第1回、第2回では「プラチナ社会」の実現に向け、さまざまなプロジェクトを推進している前東京大学総長(現・総長室顧問)で三菱総合研究所理事長の小宮山宏氏のインタビューを掲載した。第3回からは、実際に研究開発や実証実験が進められている各種プロジェクトを直撃。日本が世界をリードできる技術の最先端や“産声”を紹介していく。
今回紹介するのは、東京大学生産技術研究所の須田義大教授と遊具メーカー大手の泉陽興業が手掛ける究極の省エネ型交通システム「エコライド」だ。
バスや電車の代わりにジェットコースターを使って街を移動する――。
そんなちょっとワクワクするプロジェクトが、現在、東京大学生産技術研究所と泉陽興業(大阪市浪速区)を中心に進められている。その目的は決して遊び心や冗談からではない。実現すれば、究極の省エネ型都市交通システムの誕生となるからだ。
その名も「エコライド」。

ご存知の通り、ジェットコースターは動力を持たない車両を高いところまでウインチで引き上げ、軌道の高低差、つまり位置エネルギーを利用して走行させるというシンプルな構造になっている。
車両の引き上げ時以外、外部からエネルギーを供給する必要がないため、これを公共交通に転用できれば、走行中は石油も電気も必要としない画期的な交通システムができるというわけだ。
プロジェクトの経緯
2009年度には、経済産業省・関東経済産業局の委託事業である「平成21年度低炭素社会における技術発掘・社会システム実証モデル事業」において、「ITS中量公共交通機関『エコライド』の開発による低炭素化地域交通モデルの実証研究」として採択。さらに、2009年6月に内閣府の社会還元加速プロジェクトにおける「ITS実証実験モデル都市」の1つに選定された千葉県柏市が、このエコライドを、ITS実証実験の1つとして取り上げ、柏の葉地区でのケーススタディを実施。それに伴い、(独)交通安全環境研究所や三菱総合研究所も参画するなど、いまや一大プロジェクトとなっている。
そもそものきっかけは、横浜市のコスモワールドなど遊園地の運営を手掛ける遊具メーカー大手の泉陽興業と製造子会社の泉陽機工が、「ジェットコースターのレールの傾斜を緩やかにして速度を落とせば、環境に優しく、経済的で、しかも楽しい交通システムができるのではないか」と発想したことにあった。
この泉陽興業の提案に対し、2006年には、3年間の期限でNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が研究開発の支援を開始。2008年10月には、東京大学生産技術研究所の須田義大教授が所長を務める千葉実験所に、実験線を設置するに至った。
現在、実験線では、試作車両を走らせ、その都度、収集した各種データを解析。それに基づき改良を重ねながら、2、3年後の実用化に向け、着々と準備を進めている最中だ。
そんなエコライドに試乗させていただけるというので、喜び勇んで、西千葉にある千葉実験所を訪れた。待っていてくれたのは、須田教授と泉陽興業の技術者の方々、そして2008年度に製作した第1次試作車両と2009年度に製作した第2次試作車両というキュートな2台のエコライドだった。
安全性と信頼性、「これはいける」と直感
「車輪のある乗り物はすべて研究の対象にしてきた」という須田教授はエコライドとの出合いを次のように語る。
「都市の公共交通システムには、鉄道や地下鉄、モノレールやLRT(=Light Rail Transit:次世代型路面電車システム)など色々な種類があり、それぞれの機能や特徴に応じて、すみ分けや使い分けがなされている。しかし、これまでありそうでなかったのが、徒歩で移動するには遠いが、LRTなどの新交通システムを導入するほどの距離ではないといった中途半端な距離を移動するための公共交通システムだった」

「具体的には、千葉の幕張や横浜のみなとみらいといった新都市や大規模団地、大規模ショッピングセンター、ウォーターフロント周辺を移動するための足だ。現在、こういった地域では、移動手段を自家用車やバス、タクシーに依存しているのが実情。しかしながら、省エネ、エコ、少子高齢化といった観点からすると、あまり望ましい状況とは言えない。そのため、私は、新交通システムとして、何かより良いソリューションはないかと以前からあれこれ検討していた」
「そんなところに、エコライドの話が舞い込んだ。『これはいける』と直感した。ジェットコースターの場合、技術が確立されているため、研究対象としては強い興味はそそられないものの、その分、安全性が高く、信頼性もある。実用化までの道のりも遠くないだろうと感じた」
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