• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

2011年、外交ゲームの達人ロシアとどう付き合うべきか

『強権と不安の超大国・ロシア』『コーカサス―国際関係の十字路』の廣瀬陽子・慶応義塾大学准教授に聞く

  • 芹沢 一也

バックナンバー

2011年1月4日(火)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

昨年、中国と並んで日本を振り回したロシア。2010年11月1日、ロシアのメドヴェージェフ大統領の国後島電撃訪問が日本を驚かせたことは記憶に新しい。政府はこの責任を取らせる形で2011年1月にも河野雅治駐ロシア大使を事実上更迭する。ロシアは今、日本をどう見て、どう動こうとしているのか。外交のプロですらつかみにくいこの国を理解するカギを、国際政治の専門家、廣瀬陽子さんに聞いた。

―― まず、我々が「ロシア」という国をどういうイメージで捉えればよいか、端的に教えていただけますか?

廣瀬陽子 ひろせ・ようこ
 1972年東京都生まれ。慶応義塾大学総合政策学部准教授。大学入学直後にゴルバチョフ氏の講演を聞き、握手したことがこの分野を目指すきっかけとなった。専門は国際政治、コーカサスを中心とした旧ソ連地域研究。主な著作に『旧ソ連地域と紛争―石油・民族・テロをめぐる地政学』(慶應義塾大学出版会)、『強権と不安の超大国・ロシア―旧ソ連諸国から見た「光と影」』(光文社新書)など。
(写真・大槻純一)

廣瀬 ロシアは外交がとても上手。つねに外交カードを握っていて、その切り時をじっくり見ている国です。

 たとえば旧ソ連諸国に対しては経済、政治、民族紛争、エネルギーと4枚のカードをもっていて、状況に合わせてもっとも効果的に使い分けています。日本に対してですと、北方領土や資源が外交カードですね。それをいつ切るのが最も効果的か、ずっと考えている。

 ロシアの外交カードの切り方は極めて巧妙です。というのも、カードを切るということは、相手国に対して敵対的になる、つまり敵をつくるわけですよね。そしてロシアは基本的に、複数の敵を同時につくらない傾向があります。昨年末、メドヴェージェフ大統領が北方領土を訪れましたが、背景には欧米、そして中国との関係がうまくいっていて、周りに敵がいない状態だったということもあります。日本に対し、真正面からカードを切れる状況になっていたわけですね。

―― なるほど、ロシアと日本の関係を理解したいならば、まずロシアと欧米、そして中国との関係がどうなっているのかをを踏まえる必要がある、ということですね。

コーカサス―国際関係の十字路』(集英社新書)【2009年アジア・太平洋賞特別賞受賞】

廣瀬 そうです。オバマが米国大統領になり、「リセット」を宣言してから、米露は急速に接近しています。核軍縮、欧州MD(ミサイル防衛)の問題、イラン制裁へのロシアの協力、NATO(北大西洋条約機構)の東方拡大の停止など、両国間の懸念がどんどん解消されています。2010年11月19~20日に開催されたNATOリスボンサミットには、ロシアのメドヴェージェフ大統領の出席も実現し、欧州MDとの協力に合意しました。

 ただ、実際のところはどれも微妙なところがあります。たしかに条約では核軍縮を謳っているのですが、実態をみると、倉庫に保管されている核弾頭については明記されておらず、事実上、無制限に持っていてもよかったりします。また、明記されている核弾頭の数ですと、アメリカは少し減らさなければいけないのですが、むしろロシアは増やせるぐらいなんですよね。アメリカの核兵器について研究している研究所なんかは「まったく意味がない」といわんばかりの結論を出しています。

ウィキリークス流出事件はNATOへの不信感をもたらした

廣瀬 また、NATOは拡大をやめたと言い、メドヴェージェフもサミットに出席して「欧州MDに協力します」といっているわけですけれども、ここにもいろいろと含みがあります。チェコとポーランドで予定されていた大規模な設置型MDは中止したんですが、可動式のものや、艦隊に搭載するようなタイプのものについては、ポーランドとルーマニアに設置することになってしまっているんですよね。

