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世代間公平基本法を制定し、世代間格差改善を

政治的に中立な機関を活用する

2011年1月6日(木)

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 前回のコラムまで、「財政赤字・賦課方式の社会保障=世代間問題」であることを見てきた。一般的に、予算編成は政治過程そのものだ。だから、財政赤字は政治の影響を受けて拡大しやすいことが知られている。

財政赤字は政治の影響を強く受ける

 財政赤字が政治的に発生するメカニズムとして、政治経済学では、(1) 政治的景気循環(Political Business Cycle)、(2) 政治家の戦略的動機、(3) 共有資源問題(Common Pool Problem)などが考えられている。このうち、財政赤字が発生する原因として最も有力な説は、「共有資源問題」である。一般的に「共有資源問題」とは、共有の資源は私有の資源と比べて過剰に利用されやすい現象をいう。その最悪のケースとして発生する「共有地の悲劇」は、多数の者が共有資源を乱獲することで、資源そのものの枯渇を招いてしまう現象を指す。非常に有名な説だ。

 財政の場合、その移転政策は基本的にゼロサム的性質を持つ。財政支出の拡大は最終的に誰か(将来世代も含む)の負担になる。だが、個々の主体の給付と負担は必ずしも明確にリンクしているわけでなく、負担についての感覚は希薄になりやすい。このため、財政支出を拡大させる政治的要求が高まり、財政赤字が拡大する現象が頻繁に発生する。この行き着く果てが「財政破綻」である。それは財政版「共有地の悲劇」にほかならない。

 なお、政治的景気循環とは、経済が政治に攪乱される現象をいう。例えば、政治家が選挙前に有権者の票を「買う」ため、財政赤字の拡大を顧みず財政支出増や減税を約束することがこれに当たる。また、戦略的動機とは、政権交代リスクに直面している政党が、政権交代後におけるライバル政党の財政的自由度を縛るため、財政赤字を拡大させる誘因をいう。

政治的中立性を持つ財政政策の専門機関が欧州で盛り上がる

 いずれにせよ、政治は、財政赤字を拡大させる強い圧力を持つ。本来、「財務省をはじめとする財政当局が本当に強い権限を持っていたら、ここまで財政は悪化しなかった」という可能性を指摘する研究もある(von Hagen 1992)。

 なので、この政治的圧力を制御することを目的として、90年代の欧米を中心に、「財政政策ルール」を設定することが流行した(財政政策の脱政治化)。この試みは、カナダやオーストラリアの財政再建をはじめ、いくつかの国々で成功を収めてきた。

 図表の横軸は「財政ルール指数」でこの値が高いほど財政政策ルールが厳格かつ透明であることを意味する。縦軸は公的債務(対GDP)を表す。この図表から明らかなように、財政ルール指数が高い国々の公的債務(対GDP)はそうでない国々よりも低い傾向にあることが読み取れる。

 だが、財政政策の運営は、先般の欧州財政危機で明らかになったように、経済変動の見通しとも密接に絡んでおり、単純な財政政策ルールで拘束することはなかなか難しい。一方、あまりに弾力的かつ緩いルールを設定すると、財政赤字に対する政治的圧力を制御する目的を達成できないというジレンマが存在する。

 このため、2000年代以降では、このような問題を克服するため、欧州を中心に、高い専門性と分析力を持つ「財政政策機関」を設置するべきとの議論が盛り上がっている。これら機関には一定の政治的独立性を付与し、(1)予算の前提となる経済見通しの作成、(2)中長期の財政推計、(3)財政政策にかかわる政策評価などを担わす想定だ。オランダでは「経済政策分析局」、イギリスでは「財政責任局」が存在しこのような役割を担っている。

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「世代間公平基本法を制定し、世代間格差改善を」の著者

小黒 一正

小黒 一正(おぐろ・かずまさ)

法政大学経済学部教授

1974年生まれ。京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。大蔵省(現財務省)入省後、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。専門は公共経済学。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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