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ニッチで考えるエネルギー源と「融和的なしっぺ返し」戦略の優位性

2010年7月15日(木)

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 筆者は、学生時代から現在に至るまで、自らの専門・仕事とは一見関係なさそうな進化論や生態学、はたまた動物行動学や人類学にも大いに興味を持ってきた。それは、進化論や生態学等には、随分とビジネス・経済や政治・社会問題・人間関係に応用できそうな理論やエピソードが満載で、宝の山にも思えたからである。

 近年の社会科学の新潮流にも結構応用されているし、逆にゲーム理論などは経済学から進化論や生態学に広く取り入れられている。実際、筆者の本業であるエネルギー業界の動向分析にも、発想のヒント、切り口として結構役立ってきたと思っている。そこで、これら生物学的発想で、エネルギー分野の例も含めて、興味深い幾つかのビジネス的・社会的トピックスを、エッセイ的な知的エンターテイメントとして紹介したい。

ニッチの不思議

 ニッチというのは、日本語では生態的地位と呼ばれている。しばしば、経済誌などでは、その意味が矮小化されて、「隙間」産業、即ちメインストリームではない裏通り横町のビジネス分野の意味で用いられ、否定的と言うか、揶揄されたニュアンスで語られることが多い。

 しかし、本来は、他の種との競争上の制約や物理的環境によって規定される、ある生物種が生存可能な時空のことだ。全く否定的な意味はなく、隙間でないメインストリームもまたニッチである。人間社会では、古今東西、ギャングやヤクザの類は、普遍的なニッチとして存在していて、根絶されたことはないし、将来も根絶は困難だろう。ある地域のギャング一味を全員逮捕しても、何れ別のグループが新たにこのニッチに参入して来て、しばらくすれば元の木阿弥になる。

 何れの学校や学生社会でも、毎年学生が入れ替わるにもかかわらず、「優等生」、「落ちこぼれ」、「不良」というニッチは必ず存在する。動物界では、草食獣・肉食獣・スカべンジャー等のニッチが、熱帯/寒帯・海/陸・魚類/昆虫/爬虫類/鳥類/哺乳類等の次元を問わず普遍的に存在している。

 例えば、元来豪州の哺乳類は、人間を含む現生哺乳類の主流である有胎盤類が発生する前に、他の大陸と分裂してしまったため、より古いタイプであるカンガルーの様な有袋類しか存在しなかったが、有胎盤類の肉食獣であるオオカミやトラ・ライオンと全く同様に、カンガルー等を餌にする有袋類の肉食獣、袋オオカミやタスマニア・タイガー、袋ライオン等が存在していて、見かけも本物(?)によく似ていた。これは適応放散現象と呼ばれているが、オオカミやトラ・ライオンの類のニッチが偶然の産物ではなく、普遍性を持つこと表している。

怠け者蟻は根絶できない

 蟻の巣では、膨大な数の働き蟻の3割程度がほとんど働かないことが知られている。その3割を人為的に除去すると、今度は残った7割の働き者のうち、やはり3割程度が怠け出すことが知られており、何度この操作を繰り返しても怠け者ニッチは根絶できない。

 真面目な努力家や明るい社交家など、人間個人の性格の違いは、第2次世界大戦後の数十年間にわたって、米国のスキナーが主導した行動主義心理学の強い影響下で、教育や環境という後天的な要因が非常に強いという説が主流を占めていた。しかし、しばらく前から、今度は逆に、膨大な数の一卵生双生児の追跡調査などから、生来の素質を強調する主張が台頭し、両者間で論争が延々と続いていたが、最近は性格をニッチとして捉える説が有力だ。

 なぜ、特定の普遍的ニッチが存在するかというのは、なかなか深遠な問題である。例えば、全く同じ部品で、同じ設計のロボットを、全く同様に複数製作して、さらに相互の距離を一定の範囲に取るようにした全く同一なプログラムを搭載して、一定の空間に閉じ込めて自由に相互作用させる。

 すると、常に一番先に動くスバシコイ個体と、遅れてそれに反応するノロマな個体に、人間同様に綺麗に性格分化することは、20年以上前から知られている。各個体の能力が99.9999%同じであっても、極微細な部品の質や組み立ての差が、個体同士の相互作用、関係性によって、ニッチとして大きく分岐するらしい。要は、相互作用や競合が緊密であると、わずかな能力差や環境制約で、ニッチが決まるようだ。個体に限らず種でも同様だ。

コメント8件コメント/レビュー

楽しく読ませていただきました。生態学的な側面は、人間活動に当てはめるとき、時間的なスケールと場のスケールの違いがあるので気をつけなくてはならないと思って読ませていただきました。フレームを人間活動でみるか、産業界でみるか、業界、会社・・・個人でみるかで結論が変わってきます。BPみたいなコストが安価で消費者の利益や株主の利益があったかも・・・業界的にはBPに対応する技術を模索する機会だったかも・・・。フィンチの話ではないですが、未来についていえそうなことは、何かのわからない危機に向け複数の選択を用意することが生きながらえる道だということかもしれません。(2010/07/29)

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楽しく読ませていただきました。生態学的な側面は、人間活動に当てはめるとき、時間的なスケールと場のスケールの違いがあるので気をつけなくてはならないと思って読ませていただきました。フレームを人間活動でみるか、産業界でみるか、業界、会社・・・個人でみるかで結論が変わってきます。BPみたいなコストが安価で消費者の利益や株主の利益があったかも・・・業界的にはBPに対応する技術を模索する機会だったかも・・・。フィンチの話ではないですが、未来についていえそうなことは、何かのわからない危機に向け複数の選択を用意することが生きながらえる道だということかもしれません。(2010/07/29)

その後、複数のプログラムを同一のグループが仕込んで良い条件で、複数のプログラム間で、協調裏切りをあるパターンで行う暗号により通信を行い、奴隷と王様プログラムを仕込んで、奴隷はひたすら服従し、王様は裏切り続けることにより、王様が高得点を得る(なおそのほかのプログラムとの間では、しっぺ返しなどを採用する)ということが起こりましたが。(2010/07/16)

「常に一番先に動くスバシコイ個体と、遅れてそれに反応するノロマな個体に、人間同様に綺麗に性格分化することは、20年以上前から知られている。各個体の能力が99.9999%同じであっても、極微細な部品の質や組み立ての差が、個体同士の相互作用、関係性によって、ニッチとして大きく分岐するらしい。」 などなど,勉強になりました. もう一つの主題のエネルギー源のお話については,余程のインセンティブを与えないと.自然エネルギーは普及しないと解釈しました.やはり,石油やバイオ燃料の利用技術(熱機関)に画期的な変化が訪れないと人類の生き残りはないのかもしれません.石油に最適化されている(?)とはいえ,内燃機関は100年以上存続してきました.電気自動車がメディアの華になっていますが,そろそろしっぺ返しがあってもよいかと...(2010/07/15)

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