「遙なるコンシェルジュ「男の悩み 女の嘆き」」

化粧姿はマナー違反?見なければいい

男性の理屈がまかり通る職場の会話にストレス

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2010年7月16日(金)

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 男性が多い職場で、男性の理屈がまかり通る会話にストレスを感じながら働いています。辛抱し続けるしかないのでしょうか(30代女性)

 遙から

 遅ればせながら、大阪御堂筋線で初めて女性車両に乗った。乗るなり不思議な感覚に襲われた。女性ばかりだから、というだけではない、車両を満たす空気のようなものが性別を超えてある種の主張をしていた。それは“安心”とでもいおうか。

 女性たちがあきらかにリラックスしていた。数人の女性が誰の視線を気にすることもなく化粧直しをしていた。世間では一時、車両内の化粧が物議を呼んだが、それは近頃の若い女性たち批判だった。だが女性車両に乗ってみると、年配の女性までもがコンパクト片手に口紅を塗っている。そう。化粧をしている女性は誰だって、どこでも自由に化粧直しがしたいのだ。私だってそうだ。感慨深く年配女性の化粧直しをながめた。駅に着くと、オッサンが乗ってきた。瞬時に空気が緊張したかと思いきや、それはオッサンに見える女性だった。まぎらわしさに吹き出しそうになるのを押さえた。

 また、女性車両と知らず乗ってきた若い男性は、気づくなり顔を赤らめ、そそくさと隣の車両に移動した。間違って女性トイレに入ってしまったかのような動揺ぶりが可愛らしかった。

 そこで起こる光景がもたらす空気の変化を味わいながら、車両での“安心”が新鮮だった。男性たちはご存じだろうか。どれほど女性が緊張を伴って車両に乗っているか。

 私は新幹線を週2回は乗る。もっともストレスなのはまるで自分の部屋のようにのびのび存在する男性だ。もちろん、圧倒的多数の男性はマナーを守って乗っている。だが、車両にたった数人配慮に欠ける男性がいるだけで、そのストレスたるや半端ではない。それは地下鉄に痴漢がたった数人だからといって安心できないのと同じ理屈だ。

 まず、やかましい。大声で咳払いを繰り返す。一度咳払いをする男性がいれば、私の経験では数分以内に必ずまた同じ咳払いをする。それが癖になっていることが多く、それを2時間半聞かされ続ける苦痛は半端ではない。他にも大声のくしゃみ。大声のあくび。大声の溜息。大声の背伸び。大音量のイビキ。ずっと鼻を鳴らし続ける癖。これらの音量加害は私の経験では圧倒的に男性が多い。

 股を大きく開く、靴を脱ぐ、など、そののびのびさ加減は多様だ。そこにある生体としての男の息吹、生理にひたすら耐えながら新幹線に乗っているのを、JRはご存じか。

 乗り物に疲れるのではない。数人の無配慮な男性にぐったり疲れて新大阪に着く。

 到着直前、車両通路はすでにビジネスマンたちで埋まっている。私はあきらめ列の最後に通路に出るつもりをしていた。その時、半歩。ほんの半歩の通路の空間を私に譲った人がいた。その半歩が「どうぞ」と言っている。見ると、女性だった。

 「すみません」と言って列に合流させてもらった。

 次に私は迷わず御堂筋線の女性車両へ向かった。“安心”を知って初めて自分の神経がいかに緊張していたかを知る。股を広げて領域侵犯する女性のいないシートに腰を沈めた。

 圧倒的なくつろぎが私を包んだ。駅を出るとどしゃぶりの雨になっていた。

 傘を準備していなかった私は、覚悟を決めて全身を雨にさらすように歩いた。せめてもと早足で帰路を急いだ。

 その時、「よかったら」と女性の声が聞こえた。

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著者プロフィール

遙 洋子(はるか・ようこ)

遙 洋子

大阪府出身。タレント・エッセイスト。関西を中心にタレント活動を行う。東京大学大学院の上野千鶴子ゼミでフェミニズム・社会学を学び、その体験を綴った著書『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』(ちくま文庫)を執筆。これを機に、女性の視点で社会を読み解く記事執筆、講演などを行う。近著に『主婦たちのオーレ!』(筑摩書房)、『女ともだち』(法研)など。公式ウェブサイトはこちら



このコラムについて

遙なるコンシェルジュ「男の悩み 女の嘆き」

 働く女性の台頭で悩む男性管理職は少なくない。どう対応すればいいか――。働く男女の読者の皆様を対象に、職場での悩みやトラブルに答えていきたいと思う。
 上司であれ客であれ、そこにいるのが人間である以上、なんらかの普遍性のある解決法があるはずだ。それを共に探ることで、新たな“仕事がスムーズにいくルール”を発展させていきたい。たくさんの皆さんの悩みをこちらでお待ちしています。
 前シリーズは「男の勘違い、女のすれ違い」

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