「ジャパン・ウォッチャーの眼〜参院選とその後」

今度のねじれは本当の麻痺状態を生み出す

菅首相はブレてはいけなかった

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2010年7月22日(木)

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――今回の参院選で民主党が大敗した原因は何か? 有権者は、必ずしも自民党を支持しているとは限らないと思う。

ジェラルド・カーティス
政治学者。コロンビア大学政治学部バージェス教授、早稲田大学公共政策研究所客員教授、東京財団上席研究員・仮想制度研究所フェロー。学位は政治学博士(コロンビア大学)。 コロンビア大学東アジア研究所所長、コロンビア大学政治学部教授、東京大学法学部客員教授、慶應義塾大学法学部客員教授、政策研究大学院大学大学院政策研究科客員教授などを歴任。

カーティス 菅直人首相の消費税についての説明のまずさ、提示の仕方が選挙にマイナスだった。しかし、これらだけで民主党が負けたと考えるのは大間違いである。10カ月にわたる鳩山政権の動向を見て、国民は「日本を運営する能力が民主党にあるのか」という不安を抱いた。その懸念が根本的な敗因だと思う。菅氏は、鳩山政権の大失態を忘れさせるチャンスがあった。だが、消費税についての発言でそのチャンスを自ら逃した。

 今回の選挙で民主党が負けた結果、自民党の議席数が増えた。特に1人区でそうだった。前回の総選挙で民主党に入れた人は絶望を感じて、今回の参院選では自民党に票を入れた。1人区では、民主党でなければ自民党しかない。そのため自民党に投票したのである。この流れは大きいと思う。

消費税増税は正しい、しかし提起の仕方を誤った

――消費税の増税を、菅首相は提起するべきではなかった?

 提起すべきだったと思う。ただし、言う以上、中身のある話でないとだめだ。

 もしオバマ大統領が2006年の大統領選で「医療保険制度を改革すべきだ。国民皆保険にすべきだ。具体的なことは大統領になってから、みなさんと相談する」と言っていたら、米国民はどう思っただろう? 「この人にリーダーシップはまったくない」と思ったに違いない。

 だから菅氏は、消費税増税に触れる以上、矛盾したことを言ってはいけなかった。消費税率を引き上げる目的は、ギリシャのようにならないための財政再建なのか、福祉の拡充なのか、最後まではっきりしなかった。さらに「次回の総選挙まで1円も上げない」と言えば、いったいこの人は何を考えているんだ、ということになる。

 私の考えでは、今の日本国民は消費税率の引き上げはやむをえないと思っている。にもかかわらず、消費税の議論そのものが先送りされることになった。菅首相の問題提起の仕方がよくなかったからだ。

――民主党が9月に代表選を行う。菅首相はどう出るか?

 続投すると思う。しかし、これから菅氏が支持率をどこまで回復できるかによる。いま代表選をやれば、再任され続投になる。でも先のことは分からない。9月までに支持率が20%くらいまで下がれば辞任せざるを得ないだろう。

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著者プロフィール

大野 和基(おおの・かずもと)
ジャーナリスト

大野 和基

1955年兵庫県西宮市生まれ。大阪府立北野高校卒。東京外語大英米学科卒業後、79年渡米。在米18年。米コーネル大学で化学、ニューヨーク医科大学で基礎医学を学んだ後、ジャーナリストの道に進む。以来、国際情勢の裏側や医療問題に関するリポートを発表するとともに、ヘッジ・ファンドの帝王ジョージ・ソロスや元CIA長官、映画監督マイケル・ムーア、えひめ丸事件の乗客、北朝鮮に拉致された曽我ひとみさんの米国人夫ジェンキンス氏の家族など、要人・渦中の人物への単独インタビューを次々とものにしてきた。単独での海外現地取材が圧倒的に多く、年間フライト数は80回を越える。翻訳『外科の夜明け』(小学館)があり、2009年5月17日に書き下ろしで『代理出産―生殖ビジネスと命の尊厳』(集英社)を発売。



このコラムについて

ジャパン・ウォッチャーの眼〜参院選とその後

 長年、日本をウォッチしてきた3人の米国人学者、ジャーナリストが参院選の結果を分析するとともに、参院選「後」の政局、外交問題を展望する。

 日本ウォッチャーとして、リチャード・カッツ、ジェラルド・カーティス、スティーブン・ボーゲルの3氏に登場していただく。カッツ氏は、日本お よび日米関係をテーマにしたニューズレター「The Oriental Economist」編集長。日本を30年にわたって取材している。カーティス氏は政治学者。早稲田大学で、公共政策研究所で客員教授を務めた経験を持 つ。ボーゲル氏はカリフォルニア大学で教鞭を取る政治学者。ジャパンタイムス記者の経験も持つ。

 7月の参議院選挙で与党・民主党が大敗した。有権者は、民主党が308議席を獲得した昨年の衆院選とは明らかに異なる選択をした。その理由は何 だったのか? 国会は、再び“ねじれ”に直面した。参議院で多数を占める野党は、この状況をどう“生かす”のか? 菅直人首相はこれをどう乗り切るのか? そして、ねじれ国会は国民に何をもたらすのか? 日本を取り巻く状況は、菅首相に多くの時間を与えはしない。普天間問題をどう進展させるかは、日米関係の将来に大きな影響を与える。

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