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増殖するロンダリング

ラベルに惑わされないことの難しさ

2010年10月19日(火)

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 マネーロンダリング(資金洗浄・資金浄化)という言葉が一般化してしばらくたちます。このロンダリングという表現。近年ではマグロロンダリング、ポリシーロンダリング、学歴ロンダリングといった具合に、金融以外の様々な分野にも登場するようになりました。どうやらこの社会には、犯罪で得たお金以外にも「出所を隠したい」物事がたくさんあるようです。そこで今回は、そんなロンダリング関連語について紹介してみたいと思います。

出所を「洗って」ごまかす

 そもそもロンダリングとはどんな意味なのでしょうか。ロンダリングを英文字で書き表すとlaundering。原型はlaunderという動詞または名詞で「洗浄」を意味します。クリーニング店を表すランドリー(laundry)もlaunderの関連語。つまりロンダリングとランドリーは、仲間の言葉ということになります。

 しかし私たちがロンダリングという言葉を使うとき、頭の中では、「洗浄」というより「ごまかす」という意味をうかべているかもしれません。おそらくマネーロンダリング(money laundering)のイメージが強いからでしょう。実際英語のlaunderにも、俗語的な用法で「出所をごまかす」という意味があるそうです。

 ここで少し、マネーロンダリングについて復習しましょう。マネーロンダリングによってごまかそうとするのは「お金の出所」です。犯罪によって得たお金の出所を分からないようにすることで、犯罪行為や自分の正体がばれないようにしたり、そのお金を一般社会で使えるようにしたり、さらには新たな犯罪行為に使えるようにします。複数の銀行口座で振り込みを繰り返す、あるいはお金をいったん品物に換えて再び換金するなど、様々な方法で「洗浄」が行われています。

 この概念が一般化したのは80年代後半のこと。最初は麻薬取引を防ぐ観点で、国際的な協調が始まりました。まず1988年に「麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約」が採択され、締結国がマネーロンダリングの規制に動き始めました。そして翌1989年にはマネーロンダリングを規制するための国際機関として「金融活動作業部会(FATF)」が発足しました。さらに2001年の米国同時多発テロ事件以降は、マネーロンダリングの防止活動が「テロ対策」の意味合いも強めています。

 このような国際協調は、日本での日常生活にも様々な影響を与えています。例えば2003年施行の本人確認法(現在は犯罪収益移転防止法に移行)は、金融機関に対して「口座開設時の本人確認」を義務付けるようになりました。実際、銀行の窓口で運転免許証などの提示を求められた人も多いと思います。このような出来事を通じて、マネーロンダリングという概念が徐々に日本社会の中に根付いていったわけです。

産地をロンダリングする

 そんなロンダリングという言葉を、近年では金融以外の分野でも見かけるようになりました。「○○ロンダリング」という語形が数多く誕生しているのです。マスコミ記事で登場した単発の用例なども含めると、その事例は相当な数になるものと思われます。

 ロンダリング関連の造語で、もっとも用例が多いのは農産物や水産物などの食品分野かもしれません。これには、いわゆる産地偽装の問題が関係しています。

 例えば朝日新聞の2006年8月29日号では「マツタケロンダリング」という表現が登場。これまで北朝鮮産として日本へ直接輸入されていた松茸が、ミサイル発射の影響で消費者に敬遠されるようになりました。その結果、中国経由で「中国産」として輸入されるようになった様子を伝えています。同じ背景を持つ表現に「アサリロンダリング」もあります。

 また共同通信の2009年8月26日付けの記事は、農政関係者の発言として「タケノコロンダリング」という表現を登場させています。本来中国産であるタケノコについて、国内業者による取り引きを経由させたり、少量の国産品を混ぜたりすることによって「国産表示のタケノコ加工品」として販売していた実態を伝えています。

 産地偽装と言えば、2008年に大きな問題になったウナギの産地偽装事件も記憶に新しいところです。この事件では中国産のウナギの蒲焼きを、国内の有力ブランドである「愛知県三河一色産」と偽って表示したことが問題になりました。事件にかかわった販売業者と卸売業者は偽装を隠ぺいする目的で、ラベルの張り替え、架空の伝票操作、循環取引などの手法を用いていました。このような手法を、複数のメディアが「ウナギロンダリング」の語形とともに伝えています。

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「増殖するロンダリング」の著者

もり ひろし

もり ひろし(もり・ひろし)

新語ウォッチャー(フリーライター)

CSK総合研究所を経て、1998年から新語専門のフリーライターに。辞書・雑誌・新聞・ウェブサイトなどに原稿を提供中。2009年より『現代用語の基礎知識』(自由国民社)で「流行現象」のコーナーを担当。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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