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「辞めたい」と言う人ほど、辞めない

それは不満のガス抜き。爆発する人間は一気に行動に移す

2010年11月26日(金)

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 勤めてみたら、名ばかり外資系。女性の昇進ゼロ。男性社員の妻の90%以上が専業主婦。「しまった」と思っています。こんな職場脱出すべきか?(30代女性)

 遙から

 私がまだ社会人になりたての頃、ある劇団に所属していた。努力すれば夢は叶う、と夢を追う若者たちが大勢レッスンやバイトに励みながら演劇を志していた。私もその一人だった。

 だが、そう時間を置かずにその体制が見えてきた。小さい劇団だったが、新人の芽を伸ばす、というより、いかにトップダウンで劇団員が動くか、のほうが優先されている権威主義が充満しているように私には感じられた。そこでは私のようなはみ出たパーソナリティはなかなか順応できず、自分がトラブルメーカーになっていることに早々に気づかされた。

 たとえば、集合時間が決められると、今度は、女性リーダーが「では、女性のみ10分早めに集合」と言う。私にはその、「女だから10分早め」に納得できず、いちいち反発を覚え、結局、そこに従わず、本来の集合時間に来て、女性先輩のヒンシュクを買ったりしたものだった。権威主義に疑わず順応できる女性劇団員はそこに居場所を見つけ、私はどんどん組織で浮いていった。

 ある時、ベテラン先輩男性がボソリと劇団の暗い廊下の階段で私にこぼした。

「ここにいてもダメなことはわかっている。だが、ここを出る勇気もない。怖いんだ」。

 実際、「やめたい」とこぼす劇団員ほどずっとそこに居続け、本気で辞めることを考えて行動に移す人間は、不用意にはそういう言葉は吐かないのだ、と、私は気づいていた。

 当時の芸能界では、辞めると半年間仕事を干されるという制裁規定があった。辞めるには、半年を干されても生きられる力と、半年後もう一度挑戦して浮上できる2つの力が必要だった。

 劇団員の多くが、嘆きながらも本気で辞める勇気などないことを私は知っていた。給料日に、後輩から「1万円を貸してほしい」と頼まれ、1万円を渡した。そしてその1万円は返ってこなかった。1万円で悲喜こもごもする現実の悲哀に愛想がつきた私は、自分ひとりそこを辞めることにした。

 個人が能力を磨くべく努力すれば夢は叶う。そこには男女を問わず成功が待ち受ける。そういう職場を選んだはずだったが、現実は、日本古来の男女役割意識とお上意識に縛られたどこにでもある組織と似ていた。

 私は辞めて今に至るが、その劇団はゆるやかな沈没を始め、やがてその看板を下ろすことになった。あれほど「怖い」と言っていた劇団員たちは雲散霧消した。

「遙なるコンシェルジュ「男の悩み 女の嘆き」」のバックナンバー

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「「辞めたい」と言う人ほど、辞めない」の著者

遙 洋子

遙 洋子(はるか・ようこ)

タレント・エッセイスト

関西を中心にタレント活動を行う。東京大学大学院の上野千鶴子ゼミでフェミニズム・社会学を学び、『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』を執筆。これを機に、女性の視点で社会を読み解く記事執筆、講演などを行う。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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