• ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

看護師や医師を支える「院内保育」が軋む

保育士の40代女性のケース

  • 小林 美希

バックナンバー

2010年8月23日(月)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 24時間病院を維持するため、子どもを持つ看護師や医師など、夜間に働く医療従事者を支えているのが「24時間院内保育所」だ。その院内保育所で働く保育士がいなければ、医師や看護師の労働も成り立たなくなるのだが、その保育士が疲弊している。

 院内保育所で働く加藤順子さん(仮名、40代)は、「看護師の残業に保育士も引きずられる」と嘆く。病院が24時間保育を始めてから1年。夜勤に週2日は入るため、日中の保育士がそれまでの体制から4人抜けることになり、1人当たりの業務は増した。順子さんはクラス担任であるのに夜勤があるため、毎日、昼間の子どもの保育に当たることができずにいる。園児から「先生、今日は夜勤でいないの?」と聞かれると胸が痛む。

 正職員が夜勤に入れば、その分、残りの仕事のしわ寄せが非正規職員に行き負担が増すため、職員間の関係もぎこちなくなっていく。日勤の日も、仕事の積み残しや、子を預ける看護師の残業に合わせての残業となるため、毎日、朝7~8時に出勤して夜8~10時まで居残っている。夜9時頃に看護師の母親が「今日は早かった」と言ってお迎えに来る。日勤の定時は17時30分。看護師の業務が終わるまで保育士も常に残業するため、順子さんまで、その感覚に麻痺されそうになる。

「24時間保育所」設置はPRのため?

 病院の敷地内にあるその保育所には、病棟と離れているためセキュリティもなく、危険を感じることもしばしば。深夜の病院はひっそりとしているため、それだけで気味の悪さを感じる。車上荒らしも多発しており、近隣の24時間保育所では預かりニーズのない誰もいない日に、窃盗目的で不審者が入った事件も起こり、不安になる。2人夜勤でも、1人が急に休めば1人になる。その時もし、事件が起こったら・・・。

 保育所には眠るためのスペースはなく、園児は保育士と一緒に畳の上に布団を敷いて雑魚寝する。病後児保育で来る、まだ完全に体調が回復していない子どもを預かるスペースもなく、更衣室に寝かせている状態だ。「これで保育と言えるのか」と、順子さんは矛盾を感じる日々を送っている。そして、「24時間保育を利用している中でも、2交代制の夜勤で働く看護師の子どもは夕方から16時間以上預けられるため、情緒不安定になっている」という気がしてならない。

 「賃金も一般の保育所と同様に安く、月給16万~20万円程度。民間委託の流れで、もともと悪い労働条件がさらに悪化している。長時間労働や夜勤の負担がこれ以上続けば、離職は止まらない。しかし、それ以上に、この環境では保育士として子どもの健全な発育を助けられないことが悔しい」と、順子さんは訴える。

 今や、24時間保育所の設置は看護師確保の「売り」でもある。PRのためだけに保育所を設置した病院では、まるで“名ばかり保育”というのが現状だ。いくら良い保育を目指したくても、安い賃金で超長時間労働を強いられ、マンパワーが足りなければ実現不可能だ。

 ある大学病院では、30年ほど前に病院労働組合が手弁当で院内保育所を作り、それが前身となって病院の直営で運営されてきたが、保育所の職員に周知されることなく突然、それとは別に保育所を作り、外部に委託することが決められた。もともとあった保育所でも正職員は園長と調理師2人を入れて6人。残り14人の保育士は非正規職員だ。夜勤に2人取られるため、日中の人員配置はギリギリに。朝、昼、夕方と職員が入れ替わるため、子どもの状況について伝達がうまくいかない。子どもは情緒不安定になり、噛み付きやすくなっているという。

 入札で見積もりの低い業者が委託を勝ち取ったが、コスト削減のため病棟の空き室を使用すると言い、園児の過ごす部屋には直射日光が射さず、給食はレトルト食品、背の低い園児用のトイレも不備という保育環境となった。ほかの国立大学病院で院内保育所が民間委託されると、保育士はすべてパートになった。

コメント6件コメント/レビュー

看護師不足は常態化しているので、当院は、保育所を直営!職員は全て正職員!など行えば、一人勝ちでしょうね。(2010/08/24)

「守るべき弱者はどこにいる?」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

看護師不足は常態化しているので、当院は、保育所を直営!職員は全て正職員!など行えば、一人勝ちでしょうね。(2010/08/24)

ワークライフバランスねぇ~その分の夜勤を誰が負担するの?人の命を預かる仕事も子供の今と未来に責任を持つことも、共に替わりの居ない大事な仕事。両方を同時に担う事は出来ない。四半世紀前なら同居の祖父母が子供を見てくれたのにね。。。これは核家族化と安易な離婚の弊害でしょ。我侭に個を追求した報いと、女性の家事からの逃避(≒社会進出)が元凶だね。(2010/08/24)

病院がなぜ院内保育のコスト増を嫌うのか?なぜ院内保育サービスが必要な看護師がサービス残業を毎日数時間もせねばならないのか?なぜ周りの看護師がそういった看護師たちを支えてあげられないのか?答えは簡単です。医療費が安すぎるのです。黒字にならない→院内保育にコストをかけられない→子供のいる看護師が採用できない→定員を確保できない→過重労働にならざるを得ない。7:1看護がはじまり全国の急性期病院で看護師争奪戦が繰り広げられています。ごくごく一部の病院を除いた多くの病院で(大学病院でも)看護師は定員を大きく割っています。医師だけではありません。医療政策を根本的に見直さない限り我が国の医療は確実に崩壊します。間違いありません!(2010/08/23)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

日本の経営者は、経験を積んだ事業なら 失敗しないと思い込む傾向がある。

三品 和広 神戸大学教授