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漂流する日本政治、カウントダウンが始まった財政破綻

決断の時来る:大きな政府? 小さな政府?

2010年9月9日(木)

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「現実」を直視しない国、日本

 『昭和16年夏の敗戦』(猪瀬直樹著、中公文庫)という書籍がある。日米開戦直前の夏、「総力戦研究所」が設置され、軍部・官庁・民間の若手エリート30人が開戦シミュレーションを重ねた。その予測は、現状では日本に勝ち目はないとの結論であったものの、時の政権は開戦を決断して「無残な敗戦」に至った。この政治的意思決定のプロセスを克明に描いた作品だ。この脆弱な意思決定の背後には、時の政治指導者や世論の間に「どうにかなる」との甘い期待と幻想があり、「現実」を直視しない日本の姿があったのではないか。

 終戦から約60年。日本は再び、違う形で、「新たな敗戦」に向かいつつあるのかもしれない。というのは、いま急速に日本の財政・経済は悪化しつつあるからだ。象徴的な数字は、現在の日本が抱える公的債務残高(対GDP)(公的債務残高とは国・地方が発行した国債や地方債の残高や借入金などの合計をいう)の190%だ。

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 いまのところ、政府債務が増えても長期金利(10年国債利回り)は上昇していない(図表1)。だが、拙書『2020年、日本が破綻する日』(日経プレミアシリーズ)でも警告しているように、現状のままでは、2020年ごろには政府の借金が家計貯蓄を食い潰してしまう可能性が高い。そうなれば、もはや政府は国内から借金ができなくなり、海外からどの程度まで資金を集められるかという問題に直面する。

 海外から資金を調達できない場合の最悪のケースでは、長期金利が急上昇し、経済は混乱して、財政破綻という事態も視野に入ってくる。その場合、最終的には、最後の貸し手である日本銀行に国債を引き受けてもらうシナリオも想定できるだろう。1945年の終戦直後のように、急激な物価上昇によって財政問題を解決するわけだ。

大きな政府を選ぶのか? それとも小さな政府に進むのか?

 やや極論で言うと、もはや日本が選択できる解決策は限られており、国家が目指すべき方向性は2つしかない。一つは、社会保障(年金・医療・介護)を廃止した「小さな政府」である。もう一つは、社会保障を維持した「大きな政府」である。だから、混迷する政治において問われるべきは、「小さな政府」か「大きな政府」かの選択であり、自己の権益や権力闘争を優先した政治でなく、この両者を対立軸にした「政治理念」先行の本物の政党政治の実現である。

 経済学の「タダ飯はない(ノー・フリーランチ)」という言葉にもあるように、長期的に財政収支は均衡することになる。つまり、公共サービスとして政府から得る「受益」と税金・保険料として政府に支払う「負担」は、長期的に均衡する。国債発行などにより、一時的に財政負担を先送りできても、最終的には、「負担なくして受益なし」「財源なくして公共サービスなし」のルールが成立するのだ。

 このため、仮に「小さな政府」を選択するならば、徹底的に政府支出の削減を進める必要がある。その際は、毎年1兆円ずつ膨張していく社会保障予算も聖域でなく、財政収支が改善するまで、徹底的に削減することが不可欠だ。というのは、社会保障予算を賄うために他の予算を削減することが「当たり前」のような風潮があるが、科学技術や人的資本の向上につながる投資的予算まで削減すると、将来の成長を鈍化させてしまうリスクがあるからだ。

 他方で、「大きな政府」を選択するならば、引き続き、膨張する社会保障予算を賄うため、必要な安定財源をすみやかに確保する必要がある。2010年度の一般会計における財政赤字は約44兆円もある。安定財源を確保せずに、いわゆる「埋蔵金」などの一時的な財源で対応できるという話は、政治的な姿勢として無責任な態度であろう。

