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電力分野で「非連続のイノベーション」が起きたら・・・

電気事業も自動車産業も、水平分業化する

2010年10月18日(月)

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 前々回(「スマートグリッドは、いったい何が凄いのか?」)、前回(IT革命の次は『e-T革命』がやって来る)と、「イノベーション」という言葉を頻繁に使ってきた。特に近年よく耳にするビジネスのキーワードの1つであり、通常「技術革新」などと訳される。

 ちょっとした新製品の開発から画期的な発明にまで幅広く使われているが、私がイノベーションと呼ぶ際には、歴史的、社会的に大きな影響力を持った、非連続的な変化として巨視的かつ限定的に捉えている。このような意味でのイノベーションを最初に定義したのは、著名な経済学者であり社会学者でもあるヨーゼフ・シュムペーターである。

 シュムペーターが約1世紀前に著した『経済発展の理論』によれば、イノベーションとは「生産手段の新結合」を意味する。分かりやすく言えば、経済活動の仕組みを抜本的に進化させることであり、それが経済発展の源泉になる。それは、「新しい生産方法の導入」や「新しい財貨の生産」といった技術的な話だけではなく、「新しい販路の開拓」「新しい供給源の獲得」「新しい組織の実現」なども含む。

イノベーションは、旧来の支配者から生まれない

 その代表的な例として、産業革命が挙げられる。産業革命では、紡績機や蒸気機関などの「新しい生産方法の導入」があり、鉄鋼や鉄道など「新しい財貨の生産」が始められ、その生産物はイギリスから世界中に輸出され、「新しい販路の開拓」がなされたことは、広く知られている。

 シュムペーターは、「郵便馬車をいくら連続的に加えても、それによって決して鉄道を得ることはできない」との比喩を使い、イノベーションの非連続性を強調した。即ち、郵便馬車の車輪に改良が加えられて、例えばスピードが50%増すことはイノベーションとは呼べないだろう。同じ輸送手段でも全く異なる技術体系に基づき、鉄道網という新たなネットワークや貨物の大量輸送といった新たなサービスを生み出し、軍隊の運用のあり方を一変させるなど、社会経済の「軌道を変更」するような革命的な変化を指して、イノベーションと呼んだのである。

 「新結合の遂行者」、即ちイノベーションの主体は、旧来の支配者の中から現れず、「発展担当者の変更」が生じる。これもシュムペーターの重要な主張である。郵便馬車の事業者は、自らが所有する郵便のネットワークを前提とし、長年改良を重ねてきた馬車のさらなる改良に没頭するだろう。そこをあえて鉄道を開発しようとすれば、「以前は支柱であったものが、いまや障害となる」のであり、そのような自己否定は本質的にできない話なのである。

コンピューター産業も電気通信事業も水平分業へ

 インターネットを中核としたIT(情報技術)革命は、シュムペーターが定義するイノベーションに該当するというのが、私の基本認識である。既に説明した通り、インターネットの設計思想や技術体系は旧来の電話網とは抜本的に異なり、「新しい生産方法」と言えるだろう。また、パソコンやルーターといったインターネットに必要な「新しい財貨」も登場した。と同時にそれは、ネットワークの進化に止まることなく、その上で電子商取引といった「新しい販路」をもたらした。そして、その「発展担当者」は旧来の独占的電話会社ではなく、コンピューター科学者であり、新興企業だったのである。

 そのような非連続のイノベーションの影響として挙げられるのが、コンピューター産業の水平分業化である(図1)。

 1980年代までのコンピューターと言えば、メインフレームと呼ばれる大型の計算機であり、米IBMや富士通といったメーカーが、限られた顧客の仕様に合わせてハードウエアからソフトウエアまで特注で製造する、垂直統合型の産業だった。この当時、複雑な構造を持ち総合的な技術力が要求されるメインフレームを製造できるメーカーは、世界に数えるほどしか存在しなかった。

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