「日本キラピカ大作戦」

これが中国に依存しないモーターだ

レアアースを使わない電気自動車の可能性が見えた

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2010年11月5日(金)

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 「脱中国依存」、「脱レアアース」が叫ばれる中、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が、2007年度より5カ年計画で、「次世代自動車用高性能蓄電システム技術開発事業」の一環として、レアアースを使わない次世代自動車用モーターの研究開発を推進している。現在、7つのプロジェクトが進行中で、その中の1つが、北海道大学の竹本真紹准教授が研究開発を進めている「フェライト磁石を用いた3次元モーター」だ。

北海道大学の竹本真紹准教授

 「ここまで苦労するとは思わなかった。しかし、ついに、磁力がネオジム磁石の10分の1しかないフェライト磁石を使って、同等の出力を出すモーターの開発に成功した」。そう語るのは、北海道大学の竹本真紹准教授である。

 現在、竹本准教授が研究開発に取り組んでいるのが、レアアース(希土類元素)を使わない電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)用のモーター、「フェライト磁石を用いた3次元モーター」だ。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、2007年度より5カ年計画で、「次世代自動車用高性能蓄電システム技術開発事業」を開始。その一環として、レアアースを使わない次世代自動車用モーターの研究開発を推進している。現在、7つのプロジェクトが進行中で、その中の1つが、竹本准教授が研究開発を進めている「フェライト磁石を用いた3次元モーター」プロジェクトである。

レアアース生産量の97%が中国

 HEVやEVの重要な構成要素であるモーターには、現在、レアアースである「ネオジム」と「ジスプロシウム」を含むネオジム磁石が使われている。高出力で、エネルギー変換効率が高いからだ。

 ネオジム磁石は、1982年に日本人が発明した永久磁石で、数ある磁石の中で、最も強い磁力を持つ。そのため、今では、エアコンや冷蔵庫、パソコンなど、多くの電気製品で使われている。次世代自動車のキーデバイスの1つでもある。

 しかし、現在、レアアースの生産量の97%を中国が占めている。2004年末頃からレアアースの価格は上昇し始めていたが、今年に入り、中国政府による輸出枠の前年比40%削減等に伴い、一気に高騰。ここにきて、レアアースを使わず、同程度の出力とエネルギー変換効率を出せる次世代自動車用モーターの開発が重要性を増してきている。NEDOの各プロジェクトでも、研究開発が加速している。

 「大量生産を考えた場合、ネオジム磁石が使えないとなると、フェライト磁石を使うしかないな」。

 各プロジェクトがさまざまな方法でレアアースを使わないモーターの開発に取り組む中、竹本准教授が選択した道は、「ネオジム磁石の代わりに、フェライト磁石を使う」ということだった。

スーパーカーと軽自動車ほどの差

 フェライト磁石の原料は酸化鉄。レアアース資源に乏しい日本であっても、中国の資源戦略の影響を受ける心配がほとんどない。価格もネオジム磁石の約10分の1と安価だ。しかしながら、その分、磁力もネオジム磁石の約10分の1であるのが弱点だった。

 現在のフェライト磁石の主な用途は吸着用や小型モーター用である。子供がよく遊んでいる棒磁石もフェライト磁石だ。身近な磁石の1つであることには間違いないが、パワーの面でネオジム磁石と比べると、スーパーカーと軽自動車ほどの差がある。

 ネオジム磁石の代わりにフェライト磁石を使って、同等の性能を出すことなど果たしてできるのだろうか――。

 しかし、竹本准教授はプロジェクト開始当初、漠然とした自信を持っていた。「モーターの構造を少し改良すれば、すぐにネオジム磁石に匹敵する性能は出せるようになるだろう」。モーターの研究開発一筋でやってきた竹本准教授は、いわばモーターのプロ。企業との共同開発の経験も豊富だった。

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著者プロフィール

山田 久美(やまだ・くみ)

 科学技術ジャーナリスト。都市銀行システム開発部を経てフリーに転身。月刊誌やウェブサイトでハードウエア、ソフトウエアのレビュー、IT関連の記事を多数執筆。2005年3月に技術経営(MOT)修士取得。現在はサイエンス&テクノロジー関連、技術経営関連の記事を中心に、執筆活動を行っている。研究者の研究内容を聞くのが最もワクワクする時間。希望ある未来社会を実現するためのサイエンス&テクノロジーの追求をライフワークにしている。Twitterアカウントはこちら



このコラムについて

日本キラピカ大作戦

 日本はCO2排出量の削減や高齢化、需要不足など、大きな課題に直面している。そのため、日本全体に閉塞感が漂い、希望ある未来社会が描きづらくなっている。しかし、これらの課題はいずれ世界のすべての国が直面するものでもあり、今の日本を「課題先進国」と位置づけることもできる。
 「これは日本にとって千載一遇のチャンスである」と言う東京大学総長室顧問で三菱総合研究所理事長の小宮山宏氏のインタビューを皮切りに、日本が世界をリードできる技術の最先端や“産声”を追う。エコ、スマート、シルバー…。日本にはサステナブルな社会を実現するためのピカイチ技術がたくさんある。これを存分に生かして、キラキラと輝く未来を創り出そう。

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