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今さら聞けない「生物多様性」保全のホントの話

トキやパンダ=希少種を守るお話じゃない!
COP10でも登場 「里山」幻想が事実を歪曲?

  • 岸 由二,山根 小雪

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2010年10月25日(月)

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 いま、名古屋で「COP10(生物多様性条約第10回締約国会議)」が開催されています。生物多様性条約に加盟する200近い国や地域の代表が1万人規模で集まり、生物多様性をキーワードに、喧々諤々の議論が展開されています。

 ご存知の通り、「生物多様性」は「地球温暖化」と並ぶ、21世紀の2大環境問題です。が、どうでしょう、「地球温暖化」問題に比べると、この「生物多様性」問題、今ひとつ、その重大性がわかりにくくはありませんか?

 さらに企業の立場に立つと、「生物多様性」の保全になぜ企業が取り組まなければならないのか、正直のところピンとこない人、少なくないのでは。医薬品などに利用可能な遺伝子資源として生物の多用性を重視する話なども、関連業種の人以外には縁が遠そうというのが正直なところでしょう。

 そこで、『利己的な遺伝子』(リチャード・ドーキンス著)の訳者で日本における進化生態学の草分けの一人であると同時に、NPO法人鶴見川流域ネットワーキング、NPO法人小網代野外活動調整会議で都市河川の鶴見川や三浦半島小網代の森の保全活動を長年続け、国や地方公共団体の環境関連の専門委員を数多くこなしてこられた慶応義塾大学の岸由二教授に、「生物多様性」について、イロハのイから教えてもらうことにいたします。

―― 今、名古屋で生物多様性の会議、やってますよね。ただ、あまり大きい声でいえないんだけど、「生物多様性」って実は意味がよくわかんないんですよ。テレビや新聞を見てると、要は「トキを守れ!」「パンダが大切」みたいな話に見えるんですが。

 確かに生物多様性のニュースを眺めると、そう思ってしまうのも無理はないですね。テレビも雑誌も新聞も生物多様性のニュースをやるときには、世界の珍しい生きものオンパレードです。でも、生物多様性の保全=希少種を守れ、というのは間違いです。

岸 由二(きし・ゆうじ)
慶應義塾大学教授
1947年東京生まれ。横浜市立大学文理学部生物学科卒業、東京都立大学理学部博士課程修了。理学博士。進化生態学、流域アプローチによる都市再生論、環境教育などを専門とする。鶴見川流域、多摩三浦丘陵など首都圏のランドスケープに沿った都市再生活動の推進者としても知られる。著書に『自然へのまなざし』(紀伊國屋書店)『いのちあつまれ小網代』(木魂社)、『環境を知るとはどういうことか』(養老孟司との共著、PHPサイエンス・ワールド新書)、訳書に『利己的な遺伝子』(ドーキンス、共訳、紀伊國屋書店)、『人間の本性について』(ウィルソン、ちくま学芸文庫)、『生物多様性という名の革命』(タカーチ、監訳・解説、日経BP社)、『足もとの自然から始めよう』(ソベル、日経BP社)、『創造』(ウィルソン、紀伊國屋書店)など多数。

パンダやトキを守れ、アマゾンの自然が生物多様性、というのが間違いなわけ

―― え、貴重な生きものを守ろう、という話じゃないんですか!

 そもそも「生物」多様性って言葉が悪いのかもしれません。「生物多様性」の元の言葉は、英語のバイオダイバーシティ。これを、バイオ=生物、と訳したから誤解を招いた部分があります。まるで珍しい生きものを守るイメージがついてしまって、本当の意味を歪曲してしまっている。

―― じゃあ、ですね、生きとし生けるものはみんな大切だから、希少種だけじゃなくて、いろんな種類の生きものを守ろうってってことですか? フナやザリガニやタンポポのような普通種を含めて。

 これまたポイントがずれた解釈ですね。生物の種類が減らないようにするのは大切ですが、それだけでは、「バイオダイバーシティ」の本来の意味にそぐわないんです。「バイオダイバーシティ」の「バイオ」という単語には、個々の生物種だけじゃなくて、種内の遺伝子構成、さらには地形的な広がりの元で生物のネットワークが作り上げる生態系、以上3つの多様性という意味が込められているんですよ。

―― バイオダイバーシティのバイオは、遺伝子、生物、生態系の3つを同時に表している?

 そうです。地球上に住まう膨大な数の動物や植物は、みんな相互に関係し合いながら生きています。生きものたちは大地や水界や空といった環境の枠組みに対応してネットワークを形成し、多様な生態系を構成している。 ここでいう生態系は、なにもアマゾンの熱帯雨林やグレートバリアリーフみたいな雄大な自然の中だけにあるのではありません。東京湾にもニューヨークの街の中にも、あなたの街の公園や家の庭にも、それぞれの場所ならではの「生態系」があります。

 まず、そんな多様な生態系そのものをそれぞれの場所で守っていく。その際には生態系の中で暮らす生物の種類をなるべく減らさないようにする。さらに同じ種類の生物でも、進化を経て異なる遺伝子を持ったものが地域ごとに住んでいる。そんな遺伝子の多様性も守っていく。このように、「生態系」「(生物の)種」「遺伝子」という3つの多様性を全部守ってはじめて、生物多様性=バイオダイバーシティを保全したといえるわけです。

食べ物も酸素も生物由来 生物多様性の危機は人類の滅亡と直結する

―― なるほど、生物多様性の意味が、ちょっと分かってきたような気がします。でも、ですね、だとしても、なぜ国際会議まで開いて、不況にも関わらずコストをかけて、生物多様性とやらを人間が守らないといけないんですか? ちょっとくらい生きものが減っても人間の生活には支障がない気がするんですけど……。

 いえいえ、生物多様性と人間とは大いに関係ありますよ。生物多様性が大崩壊すると言うことは、白亜紀末の大絶滅のような事態につながるかもしれないといういことです。極端なことをいえば人類の存続が危うくなります。簡単な話、植物がいなくなると光合成が行われなくなって酸素が足りなくなり、息ができなくなる。だいたい、食べ物はすべて動植物由来、でしょう(笑)。

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