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中国の台頭と米国の影響力低下を見据えよ

現行の防衛大綱は主体性を失っている

2010年10月13日(水)

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 菅直人内閣は、年末までに新しい防衛大綱を閣議決定する予定だ。防衛大綱は、日本の中期(5~10年)の安全保障政策の指針を示す重要な文書である。本来なら昨秋、改定する予定の文書だったが、政権に就いたばかりの民主党が1年延期した。
 このコラムでは、外交官や自衛隊のOB、国際政治学者などの専門家が考える防衛大綱の「私案」を紹介する。日本は、集団的自衛権の行使を今後も 禁止し続けるべきなのか? 非核三原則、武器輸出三原則などの「原則」を今後も維持し続けるべきなのか? 日米同盟はいまのままでよいのか? 米軍基地は 日本に必要なのか?
 安全保障政策に関する議論は、これまでタブー視されてきた。しかし、本来はみなで議論し決めていくものである。このコラムで紹介する私案は、ビジネスパーソンが自分のこととして安全保障政策を考える際の座標軸づくりに役立つはずだ。
 第3回の著者は、国際政治アナリストの菅原 出氏。

 国際情勢が激しく揺れ動く中で、わが国は年末までに新しい防衛大綱を策定する。防衛大綱とは、わが国の防衛のあり方の指針を示し、長期的で具体的な防衛力の整備、維持、運用の準拠を示すもの。「総合的かつ長期的な軍事戦略や政策の基本」となる重要な文書である。

 日本は、これからの10年を見据えて、どのような防衛大綱を打ち出すべきなのだろうか。筆者は「防衛大綱私案」として以下の2点を提案したい。第1は「自衛」、自分の国は自分で守る主体性を取り戻すこと。第2は、中国の台頭と米国の影響力低下を見据えて、軽武装からの脱却を図ることだ。加えて、さらに先の防衛大綱策定をにらみ、「先を読むこと」の重要性を強調したい。

最初の防衛大綱は主体的な防衛を目指していた

 日本政府が「防衛大綱」を最初に閣議決定したのがいつだったか、ご存じだろうか? 答えは1976年10月のこと。終戦後30年たってからのことである。

 「え?自衛隊はその前から存在するではないか?」と疑問に思う読者も多いだろう。自衛隊が発足したのは1954年のことだ(その前身である警察予備隊は1950年、保安隊は1952年)。だが、当時はまだ再軍備に対する国民の反発が強く、大綱のような軍事色の強い文書を発表すること事態、国民の反発を招くおそれがあるとの理由で見送られていた。

 自衛隊発足から最初の防衛大綱まで約25年の間は、第1次から4次にわたる「防衛力整備計画」を立て、防衛力を整備していた。当時の目標は「通常兵器による局地戦以下の侵略事態に対し、最も有効に対応しうる効率的なもの」だった。しかし「なし崩し的」に防衛力が拡大しているのではないか、いったい何を目的にどんな基準で防衛力を整備しているのか、との声が次第に強くなったこともあり、1976年になって初めて防衛大綱を策定するに至った。

 当時の国際情勢は、ベトナム戦争が終結し、「デタント」と呼ばれるように東西対立の緊張が緩和していた。防衛そのものや防衛費の増額に反発するムードが一般的な空気となっていた。

 そこで、わが国初の大綱は、「安定化のための努力が続けられている国際情勢及び我が国周辺の国際政治構造並びに国内諸情勢が、当分の間、大きく変化しない」という前提の下、防衛上必要な各種の機能を備え、平時においては「十分な警戒体制」をとり、有事においては「限定的かつ小規模な侵略」までの事態に対処できる防衛力を目標とした。

 核の脅威に対しては米国に依存する。「限定的かつ小規模な侵略」には日本が独力で対処する。そして、これ以上の規模の侵略に対しては、「米国の協力」を得て対処する。

 要するに非常に消極的なコンセプト――国際情勢は比較的安定しており、その後もその安定した国際環境は大きく変化するとは思えないので、防衛上最低限必要な基盤だけを整備する――を採用したのである。もちろん、万が一情勢が変化して必要性が生じたときに拡充できるような準備をしておく。このコンセプトを「基盤的防衛力構想」と呼んでいる。

 これは何か具体的な軍事的脅威に直接対抗するのではなく、「自らが力の空白となって我が国周辺地域における不安定要因とならないよう」、独立国としての必要最小限の基盤的な防衛力を保有するという考え方である。まったく防衛力を整備せず、「力の空白」になってしまったら、ソ連などがその力の空白を埋めるべく、「取ってしまうか」と考えるかもしれない。そのような周辺国の冒険主義を誘発することのないよう、最低限の軍備を整えておきましょうというコンセプトである。

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「中国の台頭と米国の影響力低下を見据えよ」の著者

菅原 出

菅原 出(すがわら・いずる)

ジャーナリスト/国際政治アナリスト

アムステルダム大学政治社会学部国際関係学科卒。在蘭日系企業勤務、ジャーナリスト、東京財団リサーチフェロー、英国危機管理会社役員などを経て、現在、国際政治アナリスト

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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