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梅原さんが関わるプロジェクトはなぜ成功するのか?

2010年7月13日(火)

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 近畿地方を中心に店舗を展開している大手スーパー、イズミヤ。この6月、京都市内のカナート洛北店でちょっとした異変が起きた。

 この日、水産売り場に並べた三重県産あさり。通常は1パック当たり250円ほどで販売しているが、このあさりは1パック380円とかなり高めの価格設定だった。しかも、あさりの粒も11~12粒と少なく、見た目のお得感もあまりない。普通であれば、苦戦必至の商材だ。

伊勢の手堀りあさり。旬の今は実入りがよく、味も深い(写真:篠原匡)
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 ところが、予想に反して、100パック近くが飛ぶように売れた。それも午前中のうちに。「はっきり言って、想像以上」。イズミヤの担当者がこう語るように、特売ならともかく、これだけ高いあさりが1日で100パックも売れることはあまりない。

 このあさりは三重県伊勢市の海産会社、荒木海産と伊勢湾漁業協同組合の今一色支所が試験的に始めたものだ。

「ぷりぷりの伊勢手掘りあさり」

 高品質のあさりで知られる三重県産。その中でも伊勢神宮のお膝元、今一色の浜で取れたあさりだけを使用している。五十鈴川や宮川、勢田川の豊富な栄養分で育った今一色のあさりは実入りの良さと味の深さで世に聞こえた存在だ。この今一色産の、特大サイズだけを販売した。

 こだわりはそれだけではない。

 あさりは1年を通してスーパーの店頭に出ているが、最もおいしい時期は産卵前の4月後半~6月の始め。事実、この時期のあさりはふっくらと大粒で甘みも最高潮。水で蒸し煮にするだけで、ふっくら飛び切りの出汁が出る。この旬の時期に取れた特大あさりに限定している。

もちろん、砂出しもぬかりはない(写真:篠原匡)
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 しかも、地元漁師が手掘りで取ったものだけだ。あさり漁はポンプで砂ごと吸い上げる機械掘りが主流だが、伊勢湾漁協管内では、漁師が鋤簾ですくい取る手掘りが連綿と続いている。機械掘りに比べて、手掘りは手間がかかるが、貝に傷が付きにくく、鮮度も落ちない。

 もちろん、砂出しもぬかりない。荒木海産は伊勢湾に面しているため、新鮮な地下海水を汲み上げることができる。敷地内の海水プールの水は新鮮な海水で一杯。しかも、地下海水のため温度変化もなく水も合う。あさりを休ませる条件が十分に揃っているため、ここのあさりは旺盛に砂を吐く。

 この手掘りあさり、パッケージや店頭用のポップの評判もいい。

 デザインの基調は白と水色のストライプ。そこに、「伊勢手掘りあさり」と商品名が筆書きで描かれている。キャッチコピーは「いせてぼりあさりぷりぷり」。確かに、旬に味わう今一色の特大あさりはぷりぷりとした食感である。ロゴは鋤簾で砂を掻くちょんまげ姿の漁師。手掘りの伝統と雰囲気がうまく伝わってくる。

 このデザインは高知県在住のグラフィックデザイナー、梅原真氏が手がけたものだ。「おまんのモノサシ持ちや!」で書いているように、梅原氏のデザインには土地の遺伝子やアイデンティティが色濃く反映されている。

「伊勢手掘りあさり」の基本デザイン(写真:梅原デザイン事務所提供)
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こちらは店頭用のポップ(写真:梅原デザイン事務所提供)
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 もっとも、いごっそうを地でいく梅原氏はそう簡単に仕事を受けない。1つ数万円で農家の段ボールのデザインを描く反面、大金を詰まれても気の入らない依頼は断ってしまう。その梅原氏が手掘りあさりの依頼を受けたのはなぜだろうか。

ヤンキー社長のヤンキーあさり

 梅原氏にデザインを依頼したのは荒木海産の4代目、荒木平社長である。荒木海産は伊勢湾産のあさりを中心に買いつけている仲卸業者。伊勢湾漁協管内で取れるあさりの80%を取り扱っている。売上高は約10億円。伊勢を代表する水産加工会社と言っていいだろう。

 大阪中央卸売市場での修業を経て地元に戻った荒木社長は30歳を過ぎるまで、ジェットスキーの選手として世界中を転戦していた。だからだろうか。がっしりとした体躯と日焼けした眼孔鋭い表情はかなりの迫力だ。梅原氏も荒木海産の仕事を「ヤンキーあさり」というコードネームで呼んでいる。

 この“ヤンキー”こと荒木社長が梅原氏に出会ったのは2008年に三重県が主催した「三重ブランドアカデミー」でのことだった。

 地域の資源を活用し、商品作りを模索している事業者を支援するために設立されたブランドアカデミー。参加者それぞれがテーマを設定、外部のコーディネーターのサポートを得つつ、具体的に商品作りを進めていくというものだ。このブランドアカデミーに、梅原氏はデザインの講師として参加していた。

 荒木社長がブランドアカデミーに参加したのは消費者の認知度を高めたいと考えたからだ。

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「梅原さんが関わるプロジェクトはなぜ成功するのか?」の著者

篠原 匡

篠原 匡(しのはら・ただし)

ニューヨーク支局長

日経ビジネス記者、日経ビジネスクロスメディア編集長を経て2015年1月からニューヨーク支局長。建設・不動産、地域モノ、人物ルポなどが得意分野。趣味は家庭菜園と競艇、出張。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師