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消費税率25%を受け入れるべき

財政・社会保障の再生はオバマの信念と行動力に学べ

2010年12月2日(木)

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 突然だが、米国公共放送サービス(PBS)が、「Obama’s Deal」という番組を放送した。オバマ政権が内政の重要課題としていた医療保険改革法案を可決・成立させるまでの舞台裏の一部始終を描いたドキュメンタリー番組だ。日本のNHKも「オバマの駆け引き~“医療改革”の行方~」という題名で放送した。

 番組の前半では、政治的駆け引きを行いつつ、議会での超党派合意を目指していたオバマの戦略が暗礁に乗り上げる。また、その駆け引きが明るみとなり、法案に対する国民の怒りが次第に高まっていく。後半では、このような苦境に直面しても、自らの信念に基づき、オバマ政権は再び議会に合意を呼びかける。そして、反対派も参加する公開討論などを通じて、大統領自ら法案の必要性を国民に説明しつつ、民主党政権が悲願としていた法案を成立させる。こうした政治過程を取り上げたものだ。

 この改革が中長期的に米国にとって本当によい政治的選択であったか否かについて、私に判断はできない。その成否は将来の米国国民と歴史が下すものだろう。しかし、この番組は、今の日本の政治リーダーが学ぶべき最も重要な視点を提示しているように思われる。

「政治は言葉」と言われるが、「決断」と「行動力」も同時に重要である。つまり、「本当の政治主導」とは、自らが必要と信じる最も重要な政治的課題について、政治生命をかけて、その実現を図る「意志」と「努力」にあるということだ。

 ビジネスリーダーと同様、政治リーダーも孤独である。人間は弱い。他人からの評判も気になる。だから、反対派の批判にも対応しつつ政治的前進を図ることになる。それには、強い信念が必要だ。そしてその背後には、「政治的ポーズ」や「耳学問」でなく、「課題を克服しない限り、国家の将来は危うい」という危機感と深い洞察が必須になる。

 ひるがえって、日本の政治はどうか。少子高齢化が急速に進み、閉塞感に包まれる今の日本で最も重要な課題は、「財政・社会保障の再生」であろう。

 というのは、連載の第1回「漂流する日本政治、カウントダウンが始まった財政破綻」でも説明したように、もはや日本の財政に残された時間は少ない。また、第2回「政府の借金、内国債だから問題ないは本当か?」第4回「サンデル教授に問いたい搾取の正当性」で説明したように、財政赤字=世代間問題であって、世代間格差はますます拡大しつつある。

 このため、財政の持続可能性と世代間格差の是正を同時達成する形での再生が求められている。賦課方式の社会保障(年金・医療・介護)がもたらす世代間格差は、第5回で取り上げた「事前積立」で解決できる(世代間格差を改善する仕組みを導入しないで増税すると、財政の持続可能性は高まるが世代間格差は拡大し、「老齢世代=高福祉・現役世代=高負担」となってしまう可能性がある)。

歳出の削減はもう限界

 ところで、報道によると、菅直人首相は11月27日の鳩山由紀夫前首相との会談で、「内閣支持率が1%になっても辞めない」旨の発言をしたという。この発言の真偽は定かでないが、財政・社会保障を再生させるまでは政権を投げ出さないという「意志」の表れならば、それは心強い。

 その際、「決断」と「行動力」の面では、財政・社会保障を再生するための財源問題から逃避することは許されない。今の基礎年金の国庫負担は、財投特会の積立金を特例で活用するなどして一時的に賄っているが、すでにその財源は枯渇している。また、昨今の特別会計の「事業仕分け」では、これまで埋蔵金と思われていた外為特会などの積立金が、実は「埋蔵借金」であったことなども明らかとなった。

財政赤字を無くし、社会保障費を賄うために、どれだけの増税が必要か?

 そこで、以下では、もはや支出削減が限界に達しつつあるとの前提に立ち、社会保障予算の膨張や過去の財政赤字を念頭に、大雑把だが、簡単な試算をしてみたい。

 まず、社会保障予算の膨張だ。社会保障財源のうち、社会保険料収入で不足する分は、消費税などの公費負担で賄っている。この公費負担について、厚生労働省「社会保障の給付と負担の見通し」(2006年5月)は、2011年度の40兆円から、2015年度には43兆円に増加すると予測している。この延長で、高齢化の進展を勘案して推計すると、2025年度の公費負担は54兆円、高齢化のピークに近い2055年度には71兆円にまで増加すると見込まれる。

 つまり、当面2025年度までに14兆円、ピークに近い2055年度までに31兆円増加する。これを消費税――1%=2.5兆円――に換算すると、2025年度に6%、2055年度に12%の増税に相当する。

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「消費税率25%を受け入れるべき」の著者

小黒 一正

小黒 一正(おぐろ・かずまさ)

法政大学経済学部教授

1974年生まれ。京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。大蔵省(現財務省)入省後、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。専門は公共経済学。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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