インターネットの利用者なら誰もが見たことがあると思われる百科事典サイト「ウィキペディア(Wikipedia)」。これについて「略称として『ウィキ』という表現を遣うことはけしからん」、「どうしてウィキペディアを『ウィキ』と略したらダメなの?」という論争があることをご存じでしょうか。多くの場合、ネットの技術動向に詳しい人と、そうでない人との間で起こる論争のようです。
この種の論争は、一般利用者の間でウィキペディアの認知度が高まるのとともに、発生しました。2007年4月1日には、ウィキペディア(日本語版)に「Wikiって略すな」という項目が登場したこともあるほどです。通常このような項目はウィキペディアに投稿される項目としてはふさわしくないのですが、ネット技術に詳しい人たちの思いが、どれだけ強いのかを代弁するような出来事になったのです。
今回は「どうしてこのような論争が起こるのか」について考えてみたいと思います。
ウィキペディアが一般社会に浸透した10年
ユーザー参加型の百科事典である「ウィキペディア」は、設立からまだ10年もたたない新しいプロジェクトです。「ネット上の不特定多数が編集作業に参加でき、寄付により運営を行う百科事典」という画期的な方式を採用しました。英語版サイトが始まったのが2001年5月1日のこと。運営主体は2003年8月に設立されたウィキメディア財団です。いっぽう日本語版は、英語版の設立から間もない2001年5月に始まりました。
ウィキペディアの項目「ウィキペディア日本語版」によれば「2003年から2004年にかけて幾つかのマスメディアで取り上げられたことがきっかけとなって認知されはじめた」とあります。筆者が新聞データベースを確認したところ、確かに当時の新聞がウィキペディアのことを取り上げていました(読売新聞2003年9月2日「オンライン百科事典の日本語版 あなたも共同執筆者に 知識寄せ合い日々成長」など)。
もっとも一般利用者がウィキペディアの姿を目にするようになったのは、グーグルなどの検索サービスで何か調べ物をした際に、検索結果の上位にウィキペディアの項目が表示されるようになってからだと思われます。前述した項目「ウィキペディア日本語版」でも、2005年以降に一般市民への認知が進んだと指摘しています。
「略語としてのウィキ」の登場
一般への認知が進む過程で登場した論争が「ウィキペディアを『ウィキ』と略してよいかどうか」という問題でした。
言葉の世界では、長い単語について省略した呼び方をつくるのが普通です。その際、語頭だけを残してその後を省略するやり方が、もっとも一般的とされます。
例えば「若者語を科学する」(米川明彦著・明治書院・1998年3月)によれば、「現代用語の基礎知識」の1980年版から1993年版にかけて登場する「若者用語の略語」のうち約4割が、語頭だけを残す省略方法だったといいます。これは幾つかある省略方法のうち、もっとも多い割合でした。
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