梅原さんが関わるプロジェクトはなぜ成功するのか?

 2009年10月に連載を始めた「シアワセのものさし」。高知県在住のグラフィックデザイナー、梅原真氏の足跡を通して、ヒット商品を作る発想法や地域社会のあり方、個人の生き方などを考えた企画でした。連載は計10回。最終的に、書ききれなかったエピソードを加筆して、日本経済新聞出版社から書籍になりました(「おまんのモノサシ持ちや!」)。

 ここで、梅原氏をご存じでない読者のために簡単に触れておきましょう。

農林漁業と辺境に関する仕事以外はお断り

 梅原氏は1950年生まれの60歳。身長182cm、体重82kgの大男で、北大路魯山人を彷彿とさせる黒メガネと愛嬌の溢れる分厚い唇が特徴的。常にシャレとユーモアに満ちていて、飲み会の盛り上げ役も買って出る。このように、お茶目で楽しい性格を持つ反面、一旦、頭に血が上ると手に負えません。

梅原さん 7/14(水)のNHK「おはよう日本」 7:00~45の間に登場します。(写真:宮嶋康彦)

 クライアントだろうが、県庁のお偉いさんだろうが、漠然と依頼に行けば、「おまんは何がしたいんじゃ」と野太い声で一喝されることは確実。依頼者に熱いハートとコンセプトがなければ本気で怒り出します。受話器の向こうの梅原氏を恐れるあまり、ジャンケンで電話の担当を決めたクライアントも現実にいました。

 この梅原氏、手がけるプロジェクトにもこだわりがあります。受ける依頼は農林漁業と田舎に関するものばかり。最近でこそ、高知以外の仕事を受けるようになりましたが、10年ほど前までは高知県以外の仕事は受けませんでした。大企業からの依頼もありますが、多忙を理由に断っています。

 そんな頑固でおっかない「いごっそう」ですが、関わる商品やプロジェクトは確実に成功を収めるから不思議なものです。

 1980年代後半、商品開発やプロデュースに関わった明神水産の「一本釣り藁焼きたたき」は20億円を超えるヒット商品になりました。ただの砂浜を美術館に見立てた黒潮町の「砂浜美術館」も大勢の観光客を集める観光スポットに変わりました。ここで開かれている「Tシャツアート展」は海外に広がり始めました。

 都会でも有名な高知県馬路村の特産品、「ぽん酢しょうゆ ゆずの村」のデザインも梅原氏の手によるもの。隠岐諸島の1つ、島根県海士町のヒット商品になった「島じゃ常識さざえカレー」も彼がパッケージデザインを描きました。地域おこしで定評がある四万十町の「四万十ドラマ」に深く関与、古新聞を世界が注目するエコバックに仕立てました。

 編集能力も人後に落ちません。

梅原氏が関わるとプロジェクトが成功する不思議

 3月で惜しまれつつ廃刊しましたが、高知県には「とさのかぜ」という県広報誌がありました。行政情報が一切ない異色の広報誌として県内外で多くの支持を集めたとさのかぜ。編集長を務めていたのは梅原氏でした。彼が編集長に就任した途端、誌面はガラリと変わりました。

砂浜美術館の「Tシャツアート展」は海外に広がり始めた(写真:砂浜美術館事務局提供)
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 梅原氏が関わると、不思議なほどうまく回るプロジェクト。なぜ梅原氏が関わるとプロジェクトが成功するのか。梅原氏の作品が人の心を打つのはなぜか。なぜ農林漁業と田舎にこだわるのか――。「おまんのモノサシ持ちや!」では、代表的な作品やプロジェクトを通して、そのメカニズムを明らかにしました。

 もっとも、梅原氏の業績は書籍で触れたものだけではありません。現在も日本のあちこちを飛び回り、地域の資源に光を当てるべく、様々なプロジェクトを進めています。そこで、最近の梅原氏の活動を数回にわたって描こうと思います。1回目は三重県伊勢市の手掘りあさり。なぜ梅原氏はこの仕事を受けたのでしょうか。(日経ビジネス 篠原匡)

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著者プロフィール

篠原 匡

篠原匡

ニューヨーク支局長

日経ビジネス記者、日経ビジネスクロスメディア編集長を経て2015年1月からニューヨーク支局長。建設・不動産、地域モノ、人物ルポなどが得意分野。趣味は家庭菜園と競艇、出張。

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