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誰が冷蔵庫に野菜を入れるのか

40、50代の娘に教えたい「妻役割」を探さない生き方

2010年7月30日(金)

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 身の回りのすべてを親に頼ることで働き続けてきました。その親も老い、将来が不安です。(40代女性)

 遙から

 最近、不思議なことに高齢女性たちから同じことを頼まれる。

 「私が死んだ後、うちの娘をよろしく頼む」というものだ。娘といっても40代から50代にかけての立派な一人前の社会人だ。

 私がそれを引き受けると彼女たちは泣かんばかりに喜んでくれる。なにがそこまで高齢の親たちを不安にさせるのだろう。

 ひとりの女性は結婚し子供もいる。本来なら「娘をよろしく」はその夫に頼むべきことなのだろうが、結婚してようやく安泰かと思いきや、昨今の結婚事情は将来を保証するものでもなく、それどころか子供を生んでなお暗雲たちこめる将来像が親を不安にさせる。もはや「結婚してやれやれ」ではなく、「結婚生活を背後から支えている自分が死んだ後、離婚でもしたらこの娘の面倒は誰が見てやれるのか」と不安で死にきれないほど、“娘が将来ひとりになる”ことは恐怖なのだ。

 また、もうひとりの女性は働き続けて幹部にまでなった独身キャリアウーマンだ。毎晩深夜まで働きづめの娘の晩御飯を作るために娘と同居し、掃除洗濯まですることでかろうじて娘の生活と健康を支えている。娘の愚痴も聞いてやり、精神まで支える。そこまで企業に必要とされる娘を、自分が死んだ後はいったい誰が支えるというのか。独身キャリアウーマンの場合、“将来必ずひとりになる”ことの恐怖が老母を襲う。

 そんな母たちからご指名を受けたのが私、というわけだ。将来うちの娘と一緒に住んでやってくれないか、とまで言う親の表情は真剣だ。

 遮二無二なにかに打ち込むには男女を問わず、その生活と健康を支える誰かの助けが必要になる。これが男性なら、多くの場合妻がそれを引き受けてきた。それを“妻役割”と言ったりする。では、女性の場合、女性の妻役割は誰がするのか。そこに母親の登場となるのだが、難点は娘が生きるほどには生きられない、ということなのだ。

 「誰がいったい娘の冷蔵庫に野菜を買って入れるというのか」という今晩の食事から絶望モードになるのだ。

 では、私の場合はどうか。私もまた誰も私の冷蔵庫に野菜を入れてくれる人はいない。深夜に何も食べずに帰り、冷蔵庫を開けて絶望で失神しそうになったキャリアウーマンは私だけではないはず。

 この依頼を受けてからというもの、私は自分が選んできたひとつの生き方に気づくことになった。

「遙なるコンシェルジュ「男の悩み 女の嘆き」」のバックナンバー

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「誰が冷蔵庫に野菜を入れるのか」の著者

遙 洋子

遙 洋子(はるか・ようこ)

タレント・エッセイスト

関西を中心にタレント活動を行う。東京大学大学院の上野千鶴子ゼミでフェミニズム・社会学を学び、『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』を執筆。これを機に、女性の視点で社会を読み解く記事執筆、講演などを行う。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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