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世代間格差は事前積立の導入で解決できる

迷走する「高齢者医療新制度」は格差の視点を欠く

2010年11月11日(木)

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高齢者新医療制度、見過ごされる世代間公平の視点

 前回のコラム「サンデル教授に問いたい『搾取』の正当性」 では、将来世代と老齢世代(65歳以上)では約1億2000万円もの世代間格差がある実態を説明した。このような世代間格差を引き起こす主な要因は2つある。一つは、現役世代から老齢世代への移転。年金・医療・介護といった「賦課方式の社会保障」だ。もう一つは、将来世代や若い世代へのツケの先送りである「財政赤字」である。

 前者について、政府は今、新しい高齢者医療制度を検討中だが、世代間格差を是正する視点は薄いようだ。というのは、厚生労働省は10月下旬に、2013年度に導入する新制度の年間保険料の試算を示した。高齢化の進展に伴い、国保に加入する75歳以上の老齢世代の負担も増加させるものの、金額ベースでは、健保組合などに加入する現役世代を中心に負担をそれ以上に上昇していくシナリオである(図表1)。これは、時間がたてばたつほど、世代間格差が拡大し、若い世代や将来世代の負担が重くなっていくことを意味する(特に、健保組合と共済組合の負担増が大きい)。このため、負担増となる世代を中心に、多くの批判が噴出し始めた。新制度は、早くも迷走の兆しが出てきている。

図表1:1人あたりの年間保険料(平均)

  2010年度 2013年度 2025年度
75歳以上(国保) 6.3万円 7.0万円 9.5万円
健保組合(大企業) 19.5万円 21.6万円 28.9万円
協会けんぽ(中小企業) 17.1万円 18.5万円 24.3万円
共済組合 21.7万円 24.5万円 33.0万円
国保(74歳未満の自営) 9.0万円 9.4万円 12.9万円

 このような現象が起こる理由は簡単である。それは、検討中の高齢者新医療制度に限らず、今の社会保障(年金・医療・介護)が「賦課方式」(現役世代が老齢世代を支える仕組み)を採用し、それを制度設計のベースにしているからだ。だから、解決策は簡単で、この制度設計のベースである賦課方式をやめるか、修正してあげればよい。

賦課方式がもたらす世代間格差のメカニズム

 そこで、以下では、「賦課方式の社会保障(年金・医療・介護)」が引き起こす世代間格差の改善方法の一つである「事前積立」について説明する。

 なお、後述するように、この事前積立は、世代間格差を改善するための「強制貯蓄」であり、誰もが「シンプル」で自然な解決策と思うだろう。この事前積立をクリアに理解するには、まず、賦課方式の社会保障が世代間格差を発生させるメカニズムを理解する必要がある。

図表2:高齢化の進展と社会保障負担

  第1期 第2期
  現役世代 老齢世代 現役世代 老齢世代
人口比 5 1 3 1
現役世代1人当たりが老齢世代に移転する額 80万円/年 133万円/年

 そこで、このメカニズムを、図表2のような単純な経済で考えてみよう。急速に高齢化が進展する現在の日本経済のように、この経済でも、「現役世代5人に対して高齢者1人(第1期)の人口比が「現役世代3人に対して高齢者1人」(第2期)に上昇する。第1期には16.7%の高齢化率が第2期には25%に上昇するわけだ。

 年金・医療・介護を合計した老齢世代1人当たりの社会保障費は1年当たり400万円。これを現役世代の負担で賄う。

 この前提で、第1期と第2期の現役世代の負担(保険料)を試算すると、第1期における現役世代の負担は1年あたり80万円となる(400万円÷5人)。つまり、現役世代1人当たり80万円を老齢世代に移転することになる。

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「世代間格差は事前積立の導入で解決できる」の著者

小黒 一正

小黒 一正(おぐろ・かずまさ)

法政大学経済学部教授

1974年生まれ。京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。大蔵省(現財務省)入省後、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。専門は公共経済学。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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