地に足が付いた「現実」に立脚した政策論争を

 このような状況において、民主党代表選がスタートした。菅直人首相を支持する「反小沢」と小沢一郎前幹事長を支持する「親小沢」の全面対決の構図となった。「政治とカネ」が対立軸の一つであるが、もう一つの対立軸は「財源論」である。

 政権交代前の民主党は、菅首相を含め、政権を握れば、予算の組み替えや事業仕分けなどにより、マニフェスト(政権公約)の実施に必要な財源はいくらでも捻出できると主張していた。だが約1年間の迷走の結果、この実現は容易でないとの認識を深めつつあるというのが真実だろう。鳩山政権が退陣し、その後、誕生したのが菅政権である。

 このため、菅首相は現下の財政事情を踏まえ、政権交代にあたって約束した民主党のマニフェストを現実路線に修正する政権構想を掲げた。その象徴が、消費増税の値上げを含む税制改革の検討開始や、子ども手当の修正だ。

コメント76件コメント/レビュー

予想通りの評価である意味驚き! やはり現実と都合の悪いことが書いてあると評価が悪くなるようだ。ひとつ、コメントにデンマーク・フィンランド・カナダ・オーストラリアが良い例とコメントがあるが、フィンランド以外すべて資源国です。 例外のフィンランドも2009年の実質GDPは7.8%マイナスで失業率は7.1%。 日本の失業率はH22.07で5.2%です。※総務省「労働力調査」より  みんな思い込みや偏った話から「小泉悪し」とか言うんだなー。私は極めて常識のあるしそのように行動した貴重な政治家だと思っています。擁護した私は小泉派?  記事の内容は極めて全うでいまさら感さえしました。踊らにゃ損的な事言う人が出てきたので、牽制のためにも良い記事です。(2010/09/15)

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「漂流する日本政治、カウントダウンが始まった財政破綻」の著者

小黒 一正

小黒 一正(おぐろ・かずまさ)

法政大学経済学部教授

1974年生まれ。京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。大蔵省(現財務省)入省後、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。専門は公共経済学。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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予想通りの評価である意味驚き! やはり現実と都合の悪いことが書いてあると評価が悪くなるようだ。ひとつ、コメントにデンマーク・フィンランド・カナダ・オーストラリアが良い例とコメントがあるが、フィンランド以外すべて資源国です。 例外のフィンランドも2009年の実質GDPは7.8%マイナスで失業率は7.1%。 日本の失業率はH22.07で5.2%です。※総務省「労働力調査」より  みんな思い込みや偏った話から「小泉悪し」とか言うんだなー。私は極めて常識のあるしそのように行動した貴重な政治家だと思っています。擁護した私は小泉派?  記事の内容は極めて全うでいまさら感さえしました。踊らにゃ損的な事言う人が出てきたので、牽制のためにも良い記事です。(2010/09/15)

「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ」と言いますが、私は愚者の代表格かもしれません。財政再建を唱えて緊縮財政政策をとった橋本内閣、小泉・竹中内閣では、翌年景気が大幅に悪化し、税収減のために更に国債を増発した事を覚えています。そして景気が悪い状況での緊縮予算や消費税増税は、財政再建のためには全く間違った方法だと判りました。まず橋本内閣、小泉・竹中内閣での財政再建の失敗を分析し、どこが間違っていたのかを説明して頂かなければ財政再建だけを優先することを理解できません。「基礎的財政収支」だけを見れば、別にモンテカルロ法を使わなくても今までの傾向からいずれ経済破綻する事は中学生でも分ります。しかし国の経済は「基礎的財政収支」だけで成り立っている訳では無く、IT産業のように新たな産業の勃興があり、またアジアやアフリカでは新たな市場が成長しつつあり、そういった流れに日本経済をいかに合わせて儲けていくか総合的な視点が大事だと思っています。(2010/09/13)

>子供たちにツケを残さない最善の方法は<不況の日本を残して、子孫につけを回すよりも、景気を良くして、明るい日本を残しましょう。(2010/09/13)

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