人体標本の製造技術を生かし医療の実習に使う模型を製造、海外に販路を広げる。仏像をはじめとした文化財などの修復を手がける事業構造は異色だ。収益環境の変化に合わせ、2005年には全社員の半分が異動、次なる成長に挑む。
医者を目指す学生たちに囲まれて横たわる「イチロー」。彼は、これから心臓疾患の患者として扱われる。
このイチロー。実は、88種類の症例を模倣することのできる医療用の模型(シミュレーター)だ。学生たちはイチローが示す心拍や心電図から、彼が病気にかかっているかを判断する。座学で得た知識を実践に近い形で再確認するのに、イチローは使われている。
彼の製造主は、京都科学(京都市伏見区)だ。イチローのような医療用シミュレーターといった先端的な製品をを開発する一方で、理科室に置かれる人体解剖模型も製造している。また、仏像をはじめとした文化財の修復や保存も手がける異色の企業だ。
島津製作所から分離・独立
京都科学の設立は1948年。島津製作所で学校向けなどに人体模型や動物の剥製などを製作していた標本部が起源で、小学校や大学の医学部、病院などは今でも主要販売先になっている。
設立後、人体模型の製作技術を応用し、仏像をはじめ文化財の複製技術を確立、工芸部を設置して80年には修復技術に進出する。国宝や重要文化財などの修復や複製を手がけてきた。
現在の主力事業は、医者や看護師の教育現場で利用される医療用シミュレーターだ。全社売上高の8割近くを医療関連が占める。2004年には、米ロサンゼルス事務所を設けて海外進出も本格化させた。2010年5月期には、海外売上高比率が14%に達している。
こうした業績を評価され、中小企業研究センターからは、2009年度のグッドカンパニー大賞でグランプリを贈られた。この賞は京セラが京都セラミック時代に受賞するなど、有望な企業が多く受賞している。

収益源の医療用シミュレーターでは、イチロー以外にも、糖尿病患者特有の巻き爪を切るための脚部の模型や、足のむくみ具合を再現した製品など、言葉だけでは伝わりにくい医療行為を実体験に近い形で覚えさせる機器を作ってきた。こうしたシミュレーターの開発を同社で最初に進めたのが、現社長の片山英伸氏だ。
片山氏は入社後、営業部門に配属され、そこで誰もが面倒がっていたカタログの製作を押しつけられた。地味な仕事だったが、今後の会社人生を左右する転機となった。会社が扱う全製品の状況を把握することで、会社が置かれている環境を誰よりも深く理解できたからだ。それは厳しいものだった。
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