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新防衛大綱は自主防衛の重要性を意識せよ

軍事的国際貢献には国際的合意が必要

2010年10月20日(水)

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 菅直人内閣は、年末までに新しい防衛大綱を閣議決定する予定だ。防衛大綱は、日本の中期(5~10年)の安全保障政策の指針を示す重要な文書である。本来なら昨秋、改定する予定の文書だったが、政権に就いたばかりの民主党が1年延期した。
 このコラムでは、外交官や自衛隊のOB、国際政治学者などの専門家が考える防衛大綱の「私案」を紹介する。日本は、集団的自衛権の行使を今後も 禁止し続けるべきなのか? 非核三原則、武器輸出三原則などの「原則」を今後も維持し続けるべきなのか? 日米同盟はいまのままでよいのか? 米軍基地は 日本に必要なのか?
 安全保障政策に関する議論は、これまでタブー視されてきた。しかし、本来はみなで議論し決めていくものである。このコラムで紹介する私案は、ビジネスパーソンが自分のこととして安全保障政策を考える際の座標軸づくりに役立つはずだ。
 第4回の著者は、元防衛大学校教授の孫崎 享氏。

 「防衛計画の大綱」は本年末に改訂が予定される。防衛大綱は閣議決定され、日本における国防政策の基本を定めるものである。防衛大綱改定における筆者の注目点は2つある。一つは自主防衛の要素をどこまで組み込めるか。いま一つは2005年10月に日米政府が署名した「日米同盟:未来のための変革と再編」に象徴される、世界を舞台にした軍事面での日米一体化をどこまで追求するかである。

 戦略の基本は(1)敵が誰か、(2)いかなる手段で攻撃してくるか、(3)いかなる防衛手段があるかを考察するにある。したがって読者の方は、防衛大綱も当然、(1)敵が誰か、(2)いかなる手段で攻撃してくるか、(3)いかなる防衛手段があるかを考察した形をとって作成されてきたと思うだろう。しかし、驚くことに、違う。

 我が国の防衛大綱の基本に「基盤的防衛力構想」という考えがある(注1)。この考えの骨子は「我が国に対する軍事的脅威に直接対抗するよりも、自らが力の空白となって我が国周辺地域における不安定要因とならないよう、独立国としての必要最小限の基盤的な防衛力を保有する」というものである。

 初めてこの文書を読まれた人は驚くに違いない。我が国の防衛政策は「我が国に対する軍事的脅威に直接対抗する」ことを主目的にしていない。「我が国周辺地域の不安定要因とならないよう」にすることが主目的である。世界のどこに、防衛政策の根幹において「自国に対する軍事的脅威に直接対抗する」ことを目的とせず、「その地域の不安定要因にならないこと」を主目的とする国があろうか? こんな文書を本当に日本人が考えたのであろうか? しかもこの考え方は過去の防衛大綱に一貫して貫かれ、現時点における最新の防衛大綱「平成17年度以降に係わる防衛計画の大綱について(平成16年閣議決定)」(以下、「2004年大綱」と略す)も「基盤的防衛力構想の有効な部分は継承する」としている。

 では「基盤的防衛力構想」は脅威認識をどのように想定してきたか。ここでもまた驚きが出る。1977年に「基盤的防衛力構想」が出てきたときには「限定的かつ小規模な侵略」に対峙することを目的としていた。具体的には「事前に侵攻の意図が察知されないよう、侵略のために大掛かりな準備を行うことなしに奇襲的に行われ、かつ短期間に既成事実を作ってしまうことなどを狙いとしたもの」としている。そして、「侵略の様相等の状況により独力での排除が困難な場合にも、有効な抵抗を継続して、米国からの協力をまって、そのような侵略を排除しえなければならない」としている。ここには「独力で守る」という思想がない。

 「基盤的防衛力構想」の最大の問題は「独力で守る」という思想の欠如にある。筆者は日本の防衛政策は「基盤的防衛力構想」と決別する時期に来ていると思う。

甘い情勢判断~本格的な侵略の可能性は低下

 2004年大綱における驚きの個所はそれだけにとまらない。2004年大綱では日本をとりまく安全保障環境をどう評価しているか。「我が国に対する本格的な侵略事態生起の可能性は低下する」としている。本当にこれでいいのか。この情勢判断が正しいなら強固な自衛隊は必要ない。さらに言えば、在日米軍基地も必要ない。次の防衛大綱ではもう少し納得のいく情勢判断が出てくることを期待する。

米国は核の傘を提供しない

 では「独力で守る」という思想が欠如したまま、日本の安全を守ることができるのか。別の表現で言えば「米国からの協力をまって、そのような侵略を排除しえなければならない」ことが常に可能なのか。

注1: 「基盤的防衛力構想」について道下徳成著「戦略思想としての基盤的防衛力構想」は、次のように記している。
戦後の日本において唯一の包括的かつ洗練された(?)防衛戦略構想であった(?は筆者の追加)。
1977年版『日本の防衛』(俗称、防衛白書)は、「限定的かつ小規模な侵略までの事態に有効に対処する」とした。
1992年版の『日本の防衛』は、「基盤的防衛力構想は我が国に対する軍事的脅威に直接対抗するよりも、みずからが力の空白になって、この地域における不安定要因にならないよう、独立国として必要最小限の基盤的な防衛力を保持する考え方である」と説明した。
さらに1995年の「平成八年度以降に係わる防衛計画の大綱」は、基盤的防衛力構想自体に変更は加えず「基本的に踏襲」するとした。

 2004年大綱は次のように記述している。

 我が国はこれまで、我が国に対する軍事的脅威に直接対抗するよりも、自らが力の空白となって我が国周辺地域の不安定要因とならないよう、独立国としての必要最小限の基盤的な防衛力を保有するという「基盤的防衛力構想」を基本的に踏襲した「平成8年度以降に係る防衛計画の大綱」(平成7年11月28日安全保障会議及び閣議決定)に従って防衛力の整備を進めてきたところであり(中略)今後の防衛力については、新たな安全保障環境の下、「基盤的防衛力構想」の有効な部分は継承しつつ、新たな脅威や多様な事態に実効的に対応し得るものとする必要がある。

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川野 幸夫 ヤオコー 会長