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ジェットコースターが「市民の足」になる

【交通編1】重力はタダ!省エネ型都市交通システム「エコライド」

2010年7月16日(金)

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 第1回第2回では「プラチナ社会」の実現に向け、さまざまなプロジェクトを推進している前東京大学総長(現・総長室顧問)で三菱総合研究所理事長の小宮山宏氏のインタビューを掲載した。第3回からは、実際に研究開発や実証実験が進められている各種プロジェクトを直撃。日本が世界をリードできる技術の最先端や“産声”を紹介していく。

 今回紹介するのは、東京大学生産技術研究所の須田義大教授と遊具メーカー大手の泉陽興業が手掛ける究極の省エネ型交通システム「エコライド」だ。

 バスや電車の代わりにジェットコースターを使って街を移動する――。

 そんなちょっとワクワクするプロジェクトが、現在、東京大学生産技術研究所と泉陽興業(大阪市浪速区)を中心に進められている。その目的は決して遊び心や冗談からではない。実現すれば、究極の省エネ型都市交通システムの誕生となるからだ。

 その名も「エコライド」。

エコライド導入のイメージ図(画像提供:東京大学生産技術研究所、泉陽興業株式会社)

 ご存知の通り、ジェットコースターは動力を持たない車両を高いところまでウインチで引き上げ、軌道の高低差、つまり位置エネルギーを利用して走行させるというシンプルな構造になっている。

 車両の引き上げ時以外、外部からエネルギーを供給する必要がないため、これを公共交通に転用できれば、走行中は石油も電気も必要としない画期的な交通システムができるというわけだ。

プロジェクトの経緯

 2009年度には、経済産業省・関東経済産業局の委託事業である「平成21年度低炭素社会における技術発掘・社会システム実証モデル事業」において、「ITS中量公共交通機関『エコライド』の開発による低炭素化地域交通モデルの実証研究」として採択。さらに、2009年6月に内閣府の社会還元加速プロジェクトにおける「ITS実証実験モデル都市」の1つに選定された千葉県柏市が、このエコライドを、ITS実証実験の1つとして取り上げ、柏の葉地区でのケーススタディを実施。それに伴い、(独)交通安全環境研究所や三菱総合研究所も参画するなど、いまや一大プロジェクトとなっている。

 そもそものきっかけは、横浜市のコスモワールドなど遊園地の運営を手掛ける遊具メーカー大手の泉陽興業と製造子会社の泉陽機工が、「ジェットコースターのレールの傾斜を緩やかにして速度を落とせば、環境に優しく、経済的で、しかも楽しい交通システムができるのではないか」と発想したことにあった。

 この泉陽興業の提案に対し、2006年には、3年間の期限でNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が研究開発の支援を開始。2008年10月には、東京大学生産技術研究所の須田義大教授が所長を務める千葉実験所に、実験線を設置するに至った。

 現在、実験線では、試作車両を走らせ、その都度、収集した各種データを解析。それに基づき改良を重ねながら、2、3年後の実用化に向け、着々と準備を進めている最中だ。

須田 義大(すだ・よしひろ)氏
東京大学生産技術研究所、先進モビリティ研究センター(ITSセンター)教授・センター長。千葉実験所の所長も務める。大学院工学系研究科機械工学専攻、大学院情報学環・学際情報学府先端情報学コース兼担。先進モビリティ研究センターでは、安全・安心、環境低負荷・低炭素社会。快適・健康を目標とした多くの研究テーマを実施。柏市、長崎県などの地域連携、国際連携を進め、研究成果の社会還元を行っている。後ろにあるのが、エコライドの試作車両

写真:須田義大氏

 そんなエコライドに試乗させていただけるというので、喜び勇んで、西千葉にある千葉実験所を訪れた。待っていてくれたのは、須田教授と泉陽興業の技術者の方々、そして2008年度に製作した第1次試作車両と2009年度に製作した第2次試作車両というキュートな2台のエコライドだった。

安全性と信頼性、「これはいける」と直感

 「車輪のある乗り物はすべて研究の対象にしてきた」という須田教授はエコライドとの出合いを次のように語る。

 「都市の公共交通システムには、鉄道や地下鉄、モノレールやLRT(=Light Rail Transit:次世代型路面電車システム)など色々な種類があり、それぞれの機能や特徴に応じて、すみ分けや使い分けがなされている。しかし、これまでありそうでなかったのが、徒歩で移動するには遠いが、LRTなどの新交通システムを導入するほどの距離ではないといった中途半端な距離を移動するための公共交通システムだった」

