「守るべき弱者はどこにいる?」

選挙戦を支える「身分が不安定」な裏方たち

国会議員秘書のケース

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2010年7月12日(月)

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 親分が落選すれば、自分も失職する――。

 参議院選挙の開票後、当選の万歳ができたか否か。国会議員と秘書は運命共同体。秘書にとっても、自分の首をかけた選挙戦の結果でもあった。

 今回改選した野党議員のある秘書は「当選確実と言われていても、政治の情勢は刻一刻と、どう風向きが変わるか分からない。数カ月前から、議員がどうなるか。そわそわして、次の就職先を心配していた」と話す。また、やはり改選組となる与党のある秘書は、いつもは地元には入らない国会議員会館に常駐する“国会秘書”だったが、公示前から選挙区に入った。参院選は歴史的にも無風区と呼ばれる選挙区も少なからずあったが、2人区への2人の候補擁立や消費税論議などによる政党支持率の低下、議員そのものの支持者離れなど様々な要因で、与党に所属していると言えども落選の危険水域にある候補者は多かった。

 国政選挙があれば、選挙当事者だけでなく、ほかの国家議員を含め選挙区の地方議員にとっても、自分の存在をPRする格好のチャンスとなる。今回の参院選でも衆議院議員の秘書も当然、参院選に借り出された。ある秘書は「前回は民主党に風が吹いたが、次はどうなるか分からない」と、次の総選挙に向けて親分の顔と自分を売り込むため必死だった。特に、新人議員につく秘書は「候補者自身、選挙のことを何も分からず、誰かがやってくれると、ベテラン秘書をあてがわれることを期待している傾向がある」と呆れ顔だ。

多岐にわたる秘書の仕事

 普段は地元にいない国会の秘書たちも、議員が当選しないことには自分たちも路頭に迷う。万が一の落選後、自分の就職活動を考えても「地元のことを知っている、選挙も知っている」とPRするため、選挙のスキルを磨こうと地元での活動に精を出して保険をかける。

 選挙でいつ失職するか分からない職業である。それでも、秘書に対して良心的な議員が親分であればいいのだが、秘書とは労働基準法というものの“蚊帳の外”に置かれている日頃から立場の弱い存在でもある。

 国会議員の秘書は、国会法に基づいて、政策担当秘書、第一秘書、第二秘書の公設秘書を国費で置くことができる。それとは別に議員が独自に採用する私設秘書から構成される。公設秘書は国家公務員特別職となり、国会議員1人当たり3人まで配置することができる。私設秘書は個々の雇用となるため、特に制限はない。

 私設秘書の人数は把握されていないが、公設秘書だけでも、衆参総勢で約2100人となる。ちなみに政策担当秘書は、衆議院や参議院が主催する政策担当秘書試験を合格した者に限られ、試験合格後に合格者登録簿に登録して独自に国会議員事務所にアプローチして就職活動をしなければならない。

 秘書の仕事は多岐に渡る。議員のスケジュール管理はもちろん、選挙となれば情勢を読み、資金集めにも走る。議員の代わりに会合にも出席する。国会での質問を作ることや中央官僚への情報公開の請求、法律の素案作り、法制定の動きの先読みなども秘書の役目だ。秘書にも、いろいろなタイプがいる。大きく分けると、以下になる。

(1) 議員の考えや政治姿勢に心酔している
(2) 政策を作り実現したい
(3) 将来は自分も選挙に出たい
(4) 会社員的に秘書業に徹する
(5) 後援会の幹部の縁故   ――など

 その中でも公設秘書は一見、守られているようだが、福利厚生という文字はなさそうだ。国家公務員特別職だが、国家公務員共済年金保険に加入することはできず、厚生年金保険に加入する。健康保険は国会議員秘書健康保険組合に加入するが、議員定数が1人減ると公設秘書が3人減ることになるため、保健組合存続も死活問題だという。ほかの公務員と同様に雇用保険には加入していないため、失職したからといって失業保険がおりるわけではなく、収入はゼロとなる。今回、参議院議員で改選組の秘書は、議員が落選すれば議員の任期終了となる7月25日をもって同時に退職することになる。

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著者プロフィール

小林 美希(こばやし・みき)

労働経済ジャーナリスト。1975年茨城県生まれ。明治学院大学中退、神戸大学法学部卒業。株式新聞社、毎日新聞社エコノミスト編集部で記者として働く。2007年2月よりフリーになり、若者の雇用、出産・育児と就業継続などのテーマに取り組む。主な著書に『ルポ 正社員になりたい ――娘・息子の悲惨な職場』(影書房)、『ルポ “正社員”の若者たち 就職氷河期世代を追う』(岩波書店)



このコラムについて

守るべき弱者はどこにいる?

「派遣切り」「名ばかり正社員」・・・。日本の労働環境の悪化に伴う雇用不安が人々の生活を脅かす。社会がきしみ、変化に揺れている中で今、何が必要なのか。個々の働き方や生き方を通して、国、企業、個人ができることは何かを探っていく。

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