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財政破綻の夕張市に見る、過疎地におけるこれからの医療・介護

北海道で働く医療従事者のケース

  • 小林 美希

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2010年10月18日(月)

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 ピーポーピーポー。

 時間を置かず、救急車のサイレンが鳴り響く。

 筆者が訪ねたのは北海道の南部にある胆振地区(西は伊達市、洞爺湖町などから東は室蘭市、苫小牧市、登別市、白老町、むかわ町の辺りを指す)。地元で医療や介護に携わる者なら、救急車がどこを走っているかで、どこの病院にどんな疾患の患者が搬送されるか予想がつくのだそうだ。

 例えば、洞爺湖町の中核病院である洞爺協会病院には整形外科の常勤医がいないため、骨折などの救急搬送や手術は30kmほど離れた室蘭市の市立室蘭総合病院などで行い、リハビリ期に入ると洞爺協会病院に戻っている状況だ。洞爺湖町と室蘭市の間に伊達市があるが、伊達市内にある伊達赤十字病院でも整形外科医の体制は十分でなく、救急車が通り過ぎていくことが少なくないという。

 高齢者などが脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)を起こしたり、転倒して激しい頭部外傷を負ったりした場合、脳神経外科にかかるが、この場合も洞爺湖町や伊達市の基幹病院に医師がいないため、室蘭市の病院に搬送されている。救急車も搬送でフル回転の状況。医療体制は限界状態にある。

 出産についても、分娩を扱う医療機関は限られ、産婦人科医は少ない。洞爺湖町では1977年から分娩施設がなくなり、隣の伊達赤十字病院(車で20~30分)などでの出産となった。伊達赤十字病院は産科医不足で一時、難産になりやすい初産婦は受け入れられず経産婦(出産の経験のある妊婦)のみの対応になっていたが、今年4月から初産婦の分娩も再開した。ハイリスク妊婦の場合は伊達赤十字病院では対応が困難で、洞爺湖町などから車で1時間強かかる室蘭市に行くことになるが、そこでも分娩には限界があり、さらに遠くの苫小牧市や札幌市まで行かざるを得ない妊婦もいる。いつ妊娠異常を起こすかも分からない妊婦が、車で1時間もかけて通院している。

 また、室蘭市は山坂が多く、高齢者が通院するには家族の手助けがないと辛い。家族が日中家にいないケースや一人暮らしの高齢者がデイサービスや訪問による看護、介護、リハビリを受けることになるが、在宅医療・介護の体制も十分ではない。

 胆振地区で訪問リハビリの経験を持つ作業療法士の男性は「効率よく訪問先を組んだとしても1日に100km移動するのは当たり前。移動に時間がかかるため、1日に6~7件の訪問が限界で、リハビリが1人40~50分しかできない。冬は雪で思うように移動もできない。そうした地方の状況があっても、介護保険や診療報酬は一律。採算が合わない田舎はますます医療・介護過疎になる」と憤る。

老人保健施設に入れない人を抱える

 医師も不足しているが、看護師も不足している状況。ある病院の療養型病床では、看護師6人と看護助手(准看護師や介護福祉士、資格のない看護助手)20人でシフトを組んでいる。医療処置を必要とする患者も多いが、看護師が集まらない。看護助手として働く介護福祉士の女性(40代)は、「夜勤は2交代で、遅番は午後4時30分から翌日午前9時までの拘束だが、仮眠時間はない」と言う。

 看護師1人と看護助手1人が配置されるが、2人で50人前後の患者を看ている。これは困難が伴う。例えば、ベッドの下には、患者が起き上がるとブザーで知らせてくれるマットレスを置いている。というのも、患者が転倒しないよう駆けつけなければ、医療訴訟にまで発展する恐れがあるからだ。そのため、看護職は深夜ずっと、少ない人数で病棟を走り回ることになる。人員が少ないため、休日出勤などの振り替え休暇を取得するはずが、夏の間に生じた振り替え休日も翌年になってからやっとのことで取得できた。

 前述した40代の介護福祉士は、「急性期を脱しても自宅に帰れない人がここにいる。老人ホームなどへの入居待ちだが、インシュリン投与をしているような患者は老人保健施設にも入ることができない。看護師不足で老健に看護師が配置されておらず、処置ができないからだ」と社会的入院の実情を嘆く。

 口から食事を取れない患者は「胃ろう」といってチューブを使って体内に直接、栄養や水分を摂取させる。こうした胃ろうのある患者も福祉施設では入所を断られることが少なくないため、病院での社会的入院が余儀なくされている。そうした長期入院となる高齢者には認知症患者も多く、夜中に徘徊して“脱走”してしまう人もいるため、気が抜けない。

 超就職氷河期の今、産業に乏しい地域では、看護助手など資格のいらない職種などもあることから病院が雇用を吸収しているが、月給14万円程度。新人でも夜勤に入ったりオペ室に配置されたりなど、若手も我慢の限界に来ている。

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