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英語ができても、意思が通じるとは限らない

コミュニケーションに欠かせない文化の相互理解

  • 河合 江理子

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2010年9月28日(火)

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 前回(「TOEICの試験では、本当の英語力は分からない」)は、読み書きといった英語の知識では必ずしも話せるようにはならないこと、そして話すための英語を身につけるために私が実践してきた方法について書いた。

 今回は「英語力」=「グローバル戦力」という考え方に疑問を投げかけたい。グローバルな仕事をするのに、語学ができることには越したことはない。しかし、ビジネスの現場にいると、語学力があってもコミュニケーション能力が低くて、せっかくの語学力が役立っていないケースも見受けられる。

 逆に決して流暢な英語を話しているわけではない人でも、ネットワーク作りや交渉力では群を抜いており、リーダーシップを発揮している人もいる。こうした人たちは、語学力の不足を補えるだけのコミュニケーション能力を持っているということなのだろう。

「ハイ・コンテクスト文化」は通用しない

 言葉は、コミュニケーションの基本であるが、言葉以外のほかの表現手段もとても大切である。語学を勉強する時に、その言葉の背景には、異なった文化があり、考え方やコミュニケーションの流儀も異なることも学んでほしい。別に文化人類学を勉強して専門家になる必要はないが、基本的な概念を頭に入れておくだけでも意思疎通がスムーズになる。

 私が勤務していたスイスにある国際機関のBIS(国際決済銀行)では、世界各国の人が働いているので、新しく入社する人のオリエンテーションの一環として、クロスカルチャーのセミナーが開かれている。セミナーは丸一日かけて行われる。参加者に感想を聞くと「たいへん、ためになった」と言う人と「時間のムダ」と言う人で意見が分かれているのも確かだが、私自身にしてみればコミュニケーションの流儀の違いを分かりやすく理解できる概念を知っただけでも大いに勉強になった。それまでに既にいろいろな国に住み、様々な経験をしてきたが、違いを整理して考えたことはなかったためだ。

 私が今でも意識しているのは、アメリカの文化人類学者であるエドワード・T・ホール氏による「『ハイ・コンテクスト文化』と『ロー・コンテクスト文化』についての概念」である。コンテクストとは、ざっくりと言えば、状況や背景(バックグラウンド)を指す。

 ハイ・コンテクスト文化圏としては、フランスなどのラテン系やアジアなどが当たる。こうした地域では共通の価値観が長い間かけて作られているため、「いちいち言葉で伝えなくても、お互いに相手の意図を察し合うことでコミュニケーションが成り立つ」というのがホール氏の解釈だった。この指摘通り、私自身、ラテン系やアジアの人とはコミュニケーションが楽で、何となく親しみを感じていた。

 一方、アメリカやドイツなどは、ロー・コンテクスト文化圏に属する。こうした国々の人とは、理論的に説明しないと意思疎通できない。移民国家は、たいていロー・コンテクスト文化である。

 ちなみに、日本は「典型的なハイ・コンテクストの国」とホール氏は指摘していた。実際、日本には「阿吽(あうん)の呼吸」や「空気を読む」といった独特の表現がある。言葉を使わずに相手の言いたいことを理解するのは、高いレベルのコミュニケーションスキルと言える。

 「人の話をよく聞く」というのは、日本人の強みであると思う。しかし、国際社会では相手に自分の気持ちを察してくれるのを受動的に待っていているだけでは、コミュニケーションスキルは上達しない。

 日本人同士であれば、互いに空気は読めるかもしれない。しかし、状況や背景の異なる国民を相手にすると、正しく空気を読めないため、勘違いをすることがある。ロー・コンテクストの文化圏であるアメリカやドイツ、北欧などの人に対応する場合は、特に注意が必要だ。言葉ですべて表現しないと、意思疎通はできない。

 慣れてしまえば、私の経験からするとコミュニケーションがストレートなので、とても分かりやすく、仕事がしやすい。「本当は何を考えているのだろうか」と、あれこれ推測しなくても済む。遠慮などは必要ない。ハイ・コンテクストの文化圏の人とは、感覚的に分かりあえるので友人にはなりやすい。反面、仕事では、婉曲に表現されてしまうので、何を求めているのかがはっきりしないことも少なくなかった。

発言して、初めて評価の対象になる

 最近の日本は「コミュニケーション能力が欠けている人が増えている」らしい。家族間でもあまり会話がないそうだ。こんな話を聞いてしまうと、「家族とさえコミュニケーションできない人が、そもそも外国人とうまくコミュニケートできるのだろうか」と心配になってしまう。

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