 それについて、クリントン国務長官はイラン向けだと説明をしていますが、以前もロシアにも攻撃できるタイプであったにもかかわらず、イラン向けと説明していた経緯から考えるとしこりは解消されずに残りそうです。そこでリスボンサミットでロシアは「対等な立場での協力でなければ、欧州MDに一切応じない」としつこく主張していました。今後の協力について、外交カードをロシアが1枚握った、という感じだと思います。

―― 腹に一物もちながらも、表面的には平和にやっていこうみたいな感じですね。

廣瀬 そうですね。表面的には平和にやっているけれども、ロシアはMD問題とエネルギーで切れるカードがありますよということを暗に示しているかたちです。しかし、現実にはMDでの協力はかなり難しいと言えます。ロシアは難しいと思っているからこそ、NATO側が受け入れにくい条件をつきつけている部分もあると思いますよ。

 加えて、11月末のウィキリークス流出事件で、2010年1月に、NATOはポーランドがロシアの攻撃を受けた際に、同国を守るという秘密の防衛計画を、バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)にも適用する計画を決定していたという情報が漏えいし、ロシアはNATOへの不信感を強めています。

コメント10件コメント/レビュー

「ロシアはNATOへの不信感を強めている」には異議を申し上げます。NATOの中心メンバーの一つ、フランスがロシアに最新鋭強襲揚陸艦「ミストラル」級2隻を輸出しているからです。しかも配備先は北方領土。全くフランスをはじめ武器輸出国家は勝手なものです。目先の金のためなら、自由主義国家の安全など他人事なのですから。さすが死の商人フランス。日本も武器輸出禁止の鎖を解き放って、見習わないといけませんね(苦笑)(2011/01/06)

「脱・幼稚者で行こう!」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

「ロシアはNATOへの不信感を強めている」には異議を申し上げます。NATOの中心メンバーの一つ、フランスがロシアに最新鋭強襲揚陸艦「ミストラル」級2隻を輸出しているからです。しかも配備先は北方領土。全くフランスをはじめ武器輸出国家は勝手なものです。目先の金のためなら、自由主義国家の安全など他人事なのですから。さすが死の商人フランス。日本も武器輸出禁止の鎖を解き放って、見習わないといけませんね(苦笑)(2011/01/06)

ロシア外交への洞察を興味深く拝見しました。ロシアはポーランドに対しては関係改善を図ろうとしているようですが、バックにはポーランド国民のロシアに対する根強い怨念、反感があると思います。日本にも同様な強い怨念、反感を持つ当然の理由があると思います。参戦の仕方、軍の暴虐、多くの犠牲者が出た不当極まりないシベリア抑留、などです。北方領土に対する態度は、帝政ロシア以来の領土に対する強欲がソ連を経て今のロシアにも脈々と流れているのでしょう。今の世界では、パレスチナに対するイスラエル、尖閣・南沙諸島に対する中国、と対比されましょう。大戦後のヨーロッパ側では東欧を衛星国家にしましたが、今は離反され、結局ロシアとしての領土拡張はしていないのに、アジア側の北方領土は我がものにしようとしています。国民のこうした強い不信・反感がある、それをバックに日本は強い態度で対ロ外交をすべきで、それをロシアに気付かせなければならないのではないでしょうか。(2011/01/05)

日米安保のある中で戦略的要衝の北方領土をロシアが返還するというのはまず考えられない。返還すれば海峡封鎖に穴が開いてしまうし歴史的に軍事偏重、領土拡大主義の国でまず無理だろう。せめて北海道まで侵食されないよう、交流無き良からぬ隣人として最低限のつきあい(エネルギー輸入など)にとどめ、領土問題は進展しないまま何世代にも渡っていく現状が続く気がする。(2011/01/05)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

「タイム・トゥ・マーケット」で売らないともうからない。

栗山 年弘 アルプス電気社長