長引く消費低迷に「売れない」「客が来ない」「儲からない」と喘ぐ流通・サービス業界。そんな逆風下でもじりじりと勢力を伸ばす「勝ち組」の共通点は「スピード」だ。わずかな機会を逸しない「軽量出店型FC」の戦略が功を奏している。
東京・大井町駅前の商店街から一筋脇に入ると、昔ながらの鮮魚店や居酒屋などが並ぶ中に「トータルリビングはしもと」という寝具店がある。布団の中を歩いて通り抜けると、突き当たりのドアにあるのは「カーブス」の文字だ。
このドアの向こうが7月13日に開業したフィットネスクラブ「カーブス大井町駅前」。つまりこのフィットネスクラブは、寝具店の店内を通り抜けないとたどり着けない、というわけだ。
間口が狭いため、奥のテナントに独自の入り口を設けることはできない。入り口を設けられなければ本来は不動産価値はゼロに近い。しかし、手前のテナント(寝具店)を通り抜けさせて動線を確保すれば、そのデッドスペースも生きてくる。
カーブスは、米国で生まれ、2005年に日本に上陸した女性専用フィットネスクラブのFC(フランチャイズチェーン)。2010年7月には店舗数850 店を超えた。その異例のスピード出店を支えているのが、こうした、一見「不良」の物件をうまく見いだして活用するという手法だ。

商店街だけではない。例えば市街地の雑居ビル。少子化の影響や大手の寡占によって撤退した学習塾、今やコンビニエンスストアよりも店舗数が多いという過当競争に敗れて廃業した歯科医院の「跡地」に入居する。
あるいは郊外の複合商業施設。衣料品店や飲食店などのテナントが苦戦を強いられて撤退し、その後、入居するテナントのない「歯抜け」の商業施設を狙って入居する。食品スーパーやボウリング場の一角、いわゆるデッドスペースにも出店している。
「風呂なし」が強み
なぜカーブスには、このようなゲリラ的な出店が可能なのか。最大の理由は、従来のフィットネスクラブと比べて不動産物件に求める要件が少なく、初期投資が圧倒的に小さい、つまり「身軽である」ということにある。

カーブスでは、利用者の運動メニューが「30分間」と短時間に設定されている。何時間も汗だくになるまで運動する利用者を想定していないため、シャワーや浴場などの施設は用意していない。フィットネスマシンを円形に並べ(写真)、利用者はその順序通りに利用させる。特定の種の機械だけに利用者を集中させないため、同種の機械を大量に置くことはしない。女性専用であり、男性は足を踏み入れることができない。着替える場所は、カーテンだけで間仕切りすればよく、更衣室を分ける必要もない。
これらの割り切りが、出店コストを大幅に下げる。入浴施設などがないため、いわゆる「水回り」のない物件でも入居できる。設置するフィットネスマシンの数が少なく、更衣室なども不要となれば、大部屋一室、広さは40坪(約132m2)あれば十分だ。結果として、雑居ビルでも商店街の空き店舗でも機動的に入居できる。
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