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社会経験に加えて、語学習得もできる「ギャップイヤー」の効用

「行動的な人材がいない」と嘆く企業に言いたいこと

  • 河合 江理子

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2010年12月7日(火)

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 イギリスでもアメリカでも、英語が世界の共通語であるので、一般的には外国語学習が必要不可欠ととらえていないようだ。相手が英語を話すのだから、わざわざ相手の言葉を学ぶ必要がないと考えている人も多いのは否めない。この結果として、全体として見れば、アメリカ人やイギリス人の外国語能力はあまり高くない。

 アメリカのような大きな国では、そもそもアメリカから出る必要がなく、海外旅行に興味を持つ人も少ないのではないのだろうか。例えば、前アラスカ州知事のサラ・ペイリン女史。共和党から副大統領として立候補する数年前に初めて海外に行くためにパスポートを取ったという。私にとってはかなり象徴的な出来事であった。

大学入学前の1年を社会経験に当てる

 一方、イギリスでは、高校を卒業してから大学に入学する前の1年間程度を休学し、学生生活では得られない社会経験を積む「ギャップイヤー」という習慣がある。この機会に海外旅行をして、英語以外の言語を学ぶ人が少なからずいる。言葉だけではなく、ほかの国の風習や美術など広い意味の文化を知る機会ともなっている。

 18世紀頃、イギリスの上流階級の子弟の間では、「グランドツアー」という留学の習慣があった。ヨーロッパ文化の辺境であるイギリスから、古代からの芸術の都があるフランスやイタリアなどを旅行し、歴史や芸術、食事、教養を学んでくるのが目的である。イギリスにカントリーハウスがイタリアにある邸宅(パラッチオ)を模倣して作られているのは、その名残である。古くからのグランドツアーの習慣が、今はギャップイヤーという形になっているのかもしれない。

 最近のギャップイヤーでは、単なる海外旅行だけではなく、ボランティア活動も盛んになっている。アフリカの貧しい国などで援助活動に取り組みたいと考えている学生が、大勢いる。あまりにも希望人数が多いため、「ボランティア学生の受け入れ先が足りない」とイギリスでギャップイヤーの学生を対象とする旅行会社の運営者が嘆いていたほどだ。

 ビジネススクール時代の友人であるイギリス人は、ギャップイヤーを利用して、英オックスフォード大学に入学する前にパリの料理学校(ル・コルドン・ブルー)で料理を1年間習い、ついでにフランス語も完全にマスターしたという。料理が好きで、時間があれば学生時代は手料理をご馳走してくれた。ちなみに、その友人は男性であり、今は投資銀行のゴールドマンサックスのパートナーをしている。

 イギリスの元首相であるトニー・ブレア氏もギャップイヤーの時に、ロックバンドのプロモーターをしたと伝記に書いてあるが、噂ではフランスのカフェでウエイターとしても働いていたらしい。それでフランス語がうまいと聞いた。事の真偽はともかく、ギャップイヤーは外国語を習得する場としてイギリス人の間ではとらえられていると言えるだろう。

 もちろん、ギャップイヤーを、語学習得ではなく、将来の就職に備える学生もいる。例えば、ロンドンのシティーにある投資銀行でトレーニー(研修生)として経験を積むといった過ごし方だ。こういう学生は、私の見る限り、親のコネで働いている場合が多かった。

 私が勤めていた銀行でも、17~18歳のパブリックスクール(イギリスの有名私立校)を卒業した高校生たちが立派なスーツを着て仕事に来ていた。丁稚というか、雑用係であるがとても礼儀正しくしっかりしている。表計算ソフト「Excel(エクセル)」を使ったデータ作成などの作業を、安心して任せることができた。

 ギャップイヤーの間に銀行で働いた結果、「自分にこの仕事は向いていない」と感じて、ほかの可能性を探る人も多い。夏休みにサマートレーニーというアルバイトする学生もいる。これに対して、日本の大学生を見てみると、アルバイト先が家庭教師やコンビニエンスストアの店員など、限られているようだ。仕事に対して、様々な経験や知識がないうちに就職を決めなければならないのは気の毒だと思う。

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