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「基地経済」からの離陸(上)

普天間問題、「怒り」の真実

2010年6月14日(月)

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 「普天間移設反対」の声が、鳩山政権を崩壊へと追い込んだ。県民一丸となった反対運動の背景にある沖縄の現況に迫る。

 果たして、米軍基地がなければ、沖縄経済は沈没するのか――。そんな見方を、新たな産業のうねりが一掃しつつある。

 「軍用の島」は、再び商業の中心地に変わろうとしている。

(この記事は、日経ビジネス5月31日号リポート『「基地経済」からの離陸』を加筆、再編集したものです)

 それは、危険の代償とでも言おうか。

名護市の辺野古からクルマで約10分。大浦湾沿いの県道を走ると、突然、赤レンガ造りの豪華な建造物が目に飛び込んでくる。地元自治体が3億2000万円を投じて作った「地域交流拠点」は、地元の産品を販売する店舗として完成した。だが、いまだにオープンする気配がない。

 「光熱費だけでも年間に数百万円かかる。あんな交通量の少ない場所で、採算が合うわけがない」

 地元に住む浦島悦子氏は、そう言って口をつぐんだ。

辺野古近くに完成した「地域交流拠点」(撮影:金田 信一郎、以下同)

施設乱造が沖縄を潰す

 自然に恵まれた沖縄本島の北部に、補助金を使った設備が次々と建てられてきた。「住宅地に近く、世界で最も危険」と言われた普天間基地の移設先になったことで、名護市をはじめとした一帯の市町村に、10年間で1000億円もの振興予算が付けられた。

 だが、巨額のカネが投じられても、地元経済は上向かなかった。松浦氏はこうした「基地経済」への依存に危機感を抱き、辺野古移設反対の運動に加わってきた。

 「負の遺産をさらに増やせば、逆に沖縄を潰してしまう」

 自然を破壊するばかりか、施設を維持するコストが、地元に重くのしかかり始めている。

 3億円の交流拠点がオープンできないのも、営業すれば巨額の赤字を垂れ流すことが見えているからだ。「基地賛成派」だった前市長は、運営費の補填に「米軍再編交付金」のカネを投じると約束していた。ところが、今年1月の名護市長選挙で「基地反対派」の稲嶺進氏が当選すると、「米軍再編交付金は、私の方針と矛盾する」として予算計上を見送ってしまう。

 年間2000万円の交付金を当て込んでいただけに、計画を進めてきた地元10区の首長は青ざめた。営業を開始すれば、赤字がそのまま自治体の財政にのしかかりかねない。ほかの補助金を回してもらえるように懇願している。

 「もう、安易な補助金頼みはやめた方がいい」

 松浦氏は、同じことを繰り返しながら、静かに地元が蝕まれていく循環を止めたいと思っている。

 そんな思いは静かに広まっている。事実、地元住民から、稲嶺市長の判断を非難する声はわき上がっていない。「箱モノ行政」が、もはや地元を潤す振興策にならない現実を、県民は思い知らされてきている。

 毎年2月にプロ野球12球団が春季キャンプに入るが、来年から読売ジャイアンツが那覇市をキャンプ地にすることで、ついに10球団が沖縄に集結することになる。那覇空港からクルマでわずか5分。奥武山総合運動公園は室内練習場を備えた豪華な野球場が整備された。

 阪神タイガースがキャンプを張る宜野座村営野球場は、2006年、屋外球場の隣に「宜野座ドーム」を建設した。この建設費19億1400万円は、日米特別行動委員会の関係施設周辺整備助成事業として防衛予算で賄われている。だが、阪神が利用するのは2月のわずか数週間だけだ。

宜野座ドームを併設した宜野座村営野球場
画像のクリックで拡大表示

 今年5月の日曜日のこと。休日の午後だというのに、宜野座村営野球場は誰にも使われることなく、静まり返っていた。ほかにも、普天間移設の見返りとして約20億円の振興予算が投入された恩納村の「赤間運動公園野球場」など、多くの球場が建設されている。

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「「基地経済」からの離陸(上)」の著者

金田 信一郎

金田 信一郎(かねだ・しんいちろう)

日経ビジネス編集委員

日経ビジネス記者、ニューヨーク特派員、日経ビジネス副編集長、日本経済新聞編集委員を経て、2017年より現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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