• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

スマートグリッドへの懐疑論を検証する

「安定供給」は、今の日本の電力システムが絶対なのか?

2010年11月15日(月)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 ウェブサイト上で連載コラムを執筆させてもらうのは、私にとって初めての経験であるが、書籍や論文などと比べると、リアルタイムで読者の方々から様々な反応が返ってくるため、たいへん刺激になる。その貴重なコメントの中には、スマートグリッドに対して懐疑的な意見も多く、大いに参考にさせていただいている。今回はそれら懐疑論を引用しつつ、私のこれまでのスマートグリッド論の現実味を検証してみたい。

世界は「中央管理・閉鎖型」を目指してはいない

 第1に、前回(「日本の現状に見る『インターネットの“悪夢”、再び』」)で触れた通り、日本は既にIT(情報技術)を活用した電力網の整備を終えている。アメリカは、電力市場の自由化後に設備投資が滞って老朽化した電力網に再投資する、すなわち日本の電力網を目指すだけだから、それを相手にする必要はないという指摘がある。アメリカ発のスマートグリッドへの懐疑論として、1年ぐらい前までにはこのような主張が多かったが、さすがに最近は少なくなった。

 なぜならば、実現するかどうかは置いておくとしても、スマートグリッドが目指すものは、日本が得意とする中央管理・閉鎖型の電力システムではないからである。これまで説明してきた通り、欧州も含めて各国が目指しているものは、日本の既存の電力網とは根本的に思想が異なる、自律分散・開放型の電力網である。そうでなければ、アメリカであれだけ多くのベンチャー企業が参入し、“empower customers”といった標語を掲げ、あるいは政府が標準化に勤しむ必要はない。アメリカですら、まさにリープフロッグ(=蛙跳び)を狙っているのである。

 これまで日本の電力網の形成・発展に尽力されてきた方々からすれば、その安定性や信頼性に強い自負があるのであり、アメリカが今さらスマートグリッドなどというのは片腹痛いと思う気持ちは理解できる。確かに、日本の電力網は世界の中で最もIT化が進んでおり、それは電力会社が技術開発や設備投資に地道に努力してきた結果であり、我々需要者は停電時間の短かさなどその恩恵を享受している。

 しかしながら、電力に限らずイノベーションが発生する際には、これまでの「発展担当者」はどうしても一面的な見方をしがちになる。既存のシステムの完成度が高ければ高いほど、それに代わるものは存在しないと、連続線上の発想に終始してしまう。そこに、「蛙が跳び越える」余地が生じるのではないか。

サービス事業者の参入が必要条件

 第2に、スマートグリッドが想定する、需要側が能動的に協力する需給調整やEV(電気自動車)によるV2G(Vehicle to Grid:自動車から電力網に電気を供給)は、机上の空論であり、現実には自律分散・開放型の電力網など成立しないという指摘がある。寄せられたコメントの中にも、エアコンの温度設定が強制的に28度になれば、「使用者側にかなりの負担を強いる」との指摘があった。

 V2Gについても、現状のEV用のバッテリーは電力網への放電を想定しておらず、航続距離を少しでも長くすることに鎬を削っている自動車メーカーから見れば、貴重な電力を需給調整に使われてはたまらない、その際の安全性など保証できないと反論したくなる。需要者は基本的にわがままで、供給者の都合に合わせた行動などしてくれない、ピークシフトなど絵空事だということになる。

 このような懐疑論への答えとしては、「サービス化」の質が鍵になる。確かに、何の見返りもなく、何の通知もなく、真夏に突然室内の気温が上昇すれば、暑がりの私でなくても不愉快になるだろう。一方で需要者にとってニーズの高い、きめの細かいサービスが、魅力的な価格で提供されれば、机上の空論は市場の実需になると、私は考えている。

 換言すれば、そのようなサービスが開発されなければ、スマートグリッドの市場は拡大せず、机上の空論で終わる可能性は否定できない。だからこそ私は、電力会社だけでなく第三者たるサービス事業者が、この市場に参入できるようにすることが重要であり、その前提として自由市場において電力価格が変動することが不可欠と指摘してきた。

コメント13件コメント/レビュー

『一方で、垂直統合型の公益事業が、ボトルネック設備をアンバンドルすることにより競争が促進され、それを利用した新たなサービスが生まれることは、世界で認められている一般的な理論であり、電力においても目新しいことではない。』 一方で「新規参入者によるう基幹インフラのただ乗りが発生し、破滅的なシステム事故が発生する」という共通事実(英国の鉄道事故や米国の大停電)には頬かむりですか?(2010/11/17)

「インターネットのアナロジーで読み解く 日本のスマートグリッド出遅れ論」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

『一方で、垂直統合型の公益事業が、ボトルネック設備をアンバンドルすることにより競争が促進され、それを利用した新たなサービスが生まれることは、世界で認められている一般的な理論であり、電力においても目新しいことではない。』 一方で「新規参入者によるう基幹インフラのただ乗りが発生し、破滅的なシステム事故が発生する」という共通事実(英国の鉄道事故や米国の大停電)には頬かむりですか?(2010/11/17)

筆者の言う「自律分散型」とは何なのかよくわからない。マイクログリッドのような気もするし、デマンドレスポンスのような気もするが、前者とすれば欧米がこれを目指しているわけではないし、後者だとすれば、デマンドレスポンスは20年前から行われてきた話で、筆者が言う「中央管理型」と対立軸になるような話ではない。それに、筆者が言及しているサービスの中で、既存の電力システムをガラガラポンしなくては実現できないものなどあるのだろうか?100%再生可能エネルギーによる自給だって周波数の中央管理は必要である。EVの蓄電池の交換推奨なんて電力網とは何の関係もないし。(2010/11/15)

▼筆者はEVに期待し過ぎではないか。EVの性能からすれば、当分の間は内燃式とEVが得意分野で棲み分けることになるだろう。そうであるならば既存システムで対応できる変化に留まる。▼電力はつまるところ動力として使われるわけだから、サービス化とはいっても所詮は「電力を消費する新しい機器が大量に普及する」という意味ではないか。エアコンが普及して消費電力が増加したことと大差ないように感じる。▼「平準化」のためにより最適な解がスマートグリッドなのだと理解したが、日本のシステムは優秀であってもオーバースペックでペイしないというのが他分野での頻発事例なのだから、「日本のスマートグリッド出遅れ論」を語るのであればなにより価格面の問題が1番であろう。(2010/11/15)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

リクルートは企業文化そのものが競争力です。企業文化はシステムではないため、模倣困難性も著しく高い。

峰岸 真澄 リクルートホールディングス社長