「守るべき弱者はどこにいる?」

「最期は自宅」は、幸せなのだろうか

訪問看護で働く45歳女性のケース

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2010年7月26日(月)

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 「家族に迷惑をかけたくない。どうしたら早く死ねますか?」

 年をとり、看護や介護を受ける時に、こんな言葉を発する高齢者は決して少なくない。訪問看護ステーションで働く看護師の片平清美さん(仮名、45歳)は、そうした言葉を聞く度に、やりきれない思いを抱えてしまう。

夜勤はないはずだったが・・・

 清美さんは、以前は、突然の発症などで生命の危機に瀕した患者を主に扱う急性期病院の看護師だった。外科病棟勤務で、3交代の「日勤−深夜」というシフトが多く、過重労働に追い込まれて病院の看護師を辞めた。

 日勤(おおむね午前8時30分〜午後5時30分)といっても始業時間の30分から1時間前に前残業で勤務に入り、終業時刻になっても残業があるため夜遅くまで仕事が続き、ほんの数時間あいてまた深夜勤(おおむね午前0時〜午前9時)に入るため、1〜2時間の睡眠時間での激務となることも多い。

 そうした勤務なった夜勤明け、車を運転して帰宅する時、信号待ちで、ふっと睡魔が襲う。これでは、いつ交通事故を起こして死んでしまうかも分からないと、夜勤のない訪問看護ステーションに転職した。

 訪問看護とは、主治医の指示や連携により、看護師などが家を訪問して療養上の世話や診療の補助を行うことで、病気や障がいがあっても、自宅で最期を迎えられるよう支援する制度となる。看護師のほか、保健師、助産師、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士も必要に応じて配置される。訪問時には、血圧や体温、呼吸、脈拍などのバイタルチェックはもちろん、心の健康にも気を配る。食生活や排泄、入浴など生活の自立に向けた支援も行う。

 清美さんが転職した訪問看護ステーションはサービス提供時間が日中に限られ、転職当時は「オンコール(緊急時の呼び出し)はほとんどない」と言われて入ったが、次第にオンコールの回数が増え、深夜の拘束からは逃れられなかった。時間外や休日の患者の対応もしなければならず、患者からの訪問の依頼を受けるオンコールの当番が月に約6回。看護師不足が影響し、人材確保が難しいとオンコールの回数は増え、月10回という時もあった。

 オンコールの時は、お風呂に入る時も寝る時も常に携帯電話を肌身離さずにいる。待機手当として時給140円が支払われ、実際に訪問すれば日勤帯の割り増し残業手当として計算される。患者が体調を崩して「ちょっと様子を見に来てほしい」という需要が多いが、電話で聞き取った状態や実際に確認しに行った際の様子で医師の要請が必要かを看護師が判断する。

保険制度の限界と矛盾

 訪問看護の利用者には、特別養護老人ホームなどの入所待ちの高齢者が多く、清美さんは「待機している間に亡くなる人もたくさんいる」と話す。

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著者プロフィール

小林 美希(こばやし・みき)

労働経済ジャーナリスト。1975年茨城県生まれ。明治学院大学中退、神戸大学法学部卒業。株式新聞社、毎日新聞社エコノミスト編集部で記者として働く。2007年2月よりフリーになり、若者の雇用、出産・育児と就業継続などのテーマに取り組む。主な著書に『ルポ 正社員になりたい ――娘・息子の悲惨な職場』(影書房)、『ルポ “正社員”の若者たち 就職氷河期世代を追う』(岩波書店)



このコラムについて

守るべき弱者はどこにいる?

「派遣切り」「名ばかり正社員」・・・。日本の労働環境の悪化に伴う雇用不安が人々の生活を脅かす。社会がきしみ、変化に揺れている中で今、何が必要なのか。個々の働き方や生き方を通して、国、企業、個人ができることは何かを探っていく。

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