日本の自動車関連メーカーが中国で研究開発を加速している。世界最大市場の消費者のニーズをつかみ、グローバル戦略にも活用。人材確保が容易なこともあり、部品メーカーも頭脳獲得を急いでいる。
トヨタ自動車は、中国で数百人の技術者を採用して大規模な開発拠点を設置。中国での研究開発を本格化させる。
万国博覧会で注目を浴びる中国・上海市から高速道路を西へ車で1時間。江蘇省常熟市の巨大な開発区が姿を現す。総面積は50km2。この広大な土地で、トヨタは新しい研究開発拠点の設立準備を進めている。
常熟市が国家級の「自動車部品産業園」と銘打ち、開発を進める自動車関連の産業集積プロジェクトで、その目玉がこの研究開発センターだ。
「中国の研究開発拠点の新設は、当局に申請中で、場所も言えない」とトヨタはするものの、日本貿易振興機構(JETRO)のホームページでは、「トヨタの研究開発センターの(常熟市の開発)区内への進出が決まった」と書かれている。現地を訪れた人も「看板が出ている」という。関係者によると認可プロセスは最終段階にある。

中国向けの自動車を集中開発
2010年中にも新拠点が動き出すと、トヨタの中国における研究開発体制は大きく変化する。トヨタはこれまで中国で一汽トヨタと広汽トヨタという2つの合弁会社を中心に事業展開してきた。両社には開発部門もあるが、人数は少なく、機能は限られている。
開発機能の分散は極めて非効率だ。2カ所でそれぞれ研究開発すると、どちらかで開発した自動車を、もう一方で生産・販売するのは難しい。
しかし米国を抜き世界最大になった中国の自動車市場は急拡大しており、チャンスは大きい。現地の顧客嗜好に合わせた自動車を集中的に開発して、複数の合弁会社に供給するには、トヨタ単独の研究開発拠点が欠かせない。
「単独の開発拠点の設立はトヨタの悲願。中国における事業展開の大きな力になる」(トヨタの関係者)
既にトヨタグループの企業が、常熟市に進出しており、中国の工場に部品を供給する物流機能を提供している。常熟市は広い中国の国土を南北に結ぶ中間点にあり、周辺に自動車産業が集積しているなど地の利がある。
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