に、新聞社などのウェブメディアやテレビ各局が一斉に報じ、翌日の各紙朝刊にも「総額10億円還元くじ」といった見出しが踊った。
20日には、朝日新聞と読売新聞の朝刊に全面広告を出稿。「わたしたちの感謝を、還元させていただきます。ユニクロ」「10億円を還元させていただきます」「代表作を特別価格で」「明日21日(土)朝6時から」という文言を、大きな文字で強調した。
全国規模のキャンペーンだけに、パリの街をジャックしたような屋外・交通広告は実施していない。その代替として、初日には新聞の折り込みチラシをばらまき、ポストをジャックした。その数、全国のほぼ全世帯を網羅する4000万弱だ。
ただし、起床してチラシを見てから並んだのでは、早朝セールには間に合わない。初日の行列を生み、その勢いを持続させたキャンペーンの主軸は、ここでもウェブメディアだった。
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