• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

アジアにおける米中の覇権競争をどう生き抜くのか?

動的防衛力の実現方法を示せ

  • 川上 高司

バックナンバー

2011年1月5日(水)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 菅直人内閣が12月17日、新防衛大綱を閣議決定した。日本の安全保障政策の中期(5~10年)の指針である。

 このコラムでは、外交官や自衛隊のOB、国際政治学者などの専門家に新大綱を評価していただく。日本を取り巻く安全保障環境にかんがみて、新大綱は適切な指針なのか? どこが優れているのか? 何が課題なのか?

 専門家らは既に、「あるべき防衛大綱」の「私案」を明らかにしている。特集「私が考える新防衛大綱」も併せてお読みください。

 第5回の著者は、拓殖大学教授の川上高司氏。

基盤的防衛力構想から動的抑止力へ

 今回の新防衛大綱の大きな注目点は、「基盤的防衛力構想」から「動的防衛力」への転換である。冷戦中の1976年に「51大綱」(本誌注:昭和51年=1976年に閣議決定された防衛大綱)で策定された基盤的防衛力構想は、必要最小限の自衛隊を全国に均等に配置しておく構想であり、時代遅れとなっていた。

 もっとも、2004年策定の「16大綱」は、テロやゲリラなどを念頭に、日本の防衛方針を「新たな脅威や多様な事態に実効的に対応する」とし、「基盤的防衛力構想」からの脱却に踏み切っていた。しかし、実態としては、対ソ連防衛体制のままであった。戦車の整備目標を約600両とし、北海道に戦車を重点配備する、などとしていた。これは、中国に誤解を与えないようにしたためだと言われていた。

 今回の新防衛大綱は、脅威が多様化した国際情勢の変化に応じて定めたものである。なかでも尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件における中国の強硬な姿勢、さらに中国が尖閣諸島を核心的利益と明言したことは日本を震撼させるものであった。そのために、新大綱は中国を「地域・国際社会の懸念事項」とはっきり明言し、島嶼防衛を最重要課題の一つと位置づけた。これは意義深いことである。また、そのため、日本の防衛戦略を大きく転換するとともに、部隊の配置や装備も含め、効率的な防衛力をつくることとしたのも大きな前進である。

米国による対中強硬戦略へのシフトも、「動的防衛力構想」の背景にある

 「動的防衛力構想」に転換した背景の一つに、オバマ政権の対中戦略の転換がある。ワシントンでは、2009年半ばあたりから「新たに強引に台頭する中国(Newly emerging “assertive” China)」に対する懸念の声が高まり、オバマ政権は対中強硬政策に徐々に舵を切り始めていた。オバマ政権は、その前半において、「G2体制(米中共同覇権)」の確立を目指す(パーグステン米国際経済研究所所長)、と言うほどまで中国との協調路線を取っていた。そのため、日米同盟は共通脅威を見失い希薄化した(ローレス元国防副次官)。一方、日本も「米中の等距離外交を目指す」(鳩山前首相)との方針で中国に接近していた。

 ところが、米国は次第に「中国は南シナ海での軍事プレゼンスを高め続け、米軍の海上と航空活動への対応を強めている」(シェア国防次官補代理)と警鐘を鳴らし始めた。それに対して、中国は「南シナ海は中国の核心的利益である」と正式に表明した。ここに来て、オバマ政権は、「米国は航海の自由(freedom of navigation)を脅かす行為に断固反対する」(ゲーツ国防長官、クリントン国務長官)と政策を強硬路線へと転換し始めたのである。

 そしてオバマ政権は2010年2月に国防戦略(QDR)を発表して対中ヘッジ(Hedge)政策への転換を明確化した。QDRは、中国がA2AD(Anti-Access/Area Denial、領海拒否・領域拒否)戦略を取りつつあるために、「第一島嶼線」から「第二島嶼線」にかけての米国の制空・制海権が脆弱になっている、と指摘した。

 A2ADは、中国の戦略的防衛態勢に関する戦略。弾道・巡航ミサイルや潜水艦の能力を向上させることで、中国にとって「聖域」である大陸から約1500マイルまでの海域に対する米軍のアクセスを遠ざける狙いを持つ。第1島嶼線は東シナ海から台湾を経て南シナ海にかかるラインのこと。第2島嶼線は、伊豆諸島からグアムを経てパプアニューギニアまで至るラインを指す。

 特に2006年10月の出来事が米国に危機感を持たせている。このとき、中国のソン級潜水艦が、米空母キティーホークを魚雷射程内に収める近傍に浮上した。中国の潜水艦の活動が東シナ海で活発になれば、有事の際、米空母は台湾海峡、そればかりか日本への接近も阻まれることとなる。これに対して米国は空軍と海軍の持つ陸海空・宇宙・サイバー領域の全能力を活用するエア・シー・バトル戦略で対処し中国をヘッジすることを決めた。

コメント3

「採点! 新防衛大網~これで日本を守れるか?」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

短期保有者のいいようにさせたら、中長期で保有したいと考えている株主はどうなるのか。

貝沼 由久 ミネベアミツミ社長