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新防衛大綱が示すべき5つの基本(前編)

わが国を防衛する固い決意と10年先の国際情勢をにらんだ防衛の基本方針

  • 古澤 忠彦

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2010年11月2日(火)

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 菅直人内閣は、年末までに新しい防衛大綱を閣議決定する予定だ。防衛大綱は、日本の中期(5~10年)の安全保障政策の指針を示す重要な文書である。本来なら昨秋、改定する予定の文書だったが、政権に就いたばかりの民主党が1年延期した。
 このコラムでは、外交官や自衛隊のOB、国際政治学者などの専門家が考える防衛大綱の「私案」を紹介する。日本は、集団的自衛権の行使を今後も 禁止し続けるべきなのか? 非核三原則、武器輸出三原則などの「原則」を今後も維持し続けるべきなのか? 日米同盟はいまのままでよいのか? 米軍基地は 日本に必要なのか?
 安全保障政策に関する議論は、これまでタブー視されてきた。しかし、本来はみなで議論し決めていくものである。このコラムで紹介する私案は、ビジネスパーソンが自分のこととして安全保障政策を考える際の座標軸づくりに役立つはずだ。

第6回は、元海将の古澤忠彦氏だ。

 昨年夏、自由民主党から民主党へと政権が交代した。「わが国は歴史的な転換点を迎えた」と騒がれた。自民党政権の末期的状況に嫌気のさした国民が非自民党政権を選択。そして、民主党・鳩山政権が生まれた。彼らが提示したマニュフエストは実現性に乏しいものであったが、宣伝戦が効を奏して順風満帆の出港であった。

 だが、「鳩山丸」はいきなり「安全保障」という暗礁多い海域に流されて、際どい航海を強いられた。外交、安全保障政策は、政権交代によって急激に変えるべきものではない。しかし、鳩山政権は行き先を明確にしないまま、「日米同盟」の舵を大きく切った。自ら望んで暗礁多い海域に突入してしまった。普天間基地問題に象徴されるように、鳩山政権は、哲学や戦略を持たないままに、わが国の安全保障の基軸である「日米同盟」を破綻の危機にさらしている。そして、政権自身がそれに気付いていない。このことこそが、わが国の真の危機である。

 国際情勢が急激に変化し、危機的状況が多様に複雑に生起する中で「21大綱」(注:「21」は平成21年の意)の策定が期待されていた。だが、鳩山政権は、「防衛計画大綱」と「中期防」の作成を1年間延期した。政権交代の成果をことさら強調したかったのであろう。自民党政権下で準備された大綱研究を蹴った。しかし現実には、民主党政権の確たる国家戦略や安全保障政策が出ないまま、大綱策定の期限が近付きつつある。

 防衛計画の大綱は、おおむね10年先をめどに防衛力の整備の方向を決めるものであり、将来のわが国の安全保障の態勢を描くものである。10年後およびその先のわが国の国民が安泰に生活を営むことができる態勢を築くため、大綱への期待を述べる。

大綱の位置づけを改めて考えよ

 「防衛計画の大綱」(以下、防衛大綱)は、本来、わが国の安全保障の最高責任者である首相が国家目標と国益を明示し、それを実現するための国家安全保障戦略を示したことを受けて、政府が防衛政策の指針として提示するものである。外交・防衛政策は他の政策に優先して重視するべきものである。大綱は、国家主権の確保、領域の保全、国民の生命・財産の安全を守るという国家と政府の覚悟と決意の表明とも言える。

 防衛大綱は、アジア太平洋および世界の安全保障環境の変化を見据えた当面10年間の防衛政策の基本的枠組みを規定する、この防衛政策を実施するために必要となる防衛力の量と質、および円滑な運用の基本的方針を明示しなければならない。しかしながら、これまで防衛大綱は、防衛政策の下位に位置づけられてきた。その理由には次の3つが考えられる。

