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映画「インサイド・ジョブ」の衝撃(ただし、日本公開未定)

誰が世界金融危機を作ったのか?《一部ネタバレあり》

2010年12月20日(月)

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 日本の現政権下では骨抜きになりつつある「天下り規制」。ここアメリカではどこが“天”か分からないほど、政・財・官・学の間を人がよく動く。いわゆる回転ドア(リボルビング・ドア)だ。

 アメリカの回転ドアシステムの弊害を鋭く暴くドキュメンタリー映画「Inside Job(インサイド・ジョブ)」(日本公開は未定)が話題を集めている。アメリカでの公開は2010年10月8日。今年度のアカデミー賞ドキュメンタリー部門候補との呼び声も高い。

 監督はリチャード・ファーガソン。米MIT(マサチューセッツ工科大学)で博士号を取得した後、政府でコンサルタントを務め、後に事業を起こし経済的に成功した人物である。政治・政府・民間をバランスよく知り尽くした異色の監督だ。

 さらに、登場人物が凄い。実際のインタビューに答えるのが、著名投資家のジョージ・ソロス氏、IMF(国際通貨基金)のドミニク・ストロス・カーン専務理事、シンガポールのリー・シェンロン首相、フランスのクリスティーヌ・ラガルド蔵相、米ジョージ・W・ブッシュ政権の大統領経済諮問委員会議長で現在は米コロンビア大学ビジネススクールのグレン・ハバード学長、米ロナルド・レーガン政権の主席経済顧問であった米ハーバード大学のマーティン・フェルドスタイン教授、金融危機を唯一予言したと言われる米ニューヨーク大学のヌリエル・ルービニ教授、FRB(米連邦準備制度理事会)の元議長であるポール・ボルカー氏、ニューヨーク州の元知事であるエリオット・スピッツァー氏など。

 そのほか、映像では元米財務長官のペンリー・ポールソン氏、元FRB議長のアラン・グリーンスパン氏、元リーマン・ブラザーズCEO(最高経営責任者)のリチャード・ファルド氏らが登場。ナレーションはアカデミー俳優のマット・デイモン氏である。

 ちなみに日本から誰も取材されていなかった。金融危機直後最も株価とGDP(国内総生産)が急減した国であるのに・・・。

国家的ねずみ講を暴く!

 インサイド・ジョブとは、「内部者の犯罪」を意味する。2008年9月のリーマンショックが引き金となった世界金融危機は、その内部にいたものが人工的に作り出した、と示唆しているわけだ。

 映画の中で、英大手紙「フィナンシャル・タイムズ(FT)」の名物論説委員マーティン・ウルフ氏が、「アメリカの金融は、国による“ねずみ講”だ」と一言で斬っている。これが映画のエッセンスである。

 その後始末は、金融長者ではなく、社会の底辺であえぐ世界中の人たちによって負担される。中国規制当局者は「冷戦時代に大量破壊兵器開発に携わっていたエンジニアが、冷戦後は金融市場で大量破壊兵器を開発してきた」と辛らつだ。金融危機を作り出した張本人たちは、お縄になるどころが、再びその力を増している。これが“あらすじ”である。

 「アメリカは成功者を賞賛し、日本は妬む社会だ」とよく言われるが、ことはそう簡単ではない。その過程がフェアかどうかを大いに議論する。

 最初に断っておくが、私はこの映画を絶対的におススメするが、その内容には全面的に賛同しない。この映画には私の知人もたくさん出てくる。私は彼らから、この映画の取材のアプローチの仕方と実際のインタビュー内容の相違など、制作の姿勢に非常に問題があった様子も聞いている。短絡的で感情的な分析や一方的な証拠集めも気になる。今や隆盛を取り戻したシンガポールが、いまだに金融危機の衝撃で開発が止まったように編集されているなど、情報が古い点もある。また名優マット・デイモン氏がナレーターを務めるが、彼の物言いが説得力あり過ぎな点も、割り引かなくてならない。

 日本で公開予定が現時点ではないのでネタバレにならないと思うが、逆にここでのネタバレもどきが「日本公開につながってほしい!」との思いを込めて、内容を少し紹介したい。

 映画は、国際金融に翻弄された小国アイスランドの惨劇から始まる。金融危機前、代替エネルギー投資などにいち早く取り組んだアイスランドは、1人当たりGDPは世界トップレベルとなっていた。最盛期には小国アイルランドの銀行はGDPの6倍を超えるレベルまで借り入れを増やした。

 その後の金融危機で、銀行だけでなく、国ごとが窮地に陥った。そして最後はそのアイスランドへ投資が集まるアイスランドを安易に賞賛した学者たちを暗に糾弾していくシーンで終わっていく。

パンドラの箱を開けたレーガン

 映画は「なぜ危機の前兆は作られ」「危機はどうして起こり」「これからどうなるか?」とのエピソードに分かれている。物語は金融サービスが製造業など“実業へのサポート産業”として細々と規律を持って行なわれていた時代から始まる。初期の投資銀行は、自己責任で投資を取り仕切る少数のパートナーたちから成り、今や世界36カ国に6万人を超える社員を誇るモルガン・スタンレーでも100人ほどしか従業員がいなかった。

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「映画「インサイド・ジョブ」の衝撃(ただし、日本公開未定)」の著者

田村 耕太郎

田村 耕太郎(たむら・こうたろう)

前参議院議員

早稲田大学卒業、慶応大学大学院修了(MBA取得)、米デューク大学ロースクール修了(証券規制・会社法専攻)(法学修士号取得)、エール大学大学院修了(国際経済学科及び開発経済学科)経済学修士号。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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