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憲法9条こそ最強の安全保障政策だ

自衛隊の専守防衛化とアジア集団安全保障体制の構築を急げ

  • 天木 直人

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2010年9月29日(水)

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 菅直人内閣は、年末までに新しい防衛大綱を閣議決定する予定だ。防衛大綱は、日本の中期(5~10年)の安全保障政策の指針を示す重要な文書である。本来なら昨秋、改定する予定の文書だったが、政権に就いたばかりの民主党が1年延期した。

 このコラムでは、外交官や自衛隊のOB、国際政治学者などの専門家が考える防衛大綱の「私案」を紹介する。日本は、集団的自衛権の行使を今後も 禁止し続けるべきなのか? 非核三原則、武器輸出三原則などの「原則」を今後も維持し続けるべきなのか? 日米同盟はいまのままでよいのか? 米軍基地は日本に必要なのか?

 安全保障政策に関する議論は、これまでタブー視されてきた。しかし、本来はみなで議論し決めていくものである。このコラムで紹介する私案は、ビジネスパーソンが自分のこととして安全保障政策を考える際の座標軸づくりに役立つはずだ。

 今年中にも「新防衛計画の大綱」が民主党政権の手によってつくられる。これまでにも防衛計画の中・長期計画は幾度となくつくられてきた。しかし今度の新防衛計画の大綱は、政権交代を実現した民主党が初めてつくる防衛計画である。折りしも国際情勢は激変しつつある。そんな中で新しい防衛計画はどうあるべきか。

 結論から言えば、これからの防衛政策は、日米同盟に依存するのではなく、日本の国益を優先した自主、自立した防衛を目指すべきである。

 そう言うと読者は、私が「憲法9条を改正して強い軍隊を持つべきだ」と主張しているように受け取るかもしれない。しかしそうではない。その逆だ。憲法9条を世界に高らかに掲げ、平和外交で日本を守る総合的な防衛政策を構築すべきだと言っているのだ。

 私は単に「護憲を唱えれば平和が守れる」と考える非武装中立論者ではない。世界から戦争を無くし、武器を無くすことは確かに理想だ。そして人類はその理想に向けて努力を続けるべきだ。その理想を唱える平和論者に敬意を抱き、共にその理想に向かって力を合わせていきたいと考える。しかしその理想を実現するために、日本は正しい防衛政策を確立しなければならない。

専守防衛の自衛隊、アジア集団安全保障体制、憲法9条の堅持が柱

 日本にとっての最善の防衛政策は何か。それは一方において米国の下請け軍隊に成り下がった自衛隊を、専守防衛の自衛隊に戻すことである。そして他方において、我が国の安全を確実に担保するものとして、アジア集団安全保障体制を構築することに全力を傾ける。そして、これら2つの政策を支える平和憲法9条を堅持する。この三位一体の政策こそが、現実の国際情勢を見極めた最強・最善の防衛政策である。これに優る防衛政策はない。これが私の新防衛計画大綱私案である。以下、主要な論点を説明していきたい。

国民的合意がなかったこれまでの我が国の防衛政策

 戦後の我が国の防衛政策とは何だったのか。我が国に固有の防衛政策はあったのか。あったとして、それは国民的議論を経て合意されたものだったのか。我が国の防衛政策を考えるときは、まずこれらの問いかけから出発しなければならない。

 我が国は1951年にサンフランシスコ講和条約を締結して国際社会に復帰した。そして、そのとき同時に(文字通り講和条約を締結した同じ日に)、米国との軍事同盟協定である日米安保条約を締結し、米国を先頭にした自由主義陣営の一員となった。このとき、共産主義国を含む全世界との講和を主張する全面講和論者との間にイデオロギー対立が起きたが、日本政府は国論が二分されたまま講和条約を締結した(部分講和)。そして日米安保条約を結んだ。

