「時事深層」

“鉄屋”が作る防波堤

防災インフラ(神戸製鋼所)

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2010年6月15日(火)

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湾曲した防波堤で高波の運動エネルギーの方向を変えて跳ね返すフレア護岸。鉄とコンクリートから成るハイブリッド防災インフラを手がけるのは“鉄屋”の神戸製鋼所。景観と環境に配慮した工法で、台風街道に位置するアジア諸国・地域の市場開拓を狙う。

 大分県の別府湾沿いを走る国道10号線は、温泉街の別府市と大分市を結ぶ交通の大動脈だ。「別大国道」とも呼ばれるこの幹線道路は、途中で野生のニホンザルで有名な高崎山の裾野を通過する。

 この地域は、台風シーズンには道路に高波が押し寄せる「特殊通行規制区域」に指定されている。嵐のたびに、幾つかの車線が通行止めになることも珍しくない。防波堤に衝突した高波が護岸を越えて道に押し寄せるためだ。

 この現象は「越波(えっぱ)」と呼ばれる。高崎山地区では、越波被害を解決するため2つの方法が議論されていた。1つは直立した護岸壁を現在より5m高くする方法。確かに、越波は抑えられるが、道路から別府湾を見渡す景観が犠牲となる。

景観を守れる防波堤

 もう1つが、道路自体をもっと高い位置に作るアイデアだ。別大国道は並行してJR日豊本線も走る。盛り土をして道を嵩上げする工事は、費用から考えても現実的ではない。

 国土交通省九州地方整備局大分河川国道事務所の田中宏二・建設監督官は「道路の高さを維持したまま、過去50年間に別府湾に吹いた最大風速時の波に耐える新技術を採用した」と話す。

 その新技術が「フレア護岸」だ。国交省は、2006年に別大国道の拡幅工事と護岸整備に着工。現在も工事が続いている。フレア護岸を採用した高崎山地区では、道路を高くするよりも工事予算が20%、約20億円ほど削減できた。この新技術は道を広くすることにも役立っている。これまでは、護岸壁と車道の間の50cmの幅が歩道として利用されていた。この狭さではひと1人通るのがやっとだ。

 弧を描くように上部が海側に張り出したフレア護岸は、護岸の上部を利用できる。そのため、歩道を4mに拡幅できた。護岸の上を歩くため別府湾を一望する景観も損なわれない。「10号線は毎年2月に別府大分毎日マラソンが開催される。景観維持も私たちの役目だった」と田中建設監督官は話す。

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