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男の現場を変えた女性社長

菰下精密鎔断(神奈川県厚木市、鋼板の鎔断・加工)

2010年9月29日(水)

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1200mmの分厚い鋼板の鎔断技術と設備を国内で唯一持つ。ベテラン職人の技術を伝承しつつ、若手のやる気を引き出す経営を心がける。22人の職人集団を引っ張るのは、39歳の女性社長だ。

400mmの厚手鋼板を鎔断する現場に立つ菰下淑子社長。本社工場にて(写真:古浦敏行)
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 「1200mmの厚さの鋼板でも、当社は鎔断できる。国内では設備も含め一番と自負している」。こう胸を張るのは、神奈川県厚木市に本社を構える菰下精密鎔断の菰下淑子社長だ。

 鎔断とは、ガスの熱と高圧酸素を使って鉄などの素材を溶かして切る技術だ。薄い鋼板なら金属の刃やレーザーで切断できるが、分厚い鋼板では特殊な技術が必要になる。それが鎔断だ。

 菰下精密の技術にほれ込む企業には、IHIや三井造船、東芝といった名だたる企業が並ぶ。彼らは造船や原子力発電関連の大型部品の製造などで菰下精密に、直接依頼をすることもあるという。海外企業と直接の取引はないが、製品の7割は輸出向けの商品だ。「技術やコストでは、アジアの国々にも負けない」と菰下社長は自信を見せる。

 ナノテクに代表されるように、現在のモノ作りは微細加工技術に注目が集まる。その一方で、菰下精密のように重厚な鋼板を複雑な形状に加工する技術も、モノ作りの発展に欠かせない。厚くなればなるほど、高度な鎔断技術が必要とされるからだ。なぜか。

 鋼板を切断する鎔断は、まず鋼板の切り出し位置を可燃性のガスと酸素で800~1000度に加熱することから始まる。そこに高圧酸素を吹きつけると、鋼板表面が酸化鉄となって燃焼し出す。閃光を放ちながら燃えるその温度は約1350度にまで上昇するという。

 燃えた鋼は液状になり、その熱で下方の鋼も燃焼を起こす。熱で溶けた鋼板の溝が深まり、厚みの下まで到達すれば切断、となる。この鎔断の技術は決して新しいものではない。

 ただ、素材そのものが変わり、鍛造技術の進歩によってその強度も増している。さらに、部材の大型化に伴い厚さも増す。厚い鋼板の断面を、真っすぐに溶かし切るのは難しくなる。温度や高圧酸素の吹きつけ量によって、曲がってしまうからだ。この調整こそが、職人技とされる。単純に見られがちな鎔断も、実は科学技術の革新に伴う新たな技が求められているのだ。

無粋な現場を華やかに

 菰下精密が高い技術力を保っているのは、職人の技術をベテランから若手へとしっかりと受け継いでいること。しかし、分厚い鋼板を約1350度の温度で切断する鎔断の現場は、いわゆる3K職場だ。そうした現場に現在の若者をつなぎ留めるのは、たやすくなくなっている。

 菰下社長も新入社員として入社した時には、職場の雰囲気についていけなかった。その時に持った違和感を、女性ならではの視点で次々と改革したのが菰下社長だった。菰下精密に菰下社長が入社したのは17年前。22歳の女性には衝撃の連続だった。当時は無口な年配技術者が多く、昔ながらの職人気質の雰囲気に包まれていたからだ。

 菰下精密の源流は1936年、菰下社長の祖父に当たる菰下茂氏が起こした菰下鎔断だ。菰下鎔断は第2次大戦中には大阪で軍需産業の工場として認定を受け、船舶向けの鉄板などを加工していた。終戦と同時に軍関係の需要が減ったこともあり、茂氏は新しい技術を求めてドイツへ渡る。

 最新の鎔断技術を学んできた茂氏は52年に、大阪で菰下鎔断を法人化した。高度経済成長の波に乗った菰下鎔断は、70年に神奈川県の綾瀬町(現・綾瀬市)に分厚い鋼板専用の工場を増設した。その後、茂氏は大阪の菰下鎔断を長男に、神奈川工場を次男で菰下淑子社長の父に任せた。76年には神奈川工場が菰下精密鎔断として独立、菰下社長の父が社長に就いた。

 現在、社員38人中22人が現場作業者のように、競争力の源泉は現場だ。菰下社長も入社すると、はじめは現場で学んだ。その時から、若手の離職を食い止めるべく様々な行動に出た。

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「男の現場を変えた女性社長」の著者

白壁 達久

白壁 達久(しらかべ・たつひさ)

日経ビジネス記者

2002年関西大学経済学部卒業後、日経BP社に入社。日経ビジネス、日経ビジネスアソシエを経て、2015年から香港支局長としてアジア全体をカバーする。2016年8月から日経ビジネス記者に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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