エコライド。青のラインのものが2008年度に製作した第1次試作車両、緑のラインのものが2009年度に製作した第2次試作車両。2012~2013年までの実用化を目指しており、営業距離約10km、1時間当たりの輸送能力2000~2500人、時速20~30km、最小回転半径15m、最大勾配14%(8度)、無人運転を想定

 「具体的には、千葉の幕張や横浜のみなとみらいといった新都市や大規模団地、大規模ショッピングセンター、ウォーターフロント周辺を移動するための足だ。現在、こういった地域では、移動手段を自家用車やバス、タクシーに依存しているのが実情。しかしながら、省エネ、エコ、少子高齢化といった観点からすると、あまり望ましい状況とは言えない。そのため、私は、新交通システムとして、何かより良いソリューションはないかと以前からあれこれ検討していた」

 「そんなところに、エコライドの話が舞い込んだ。『これはいける』と直感した。ジェットコースターの場合、技術が確立されているため、研究対象としては強い興味はそそられないものの、その分、安全性が高く、信頼性もある。実用化までの道のりも遠くないだろうと感じた」

コメント12件コメント/レビュー

■下りのみに限定されることはないでしょう→初期加速による惰性運転なら平坦で構わない&隣接駅間距離が短い場合なら微小傾斜で互い違いにすれば実現可能■ゴムタイヤで初期加速するとの記述あり、中途で停止した場合の緊急措置は可能なようですね。駅に上り勾配、駅間に下り勾配をつけておくという設計が基本になるのかなと予想します■悪天候・満員時にホームまで辿り着かない可能性を考えると余裕を持った設計が必要でしょうから、惰性に余裕を持たせる設計構造からブレーキの実装は必須でしょう■問題は、傾斜の大きい地点間での運用が困難なことかと思います。軌道高低差で吸収するつもりなのだろうか?その点非常に興味深いです■イニシャルコストやエネルギー効率等は理想状態での数字と考えて差し引いて考えるべきかなと感じていますが、いずれにせよ画期的なアイデアですので、実現を期待しています。(2010/08/11)

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「ジェットコースターが「市民の足」になる」の著者

山田 久美

山田 久美(やまだ・くみ)

科学技術ジャーナリスト

早稲田大学教育学部数学科出身。都市銀行システム開発部を経て現職。2005年3月、東京理科大学大学院修了(技術経営修士)。サイエンス&テクノロジー、技術経営関連の記事を中心に執筆活動を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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■下りのみに限定されることはないでしょう→初期加速による惰性運転なら平坦で構わない&隣接駅間距離が短い場合なら微小傾斜で互い違いにすれば実現可能■ゴムタイヤで初期加速するとの記述あり、中途で停止した場合の緊急措置は可能なようですね。駅に上り勾配、駅間に下り勾配をつけておくという設計が基本になるのかなと予想します■悪天候・満員時にホームまで辿り着かない可能性を考えると余裕を持った設計が必要でしょうから、惰性に余裕を持たせる設計構造からブレーキの実装は必須でしょう■問題は、傾斜の大きい地点間での運用が困難なことかと思います。軌道高低差で吸収するつもりなのだろうか?その点非常に興味深いです■イニシャルコストやエネルギー効率等は理想状態での数字と考えて差し引いて考えるべきかなと感じていますが、いずれにせよ画期的なアイデアですので、実現を期待しています。(2010/08/11)

 減速/急加速低減に関する思い付き(^^; 「はずみ車(フライホイール)」を使う、というのはどう?・傾斜を降下する際にフライホイールを駆動して加速を抑制・惰行時の動力に カサと重量の増加につながるが、バッテリと発電機/モーターを積むよりはましかもしれない。 駆動方法は騒音を考慮すればフリクションホイールだろうか。(2010/07/20)

すばらしい!!現在NYに住んでいますが、マンハッタンに是非欲しい。・・・と言っても政府機関で働いているわけではないので何のお手伝いもできませんが・・・日本のように完璧な安全、快適性を求めるところよりも海外の方がよく売れると思います。(もし海外に売る気があるのなら)多少の振動、エアコンの不備、etc・・・、そんな細かいところに気を使うよりは海外に売り込んで実績を積む方が実用化の早道です。(本当に売る気があるならばですが)アジアの発展途上国では渋滞がひどく、公共交通機関も発達していない都市部がたくさんあります。都市内の安価な交通として是非売り込みをして下さい。(2010/07/19)

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