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伝承されない技術。製造現場だけでなく医療でも。

臨床検査技師の25歳女性のケース

  • 小林 美希

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2010年8月9日(月)

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 一般企業では若者の非正規雇用化が進み、雇用が崩壊した。そうした雇用崩壊の前兆には、働き方の小さな変化がある。これまで安定した就職先と見られていた病院職場も、一般産業と同じ道を歩みそうだ。そんな病院職場の崩壊の前兆が、臨床検査技師の非正規雇用化に垣間見える。

 藤田真希さん(仮名、25歳)は都内の大学を卒業後、有名私立大学病院に臨床検査技師として就職した。ところが、新卒採用にもかかわらず、嘱託社員という雇用形態だった。雇用の期限は3年が上限となる。初任給は月18万円弱。ボーナスは年に約6カ月分、ほか住宅手当が月2万数千円支給される。

「ここは刑務所のようだ」

 真希さんは就職活動でいくつかの病院の採用試験を受けていた。ほかの私立大学病院は正職員採用だが、初任給が月25万円でボーナスはなし。ある民間病院では正職員採用で月20万円にボーナスが年に3.8カ月。比べると、正規か非正規かの違いのほかは、就職先に決めた病院が勝っているように思えた。真希さんは「何より、技術を学ぶことができる。最初は正職員でなくても門戸の狭い大病院への就職はチャンスではないか」と就職を決めた。

 病院では新卒検査技師の採用は数年ぶりだった。採用面接の際に、「嘱託って何だろう?」とも思ったが、理事長は「入職してもすぐに辞める若者も多い。就職する側も病院を見極めるために嘱託で働いてみて、3年経ってから本当にここで働きたいか決断してもいいのではないか」という採用の考え方を説明した。同期はすべて嘱託職員。直属の上司も「真面目にやっていれば、正職員になれる」と常に言っている。

 3年後は正職員登用されるか、自ら選択して辞めるか――。この条件は見ようによっては、この病院での勤務や職業そのものの適正を判断できるとあって、真希さん含め新卒採用された同僚は「自分たちにもメリットがある」ように感じていた。

 仕事が始まり、採血の担当となった。真希さんは「神経を傷つけてしまったらいけない」と、毎日、ミスしないようビクビクしながらも懸命に仕事を覚えていった。新人検査技師として緊張して夜も眠れない日々が続いた。入職1年目、残業は夜9~10時まで恒常的に続いたが、時間外手当の申請はできずサービス残業が続いた。

 月3回ほど当直に入ると、「ここは刑務所のようだ」と思ってしまう。薄暗い窓1つない埃だらけの当直室は3畳ほどのスペースで、布団を敷いて2時間おきにほかの当直検査技師と交代して休憩する。当直の日は夕方5時から深夜0時までとなるが、当直明けはいったん帰宅してまた出勤。通常の日勤(午前9時から午後5時)に入る。

 「私はまだ20代だからできるけど、60歳の人でも同じように当直に入っていて、辛いはず」と思えてならない。当直手当は1回約2000円。医師や看護師なら1回1万円の手当がつくため、どうしても比べてしまう。

 1年目は「ミスなく仕事する」を第一に心がけた。ところが、だんだん仕事に慣れてくると、モチベーションを高く維持することが難しくなった。2年目は毎日1000人もの外来・入院患者の血液検査を担当するようになり、検体によっては数値を見ると「ああ、救急搬送された患者さんだが、もう亡くなっているかもしれない」ということも分かるようになってきた。

 ただ、常に検査室に閉じこもり、患者と接することもなく、大組織の一部として淡々と仕事をこなすため、ほかの検査の技術を身につける機会がないことが心配になってくる。大先輩には、誰も採血できないような血管の細い患者が来ても、1回で採血できるスペシャリストがいる。そうした熟練技術に敬服する一方で、流れ作業のような仕事の与えられ方に「このまま、ここにいていいのだろうか」と疑問を感じるようになってきた。

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