現行の大綱が抱える3つの問題点

 一つは、「国益とは何か? どう守るのか?」を政治、学会、マスコミがキチンと議論してこなかったことによる。彼らは、先の大戦のトラウマ、周辺国への過剰な配慮、選挙の票にならない、といった理由からあえて触れることを忌避してきた。その結果、国家の存在意義や国益に対する国民の役割、自衛隊の存在意義などを真剣に本質論として論じることがほとんどなかった。

 わが国の防衛政策の策定においては、「特異な軍事評論」がかかわってきた。そもそも国防・自衛隊のあり方を政治のレベルで論じるときには「自衛隊による安全確保」を主題にするべきだ。しかし日本では、「軍隊=平和に対する脅威」という視点から「自衛隊からの安全確保」を同時に論じてきた。「軍隊(=自衛隊)からの安全」は学問の世界の話題ならともかくも、実際に部隊や隊員を運用する立場の政治家が政策論として論じるべきではない。政治と軍隊(=自衛隊)の相互に熱い信頼があってこそ、軍隊は任務に邁進できるのである。政治に信頼されていない、常に警戒の目で見られていると感じた途端に、身命を賭して任務に邁進する士気は失せる。

 2つ目は、自制的防衛政策が軍事的合理性を過剰に抑制したことである。「非核三原則」、「軍事大国にならない」、「専守防衛」、「攻撃兵器を保有しない」、「集団的自衛権を行使しない」――などの否定形の文言が、日本の防衛政策が自制的であることを顕著に示している。その最たるものが憲法9条の「戦力を保持しない」である。これらの政策的文言を前提にして、政府はこれまでの大綱を策定してきた。

 3つ目は、大綱に添付される「別表」の存在である。これは、防衛力の整備規模を数値で表わしたもので、当面の情勢に対応するために保有するべき陸海空自の兵力が一覧表にしてある。。別表があるばかりに「理念なき防衛力整備」に走りがちである。大方の国民は、大綱の本文を読むことなく「別表」のリストのみを見て大綱を理解したつもりになり、これだけの兵力があればわが国は安泰と誤解する。戦車や護衛艦や戦闘機がわが国の防衛上なぜ必要か、どのような役割を果たすのかまで、思いを致すことがない。いわば、大綱は「買い物計画」に堕してきた。

コメント6件コメント/レビュー

「冷静に」と口を開けば唱えるだけの政府とマスメディアの奇妙な一致。まるで責任回避と思考停止状態で嫌悪感を覚えます。一方でこのような真正面からこのような知見が見受けられるようになったのは社会に「国力の低下」=「個人の生活レベルの悪化」という危機感が生まれてきた証拠でしょう。第二次大戦後65年を経て外国との競争に軍事力も経済力も負けに至りつつある現状を踏まえ、意識だけでなく行動を変える時が国家として国民としても来たのだと思います。(2010/11/03)

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「冷静に」と口を開けば唱えるだけの政府とマスメディアの奇妙な一致。まるで責任回避と思考停止状態で嫌悪感を覚えます。一方でこのような真正面からこのような知見が見受けられるようになったのは社会に「国力の低下」=「個人の生活レベルの悪化」という危機感が生まれてきた証拠でしょう。第二次大戦後65年を経て外国との競争に軍事力も経済力も負けに至りつつある現状を踏まえ、意識だけでなく行動を変える時が国家として国民としても来たのだと思います。(2010/11/03)

>離島・領域の安全確保は、緊密な島嶼間ネットワークを構築する情報通信、海路空路の島嶼間シーレーン、人の流れと高い関心に大きく依存する。....尖閣諸島には港・飛行場・通信基地が設立できる。沖の鳥島の場合は、浮島ドックなど設置して、日本の駆逐艦・潜水艦の寄港地、補給基地とすれば良い。羽田D滑走路と同じ工法で戦闘機の離着陸可能な滑走路を作る。日本海、東シナ海の小島にも同様の浮島ドックを作ると良いのでは。ともかく中国の潜水艦が自由に出入りするのは排除しないと。(2010/11/02)

シーレーン。どこまでも広がる海。あぁ、どこまで守る気かなぁ。そうして脅威も恐怖も戦線も拡大していったかつての記憶と重なるけれど。(2010/11/02)

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