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「診療補助者の無資格化」でコスト削減する代償

医療秘書で働く30代女性のケース

  • 小林 美希

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2010年11月15日(月)

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 「ハローワークで言われたことと話が違った。現場ではまるで、看護師のようだ」

 神保由香さん(仮名、30代)は、医療秘書になって約10年。今も戸惑いを隠せない。

 由香さんは一般事務職から転職する際に、「安定した職種でキャリアアップできる仕事を」と、ハローワークを通じて求職活動。医療事務を目指していた。すると、有名民間大病院(約700床)の「医療秘書」の募集があり、採用試験を受けることになった。

はっきりしない担当領域

 仕事の内容についてハローワークの職員に尋ねると「診察の補助みたいだけと、簡単だから大丈夫」と言われた。求人票には「カルテの処理、診察介助。資格や経験がなくても可能」と明記されていた。有名な大病院のため、就職先としての安心感があったが、実際に働き始めると「まさか、ここまで診療部分の仕事をするとは思わなかった」と、不安な毎日を過ごしている。

 配属された外科系の外来診療では、医師が処置している間や待っている間にも患者の状態が悪化していく。痙攣が止まらない、失神する、冷や汗をだらだらとかき始めるなど・・・。素人の由香さんが見ても、「これは、危ないんじゃないか」と思う。だが、医療の知識が全くない由香さんにはどうしようもない。医師の指示を待つしかないが、診察が終わって待合室にいる患者が急変して真っ先に呼ばれるのは由香さんだ。

 医療秘書ではあるが、患者から見れば看護師に見える。どうしていいか分からずに看護師を探しても、外来には看護師が配置されていないため、同じ職場で働く由香さんにとっても院内で看護師探しはひと苦労。やっとのことで看護師をつかまえて患者の状態を報告しようにも、看護師の質問が何を意図しているのか、どう答えていいかも分からない。

 「出血が多い」といっても、その程度をどう測って表現すればいいのか分からないため、「死に至るようなほどではないと思う」と答えるのが精一杯だ。処置に伴う対応などについて、病院側がきちんと教育しているわけでもなく、すべてが究極のOJT(職場内訓練)となっている。就職前に学んでいた診療報酬の保険点数の請求業務など、医療事務の知識を使う場面は全くない。

外来よりも病棟に手厚い制度

 外来に看護師が配置されていないのには、経営上の理由がある。病院の収入を医療行為などによって細かく定める診療報酬において、看護師の場合、「一般入院基本料」という部分で病棟の中で患者の人数に対して何人の看護師を配置しているかで保険点数が決まり、その点数が収入源となる。現在は、看護配置基準「7対1」(患者7人に看護師1人)が最高基準となっている。

 また、外来診療につく看護師について診療報酬で保険点数がついていないことで、経営側から見れば、病棟の看護師の配置を手厚くして保険点数を稼ぎ、外来はなるべく人件費を抑制したいということになる。多くの病院で、外来の看護師のパート化が進み、正職員の看護師は病棟に引き揚げられて「7対1」をとろうとする現象が起こっている。

 由香さんの勤める病院では、看護師のパート化を飛び越え、「診療補助者の無資格化」によって人件費を圧縮しているのだ。看護師は需給関係によって売り手市場のため、賃金だけ見れば、パートでも時給は概ね1600~2000円ほどとなり、一般的な職業より高い。

 一方で、由香さんの月給は手取り約14万円。ボーナスは出るものの、年に月給3カ月程度だ。正職員として働いているが、系列病院への転勤があるかどうかで何段階かのランクがあり、原則、転居を伴う異動のない医療秘書は最低ランクとなるため、まるで「名ばかり正社員」の状態だ。しかも、外来の診療は、医師と何の医学的知識もない医療秘書だけで行われている。

 それは、明らかに患者にも不利益をもたらす。由香さんは、日々の業務の中で必死に仕事内容や医療の知識について学ぼうと努力しているが、それにも限界がある。

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