 ところがその日米安保条約は、国民はおろか、当時の国会議員でさえもその内容を知らされないまま吉田茂首相が単独で署名した、いわば“密約”であった。さらに、その安保条約を改定して今日に至る1960年の新安保条約は、いわゆる安保闘争と呼ばれる戦後政治史上の一大対決の中で強行採決(衆院)された異例の条約であった。衆議院で可決された後、国会審議は停止。混乱の中で、参院で審議されないまま自然成立した。国家の安全保障にかかわる最も重要な条約がこのような形で成立した事は、その後の日本の防衛政策に決定的な悪影響を及ぼしたのであった。

 しかも、冷戦後の米国の軍事政策は、自ら“押し付けた”平和憲法9条に反する数々の防衛政策の変更を日本に迫った。事実上の軍隊組織である自衛隊を1954年につくらせたのは、その一例だ。日本政府は、本来ならば憲法9条を改正しなければとうてい認められないような政策を、次々と既成事実化していった。憲法9条と日米安保体制という2つの矛盾した政策の共存こそ、我が国の防衛政策論議を不毛にした根源なのだ。

冷戦の終結と日米安保条約のなし崩し的変貌

 この矛盾は、冷戦が終焉した1989年を契機として解決すべきものであった。冷戦を前提として成立した日米安保条約は、冷戦の終結と共にその存在の根拠を失った。この事実は誰も否定できない。本来ならばその時点で日本は、それに代わる新たな防衛政策を国民による議論と合意の下につくるべきであった。しかし官僚主導の政治の怠慢がその国家的一大事業を妨げた。

 冷戦が終わってもなお、米国との軍事協力関係を継続する事が日本の防衛にとって最善だと日本の為政者(政府、官僚)が判断したのであれば、それでも良いとしよう。しかしその場合、為政者はその新たな方針を正面から国民に説明し、堂々と国会で審議した上で新しい日米軍事協力条約(日米同盟)をつくるべきであった。

 ところが日本政府と官僚は、国民的議論を行うことにひるんでその努力を怠った。それだけではない。日米共同声明という政治宣言を繰り返すことで、日本の防衛政策をなし崩し的に転換していったのである。現在の日米軍事協力関係は、60年に改定された新日米安保条約に基づく体制とはまったく異なるものになった。米国が日本を守る代わりに在日米軍基地を受け入れるというのが日米安保体制だが、今の日米同盟は、日本を守るという要素はほとんどなくなっており、米国の戦争に日本が協力させられる軍事協力関係になっている。法的には国際条約や憲法の下位にある政治声明が、国際条約や憲法を超えて政策を決めて行った。いわば「法の下克上」が行なわれたのだ。

コメント71件コメント/レビュー

著者の御意見には賛成しかねると言わざるを得ない。翻ってみれば、著者の御意見に類するお考えが従来から延々と続いてきた訳ですが、昨今の尖閣諸島問題等から国民の生命、財産、国土それに国家主権は自らが守らなければ誰が守るのか、ハッキリした訳です。(2010/10/05)

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著者の御意見には賛成しかねると言わざるを得ない。翻ってみれば、著者の御意見に類するお考えが従来から延々と続いてきた訳ですが、昨今の尖閣諸島問題等から国民の生命、財産、国土それに国家主権は自らが守らなければ誰が守るのか、ハッキリした訳です。(2010/10/05)

コメント欄を見ていると、80年代の激しい日米貿易摩擦や「ジャパンバッシング」を背景にして、日米開戦を危惧していた(あるいは煽っていた)人たちのことを思い出します。彼らは今、何を思っているのでしょう。まぁ20年以上も前のことです。顧みることも、省みることもないでしょうね。(2010/10/05)

これこそ、日本が取り得る唯一の道だと思います。理想論だけでなく具体的な施策も述べられていてこれなら実現可能だと思います。あとは、これを実行する肝のすわった政治家と優秀な外交官が必要です。日本だけでなく、戦争はしてはいけない、と誰もが思っています。そのような中で、日本には、平和憲法という素晴らしい道具があることを早く気付くことです。平和憲法が重荷だという先入観を一刻も早くはずすべきです。(2010/10/05)

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