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「もしも、ぞ、口蹄疫に感染した野生のイノシシやシカが、山を越えてきたらどげんすっとか」

一向に収束しない伝染病、怯える熊本のホタル守り

  • 宮嶋 康彦

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2010年6月11日(金)

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 宮崎県内で感染拡大が止まらない口蹄疫。6月10日、恐れていた都城に飛び火。肉用牛と豚の生産額が日本一の同市は、宮崎県が口蹄疫侵入を死守してきた地域だ。家畜の移動制限は、ついに鹿児島県の一部を巻き込んでしまった。

 そんな口蹄疫渦で、もう一つの隣接県、畜産王国といわれる熊本県でも、都城発症のニュースは、畜産農家を震撼させる事態となった。その中には私の知人の酪農家も入っている。県内では、人が集まる様々なイベントやスポーツ大会が相次いで中止。知人の住まいがある日本一のホタルの里でも、ホタル祭りが取り止めになったという。

 それを知らずに訪れる観光客には、知人など、ホタル守りたちが早々の帰宅をお願いするに至っているらしい。宮崎からは九州の脊梁山脈を隔てた熊本で、何が起きているのか、知人を訪ねた。

「山が発光しながら動く」といわれるほどのホタルの里

 熊本県下で屈指の畜産圏、菊池市。いっぽうで市内にはホタル生息地が多く、中でも旧旭志村は「山が発光しながら動く」といわれるほど「日本一のホタルの里」である。主峰鞍岳山麓には牛や豚が飼われ、初夏の小川ではホタルのフラッシュ・コミュニケーションが見られる、じつにのどかな土地柄である。

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 そんな牧歌的な土地が口蹄疫に怯えている。畜産農家はいうまでもないが、ホタル守りまでもが「鞍岳の向こう」の宮崎で拡大を続ける家畜の伝染病に神経を尖らせ、報道に聞き耳を立てる日が続いている。

 県内の種牛が感染保護を目的に、天草や阿蘇に分散飼育されるに至っては、

 「もしも、ぞ、人や車がウィルスを持ち込む以外に、ぞ、口蹄疫に感染した野生のイノシシやシカが、山を越えてきたらどげんすっとか」

 などと、現実には起こり難いことさえ、ある種のリアリティーをもって語られるほど、現地では口蹄疫に対する緊張感が高まっている。

“ホタル守り”が恐れる口蹄疫

 前述したように菊池市・旭志地域は国内有数のホタルの里である。そこにはホタルの保護・保全活動をする個人や団体が多く存在する。私は20年ほど前から、ホタル撮影のために全国を行脚してきた。桜行脚が終わればホタル旅、旧旭志村には何度も通い、すばらしい発見と撮影をしてきた。そのおかげで同市には幾人もの親しい人ができた。

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 畜産とホタル、あるいは、ホタルと口蹄疫は、一見したところ何の関わりもない。もとより無縁と思っていたが、ある日、旭志の知り合いに「今年のホタルの発生状況はどう?」と問い合わせたことから、ホタルと口蹄疫の只ならない事態を教えられた。

 「今年のホタルフェスタも地区のホタル祭りも中止になった」と声が暗いのである。なるほど、旭志ほどのホタルの里であれば、九州をはじめとして、関西や関東からも客が来る。そうそう、以前ホタル撮影で知り合った人は宮崎県都城のグループだった。私はホタルと口蹄疫の因果を知り、背筋につめたいものを感じた。

 毎年、ゲンジボタルが乱舞する時期には、県の内外から、多いときは一晩で1万人が訪れるほどである。

もしも旭志で口蹄疫が出たなら

 JA菊池管内ではおよそ4万7000頭の牛が飼われ、2万2000頭の豚が飼育されている。また、非組合員が経営する大型豚舎もあり、牛と豚の飼育総数は8万頭に迫るといわれている。20数年、精力的にホタルの保護活動をしてきた、稲葉一義さん(旭志在住)は訴える。

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