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なぜ「多様性」は目指すべき目標なのか?

変化が激しい時代に不可避な戦略

2010年11月10日(水)

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 10月30日、名古屋市で開催されていた生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が閉幕しました。名前にある通り、生物多様性に関する話し合いを行う国際会議でした。「生物」に限らず、最近では「多様性」という言葉をさまざまな分野で見聞きします。そして、そのいずれも多様性を「目指すべき目標」としてとらえているようです。どうして多様性が目指すべき目標になったのでしょうか。多様性の意味について、言葉の視点から探って見ることにしました。

まずは「冗長性」について考える

 本題に入る前に、まず「冗長性」という言葉について説明させてください。ふつう「冗長」という言葉からは、良くないニュアンスしか感じることができません。例えば広辞苑で冗長を調べると「くどくどと長いこと」という説明が登場します。一度言えば済むことを何度も繰り返す場合、簡単に言えることを回りくどく表現する場合が、これに相当します。いずれも余剰を無駄と判断する価値観の上に立った説明です。

 この価値観が技術分野では逆転します。技術分野における冗長(余剰)は、安全や安定のために必要不可欠な要素となります。例えば大規模な情報システムの分野では、システムダウンによる影響を避けるため予備装置を設けるが当たり前です。このような対策を「冗長化」と呼び、そうして得られる安定性のことを「冗長性」と呼びます。

 冗長性が必要な技術分野は多岐にわたります。例えばデータ通信の分野では、誤送信を防ぐため、本体となるデータのほかに余分なデータ(誤りの検出や訂正に利用する情報)を付け加える技術が必要です。また記憶装置の分野では、故障によるデータ消失を防ぐ目的でハードディスクを多重化して運用する技術もあります。さらに航空機や鉄道車両の設計では、故障による影響を低減するため、制御系統(操舵やブレーキなど)を二重化する工夫も行っています。いずれも余剰が安定性や安全性を生み出しています。

大震災で、冗長性の大切さを知る

 「冗長性」と同義である「リダンダンシー(redundancy)」という言葉が、かつて新聞などのマスコミで注目されました。それは1995年のこと。阪神淡路大震災が契機となり「社会基盤の代替機能が必要なのでは?」という論調が強まったためです。当時の新聞記事を見ると「効率一辺倒ではなくコストがかかってもリダンダンシーを」(朝日新聞1995年2月19日・財界要人の発言)などの提言が登場しました。

 実際、同震災では被災地を並行して走るJR・阪急・阪神の鉄道路線が寸断されました。このため西日本を横断する基幹鉄道網も寸断されてしまったのです。ただこの地域は、こうした複数の鉄道路線が並走していたため、復興途上で大阪から神戸に至る乗継経路をなんとか確保できました。つまりこの震災は、冗長性の「不足」だけでなく、冗長性の「有用性」も同時に示す事例になりました。

 ともあれ冗長性やリダンダンシーは、このころから一般でも注目される概念になりました。そして「余剰が安定性や安全性を生み出す」という考え方も、徐々に浸透し始めたるのです。

冗長性は同じ要素、多様性は異なる要素

 さて、以上で説明した冗長性という概念には、ある一つの特徴があります。それは「同じ要素の余剰である」という特徴です。例えば「冗長性」について語るとき、「鉄道路線」の安全性を高める要素は、別の「鉄道路線」ということになります。もちろんJRと阪急と阪神は別種類の組織という見方もできるでしょう。ただ冗長性と表現する場合は、あくまでもそれらの「同じ側面」について注目します。

 これに対して今回のテーマである「多様性」には別の特徴があります。それは「異なる要素が集まったもの」という特徴です。例えば、随筆家の寺田寅彦が1931年に著した「連句雑俎(れんくざっそ)」には、次のような表現が登場します。「日本の景観の多様性はたとえば本邦地質図の一幅を広げて見ただけでも想像される」。寺田はこのあと「日本の国土は異なる地質の断片が組み合わさって出来ているので、数キロメートル移動しただけでも景観が極端に変化する」という趣旨のことを述べています。この場合、極端に変化する景観の数々が「多様性」、すなわち「異なる要素の集まり」だと解釈できるでしょう。

 では、多様性も冗長性と同じような利益を産み出すのでしょうか。データベースで「多様性」を取り上げている新聞記事を調べることで、多様性の価値について探ってみたいと思います。使用データベースは、G-Search「新聞・雑誌記事横断検索」。対象メディアは朝日・毎日・読売・産経の4紙。対象期間は1993年以降です(4誌のデータが出そろうため)。検索キーワードは「多様性」と、これと同義のカタカナ語である「ダイバーシティ(diversity)」としました。

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「なぜ「多様性」は目指すべき目標なのか?」の著者

もり ひろし

もり ひろし(もり・ひろし)

新語ウォッチャー(フリーライター)

CSK総合研究所を経て、1998年から新語専門のフリーライターに。辞書・雑誌・新聞・ウェブサイトなどに原稿を提供中。2009年より『現代用語の基礎知識』(自由国民社)で「流行現象」のコーナーを担当。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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