「ニュースを斬る」

このままでは新規ベンチャー総崩れ?

未公開企業の出資に新規制で、業界騒然

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2010年7月2日(金)

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 「今回の規制の日本ベンチャーへの打撃は計り知れない。世界の勢いからますます取り残される恐れがある」
 昨年9月にマザーズ市場に上場したばかりのがん治療薬に特化する創薬ベンチャー、キャンバスの加登住眞・最高財務責任者(CFO)はこう嘆き、危機感を募らせている。

 1日も200円近く日経平均株価が下げ、瀕死の日本の株式市場。暗いニュースばかりの株式市場にさらに冷や水を浴びせかねないと関係者の話題しきりの案件がある。

 それが日本証券業協会が6月中旬に公開した協会規則の改正案だ。

 改正案では、未公開株の詐欺防止のために、個人投資家を相手に増資をした未上場会社について、証券会社が上場時の新株発行や売出しを引き受けることを原則、禁止することを提案している。つまり、この規則案が通った場合、上場を目指す企業は上場前に個人投資家から出資を募ることができなくなる、というわけだ。

 日本証券業協会は自主規制団体であり、加入は任意。だが、現状では日本全ての証券会社が加入しているため、もしこの案が実現すれば、全ての証券会社に規則が適用される。

 昨年9月から議論を取りまとめている同協会自主規制本部自主規制1部の内尾博文部長は「まともに上場を目指す企業が不特定に個人ばかりを相手に資金を募集することは考えにくい」「個人が消費者センターなどに未公開株勧誘などで相談しに行った場合に『日証協の規則でそうした行為は禁じられている』と説明できるようになれば、抑止力になる。急増している未公開株詐欺に対して、アナウンスメント効果も含めて、きつめに条文の文言も書いている」と話す。

エンジェル投資ができなくなる?

 未公開株詐欺防止という大義。だが、これに対して「ベンチャーへの悪影響が大きすぎる」と猛然と抗議の声が上がっている。

 市場関係者が問題視しているのが、この規則が導入されると、これまでベンチャーの創業資金を支えてきたエンジェル投資家と言われる個人投資家に対する資金募集が困難になりかねない点だ。

 有望ベンチャーを育てるゆりかごの役割を果たすベンチャーキャピタル(VC)。有力なVCがつくことで、ベンチャー自身の信用力アップにもつながり、上場や顧客開拓にもつながる。だが、いくらベンチャーのビジネスモデルが有望だとしても、こうしたVCなどの機関投資家には制約があり、投資するのはベンチャーが一定程度の売り上げ規模や顧客開拓を達成してからだ。

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著者プロフィール

蛯谷 敏(えびたに・さとし)

2000年、日経BP社入社。通信業界誌『日経コミュニケーション』記者を経て、2006年より日経ビジネス記者。情報通信、ネット、金融、不動産、政治、人材など色々担当。「一極集中」から「多極分散」へと移り変わる様々な事象をテーマに日々企画を考えている。



このコラムについて

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