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世界通貨戦争、敗者は誰だ

  • 小瀧 麻理子,細田 孝宏

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2010年10月18日(月)

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米国の金融緩和方針をきっかけに通貨安競争へとなだれ込んだ世界経済。人民元の切り上げ要求に中国は猛反発し、国際協調の枠組みは見えない。25年ぶりの世界通貨戦争の生き残りをかけ、大国間で応酬が続く。

 「もはやチキンレースですね」

 日本銀行の金融緩和後も、世界的な緩和期待が膨らみ続ける市場を眺めながら、ある市場関係者はつぶやいた。

 10月5日、日銀が発表した包括的な金融緩和政策。政策金利の誘導目標を従来の「年0.1%前後」から「0~0.1%」へ引き下げ、4年3カ月ぶりに事実上の「ゼロ金利政策」に復帰。さらに、国債やCP(コマーシャルペーパー)に加え、指数連動型ETF(上場投資信託)やREIT(上場不動産投資信託)などのリスク資産を買い取る5兆円の基金を創設し、従来の固定金利での資金供給策と合わせて35兆円規模の基金を作る。

 市場の予想を超える内容はサプライズと受け止められ、円相場は下落した。だが、円安はつかの間だった。海外市場では円が上昇に転じ、8日には1ドル=81円台と、約15年5カ月ぶりの高値圏に到達した。

止まらぬ当局の“チキンレース”

 予想外の緩和策は、皮肉にも予想外の反応を生んだ。

 「米連邦準備理事会(FRB)がさらに大胆な追加金融緩和に踏み切るという市場の期待を高め、かえって円買い・ドル売りを刺激する結果になってしまった。日銀の白川方明総裁もそこまでは予想しなかっただろう」。クレディ・スイス証券の深谷幸司・外国為替調査部長はそう指摘する。

 チキンレースの口火を切ったのは、FRBのベン・バーナンキ議長だ。7月21日の議会証言で、米経済の見通しについて「異例なほど不確か」と発言。9月 21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明には「追加緩和の準備がある」と明記した。FRBが大胆な量的緩和に踏み切るとの観測が広がり、円高・ドル安を加速するという構図だ。バークレイズ・キャピタル証券の高橋祥夫チーフ外債ストラテジストは「FRBが毎月1000億ドル(約8兆円)もの米国債を買い入れるとの見方さえ、市場は織り込んだ」と指摘する。

 カレンシーウオー(通貨戦争)――。

 ブラジルのグイド・マンテガ財務相が口に出した途端、瞬く間に世界に伝播したこの刺激的な言葉が、現実の問題として差し迫りつつある。

 10月8日の7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議でも、世界経済への悪影響を懸念する声が相次ぎ上がり、通貨安競争の回避に向けて国際協調が不可欠との認識で一致した。

 各国の通貨当局者が共有したのは、先進国の量的緩和競争が起点となり、新興国も巻き込んだ通貨安競争を加速させるという悪循環への懸念だ。

 日米が量的緩和を競い合うことで、供給された過剰な流動性資金は成長市場である新興国へと雪崩を打つ。ブラジルは急激な資金流入によるレアル高を抑制するため、海外からの債券投資に対する金融取引税を2%から4%に引き上げる資本規制に打って出た。

 「(通貨安競争が)保護主義に転化する大恐慌時の過ちを繰り返してならない」。世界銀行のロバート・ゼーリック総裁は警鐘を鳴らした。通貨安競争が世界大恐慌の谷を深くし、第2次世界大戦の遠因ともなった1930年代の二の舞いにもなりかねないからだ。

 その通貨安競争とは無縁に見える大国が1つだけある。中国だ。

 世界最大の貿易黒字を背景にした大規模な元売り・ドル買い介入で人民元の対ドル相場の急激な上昇を抑える為替管理が世界の貿易不均衡をもたらしている、という批判が集中する。

 ティモシー・ガイトナー米財務長官は「過小評価された為替レートを持つ経済大国が通貨切り上げを避ければ、他国も同じように行動する。だから問題なのだ」と公言し、人民元切り上げを迫る包囲網を作る「国際協調」の必要性を強調した。

「中国の危機は世界経済の損失」

 これに対して中国は猛反発する。温家宝首相は3日に放映された米CNNテレビのインタビューで「中国で登録されている5万の米企業のうち2万2000は輸出企業。中国の輸出企業に制裁を課すのは、米企業を制裁するのと同じだ」と強烈な牽制球を投げた。6日に訪問したベルギーでも「欧州と中国の貿易額は 2010年に40兆円を超す」「中国の危機は世界経済の損失だ」と言い放った。約200兆円の外貨準備を使い、財政危機に陥ったギリシャを含め、あらゆる国の国債を買うことで恩を売り、財政赤字を抱えた日米欧各国の弱みを握るというしたたかさだ。

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