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自衛隊の布陣を南西にシフトせよ

「今ある危機」は中国と北朝鮮の軍事力強化

  • 川上 高司

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2010年10月6日(水)

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 菅直人内閣は、年末までに新しい防衛大綱を閣議決定する予定だ。防衛大綱は、日本の中期(5~10年)の安全保障政策の指針を示す重要な文書である。本来なら昨秋、改定する予定の文書だったが、政権に就いたばかりの民主党が1年延期した。

 このコラムでは、外交官や自衛隊のOB、国際政治学者などの専門家が考える防衛大綱の「私案」を紹介する。日本は、集団的自衛権の行使を今後も 禁止し続けるべきなのか? 非核三原則、武器輸出三原則などの「原則」を今後も維持し続けるべきなのか? 日米同盟はいまのままでよいのか? 米軍基地は日本に必要なのか?

 安全保障政策に関する議論は、これまでタブー視されてきた。しかし、本来はみなで議論し決めていくものである。このコラムで紹介する私案は、ビジネスパーソンが自分のこととして安全保障政策を考える際の座標軸づくりに役立つはずだ。

 第2回は川上高司・拓殖大学教授だ。

 2009年9月の政権交代のため、民主党政権は「防衛計画の大綱」(防衛大綱)を1年間先送りし、今年末に発表する。この間、日本を取り巻く戦略環境はたいへん厳しくなった。北朝鮮の体制変革は目前だ。中国の急激な軍事力増強と尖閣諸島をはじめとする東シナ海への進出が起こっている。こういったわが国の直面する「今ある危機」に対応するかのように、オバマ政権は後期に入り、その対中政策を「関与」から「ヘッジ」(強硬姿勢)へと次第にグレビティ(重心)を移しつつある。

 そのようななか政府は、2010年度の防衛関連予算は現在の戦略環境は考慮に入れず、2004年12月に閣議決定した「16大綱」(注:「16」は平成16年の意)に基づいて編成した。そこで政府は、防衛省が求めた約3500人の自衛隊員の増員やPAC3(地対空誘導弾)の追加配備を見送った。そして、防衛関連予算を前年度比0.2%減(4兆7668億円)とした。8年連続の減額である。いっぽう、「今ある危機」は着々と大きくなっている。中国の国防費は21年連続で2けたの伸びであり、わが国の中国の脅威への対処はそろそろ限界点に達し始めている。それを見据えたように起こったのが9月11日の海上保安庁と中国漁船との衝突事件とそれに伴う中国側の強硬姿勢である。

 わが国の次期大綱では、そういった戦略環境の大きなランドスライド(地滑り)にともない、第1に基盤的防衛力構想から脱却した「日本の戦略の根底的見直し」、第2に「今ある危機」への対処のための「南西シフト」に言及しなければならない。

基盤的防衛力構想からの脱却-日本の戦略の根底的見直し

 「日本の戦略の見直し」について、新防衛大綱の策定に向けた政府の有識者懇談会「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」(新安防懇)の報告書(2010年8月発表)が既に、基盤的防衛力構想の見直しをすべしという点を指摘している。基盤的防衛力構想は、半世紀にわたり日本の防衛力整備の指針であったが、現在の日本を取り巻く戦略環境では国を守りきれないため、脱却が必要である。

 米国は冷戦後の戦略環境の変化に応じて、何が「脅威」かを定め、それに基づいて国防予算を策定してきた。冷戦終了後はイラクと北朝鮮といった国家を「脅威」の主な対象とし、「脅威基盤戦略」(Threat-Based Strategy)を取った。具体的には「Base Force」(1993年1月)、「Bottom Up Review」(1993年9月)、「QDR1997」(1997年5月)(注:QDRはQuadrennial Defense Reviewの略。4年ごとの国防計画の見直し)を策定した。また、米国同時多発テロ(9.11テロ)以後は非国家主体であるテロリストを主な「脅威」とした能力基盤戦略(Capable-Based Strategy)を取り「QDR2001」(2001年10月)、「QDR2006」(2006年2月)、「QDR2010」(2010年2月)で国防戦略を発表している。

 いっぽう、現在のわが国の防衛の基礎となっている2004年に策定された防衛大綱(16大綱)は、基盤的防衛力構想をその根幹に持つ。この構想は、「脅威」の存在を前提とせず、「自らが力の空白となってわが国周辺地域における不安定要因とならないよう、独立国として必要最小限の基盤的な防衛力を保有する」というもの。政府はこれを基に、防衛力の所与の見積もりをしてきた。基盤的防衛力構想に基づく現状は、冷戦期の防衛体制――米軍を「鉾」、自衛隊を「盾」という役割分担で抑止力が担保できた――であると言えよう。しかしながら、「今ある危機」に対しては効力がなく、日本の防衛は立ちゆかなくなっている状況にある。そのために、基盤的防衛力構想を改め、「脅威」を明確化し、それを前提とした抜本的な戦略の見直しのうえに新大綱を策定しなければならない。

「今ある危機」への対処-自衛隊の「南西シフト」

 わが国に対する「脅威」は冷戦時代はソ連であったが、現在では、北朝鮮と中国に転換した。北朝鮮に関しては、核・弾道ミサイルの開発を続け瀬戸際外交を繰り返している。また北朝鮮は体制の移行期にあり、その崩壊を含む不安定化も脅威の一端を占める。

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