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国債の安全神話の大転換

財政の不安を市場は意識しだした

  • 高田 創,柴崎 健

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2010年11月16日(火)

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 国債は金融商品の一種。決まった利息を払い、一定の期限の後、その元本を返済することが求められる。例えば10年国債であれば、10年のあいだ約束した利払いを続け、10年後に元本を返済する。このため政府は、発行した国債の利息を支払ったり、元本を返済する能力があるのかが問われる。仮に、その利払いや返済ができなければ、デフォルト(債務不履行)となる。

 ここで投資家が国債の返済を疑い、デフォルトの可能性を織り込むならば、国債利回りは通常以上の金利に上昇する。このような追加的に加わる利回りを、クレジットスプレッド(信用スプレッド)と言う。政府よりも信用力が低いと考えられる企業が発行する社債の場合、国債の利回りとの間でクレジットスプレッドが生じる。

 通常、国が発行する国債は最も信用度が高く、一般的に「リスクフリー」、すなわちリスクがない商品とされる。ただし、国債が大量に発行される環境では、市場参加者が特定の国の債務償還に対して不安を示す。このため、現実には国ごとに国債の利回りに格差が生じている。すなわち、各国の財政状況から見たデフォルト不安の多寡によって、クレジットスプレッドが生じる。

 実際に2010年、ユーロ圏では、ギリシャを筆頭にPIIGS諸国――ポルトガル、イタリア、アイスランド、ギリシャ、スペイン――の国債利回りは、同じユーロ通貨建てであるドイツ国債よりも大幅に高まった。

 このような状況では、国債も通常の民間社債と同列に、クレジット商品として信用度が議論される 。第二次世界大戦以降に生じた投資理論において、国債は最も安全な「リスクフリー商品」として扱われてきた。少なくとも先進国の国債については安全神話が存在すると考えられてきた。しかし、そうした投資の前提が今日、大きく変更を余儀なくされている。今年、この国債の「リスクフリー性」が問われることになったのは投資ビジネスにおける大事態と言えよう。

長期金利と財政プレミアム

 日本では1990年以降、長期の景気後退などを受けて税収が減少した。その一方、幾度かの経済対策を含めた財政拡大などの結果、国の歳出は急速に増加している。その結果、政府は歳出額と税収の差を埋めるために国債を発行してきた。景気が少しでも良くなると、財政再建の動きが強まったが、2007年を底に国債発行額は再び増加基調に転じている。こうした環境の下、市場は日本国債の信用度に不安を抱き、長期金利が底上げされる状況が生じている。

市場が意識する、日本国債に対する不安の度合い

 国債の発行額が増加すれば、デフォルトリスクが高まる危険性がある。それは、クレジットスプレッドという形で国債利回りを押し上げるはずである。そこで、日本の長期金利の形成要因を分析してみよう。財政に対する不安がどの程度、長期金利に反映されているか考えることにする。

 以下の試算では、潜在成長率、CPI(消費者物価指数)、預貸ギャップ(預金から貸し出しを引いた金額で銀行の余裕資金の量を意味する)を説明変数として日本の10年国債金利を要因分解した。一般に潜在成長率は実質金利、CPIは期待インフレ率、預貸ギャップは国債需要の強さを示す代理変数と考えられる。この前提で議論を進めると、リスクプレミアムには国債の供給量、すなわち財政リスクが内包されていると考えられる。

 2009年後半、財政を中心としたリスクプレミアムの占める割合が、1990年代以降、最大級の水準に拡大している。現在の状態はリスクの大半が財政リスクプレミアムと推測される。リスクプレミアムの寄与度が他の要因と比べて最も大きく、長期金利の押し上げ要因となっている。

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