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「日本型」スマートグリッドの可能性と成長戦略を探る

《最終回》電力も“ガラパゴス化”でいいのだろうか?

2010年11月22日(月)

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 これまで、スマートグリッドに関する私の大風呂敷の議論にお付き合いくださり、読者の方々には心より感謝している。既にお分かりの通り、私はスマートグリッドの推進論者である。しかしながら、何が何でも推進すべきとは思っていない。スマートグリッドはいまだ確立されたものではなく、国によって地域によってその動機や態様は異なるだろう。何のために導入するのか、その可能性や必要性を冷静に吟味することが重要である。

 本連載コラムの最終回では、最新の状況を踏まえつつ、今後の日本がスマートグリッドにどのように取り組むべきか、提言してみたい。

スマートグリッドに取り組む多様な動機

 これまでの議論をまとめれば、スマートグリッドに取り組む動機は複数あることが見えてきた。主たるものとして、地球温暖化対策とピークシフトによる設備投資の効率化の2つを中心に議論してきたが、これら以外にも、EV(電気自動車)用インフラの構築、エネルギー安全保障、電力の安定供給の実現、広い意味での産業振興などの動機もある。これら複数の要因は、相反したり手段と目的の関係になっていたりと、非常に複雑な関係にある。それを私なりに整理したのが、図1である。

 まず外側にある四角は、利害関係者を表している。上段が電力供給者、すなわち日本では10電力会社を、下段がその供給を受ける側として、左側がより直接的な電力需要者、右側が電力の需要と関係なく影響を受ける国民全般の立場を表している。これら以外には、右側の政府と左側の関連産業界が関係する。関連産業界とは、電力を利用するオフィスや工場などではなく、IT(情報技術)企業、太陽光発電メーカー、EVメーカーなど、スマートグリッドに関係する業界という意味である。

 これらの内側に楕円で記したのが、スマートグリッドに取り組む動機である。その中でより外側、すなわち利害関係者に近いところに位置するのが、より巨視的な、一般的な動機であり、内側に位置するのはより具体的、個別的な動機を意味する。矢印「→」は、巨視的な動機に対して、その先にある具体的な動機が目的に対する手段の関係にあることを、矢印「」は、2つの動機が相反することを示している。

 例えば、「地球温暖化対策」は、政府や国民全般にとって重要な動機であり、それを実現するには「再生可能エネルギー導入」や「EV用インフラの構築」が手段となり、これらはスマートグリッドを要求する。一方で、「再生可能エネルギー導入」は電力系統の制御を困難にするため、「電力の安定供給」を脅かし、特に電力供給者にとっては「設備投資の効率化」に反する。

 第1回で説明した3つの技術革新は、具体的な動機として内側に位置しているわけだが、これらの中で「再生可能エネルギー導入」に相反する矢印「」が集中している点が目を引く。これは、太陽光や風力といった分散型発電がコスト高であり、市場ベースでは進まないことを意味している。ある動機がほかの動機と相反する関係になければ、それは市場ベースで進むことが期待できるが、そうでない場合には公共利益を踏まえた政治的判断に基づき、政策的支援が必要となる。これが、前回(「『安定供給』には、今の日本の電力システムが絶対なのか?」)、私が説明したスマートグリッドの「公共要因」であり、取り組みの難しさ、複雑さを表している。

 第4回(「主導権を狙うアメリカ、したたかに便益を求める欧州」)と第5回(「国家主導で投資が進む中国、そしては日本は?」)で取り上げた、国別の取り組みの違いもこの図から説明できる。

 アメリカでは、電力供給者の「設備投資の効率化」と関連産業界の「新規産業の振興」という動機が強い。だからこそ「スマートメーター/ピークシフト」に積極的で、これら企業主導で電力需要者に「電気料金の低減」を訴える形の取り組みとなっている(※1)。政府は「エネルギー安全保障」も掲げるものの、雇用創出のために政策的支援をする側面が強く、「地球温暖化対策」の優先順位はさらに低い。

 ※1 現実にはスマートメーターを導入した結果、電力消費の計測が正確になり、電気料金が増加した例も報告されている。

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