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最後に顧客を引きつける営業とは

いい男、沈着冷静、電話だけ…そしてついに巡り会った

2010年6月25日(金)

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 ノルマがあるのに営業成績が上がりません。辞めたいです。どうしたら…。(男性)

 遙から

 営業マンの能力を見るのに短期間で大勢を比較できるのが、賃貸不動産業の営業だ。いくつか長所と短所も含めてご披露したい。

 まずは、飛びつきタイプ。とにかく朝一番に「ありがとうございますっ!」と威勢のいい留守電が入る。いつでもどこでも駆けつけますという印象を声とリアクションの早さで相手に届けるのだ。

 そのテンポのよさに乗せられるように案内されると、一件一件の物件を誉め立てる。後半からは契約を決めてほしい相手のはやる気持ちが透けて見え、客としてはより慎重にならねばと気持ちにブレーキが働く。飛びつきタイプは、熱しやすく冷めやすかった。フットワークはいいがその後の連絡が消えるのも早かった。

 次に、いい男タイプ。甘いフェイスで笑顔をたたえ、あくまでも“ご案内”であって、“決めてほしい”気持ちはまずは出さない。そのソフトな導きの心地よさに、こちらも自分主導で物件を吟味でき、いい時間の共有をしてくれる。じっくり考えてから決められるだけに、「自分で決めた」感覚が客に残り、「営業に乗せられたのでは?」という疑心暗鬼は起こらず健全な決断ができる。ただ、それだけに、後日、決めた物件を冷静に判断もでき、「いったんは決めたけど、やっぱりやーめたっ」ということにもなった。必死さがなくソフトすぎるのも営業評価としてはいかがなものか。

 判断ミスをせずに済んだ客としては感謝し、上司の目では心配した。“好青年”は武器になるが、結果を保障するものでもなさそうだ。

 次は、電話だけタイプ。どうでもいい時に留守電だけが残っている。「いい物件がありますからよろしく」。これではだめだ。どんな物件なのか、どういいのか。どこが違い、なぜ今電話したのか。営業のくせにそれらの粉飾がなさすぎる。「いい物件があります」だけの情報で客から折り返しの電話があると思うほど、客は餓えてはいない。すでに、駆け付けた営業たちの配下であっちこっちと動きまわっているのだから。電話だけタイプは、永遠に、電話だけだ。そこに“思い”を込めなければ人は動かない。

 次、冷静沈着タイプ。淡々と案内し、誠意をもって対応する。そこにいっさいの熱さはないが、勢いで勝負する辣腕営業に疲れた客にとっては、やっとフツーのテンションで会話ができることにまず安心する。質問には必ず返事が返ってくるし、動きも機敏だ。その逆、つまり、喋りの勢いはいいが、動きが緩慢なタイプは信用できない印象が残るが、この、沈着冷静なのに動きが機敏、というタイプだと格段に信用できそうに感じるから不思議だ。つまり、喋りよりもとっとと動け、ということか。客は話もだけど動きも見ている。だが、冷静なだけに、客に物件で困ったことが起きたときにも“冷静”だった。「その後、どうなりましたか?僕にできることは?」といった温もりのあるフォローはいっさいなく、本当に、冷静沈着、だった。

 最後、質問タイプ。まずは物件を一個紹介するが、そこで焦って営業するのではなく、まずこれを見てどう思うかとか、客のバックグラウンドを知ろうと質問する。客のセンス、暮らし、感性、好きな場所。

 いろいろ質問される度に、そこに“本気”さを感じる。本気で私にあうものを探そうとしてくれている。顔も見ないで「いい物件があります」なんて論外だと思えるのはこういう営業に出会った時だ。物件を見た時の客の表情もよく観察している。「3つ目の物件の時に、一番嬉しそうでした」という営業の意見が、迷う客の背中を押したりする。

 「やっぱりやめとく」と辞退した後も、しつこくなく、敵度なタイミングでメールか電話が来る。内容は、「これからも僕に探させていただいていいでしょうか?」

 これもまた、質問だ。留守電もまた、「○○区で、○○円の、こういう、ああいう、物件があります。これはお好みではないですか?」と具体的だ。思わず、こちらから電話する。

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「最後に顧客を引きつける営業とは」の著者

遙 洋子

遙 洋子(はるか・ようこ)

タレント・エッセイスト

関西を中心にタレント活動を行う。東京大学大学院の上野千鶴子ゼミでフェミニズム・社会学を学び、『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』を執筆。これを機に、女性の視点で社会を読み解く記事執筆、講演などを行う。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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