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新防衛大綱では我が国を守れない

「脅威対抗型」へ発想の転換が必要

2011年1月7日(金)

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 2010年12月17日に、「平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」、いわゆる新防衛大綱が閣議決定された。

 防衛大綱は、「何のために、どのような理由で、どれくらいの防衛力を整備するのか」その根拠を示す文書である。

 また防衛力とは、武力による侵略や攻撃がなされるという「最悪の事態」に対して、「国の安全保障を最終的に担保するもの」である。われわれ国民の生命と財産を、最終手段として守ってくれる力、それが「防衛力」の一般的な定義である。
「防衛」という国家のサービスを享受する国民の一人として、新防衛大綱が定める防衛力では、将来のわが国の防衛、われわれ国民の安全を考えたとき、極めて不安だ。そして、こうした国家のサービスのために税金を納めている国民の一人として大いに不満である。

すべてのセキュリティ対策は「脅威の評価」から始まる

 筆者は、国際政治アナリストとして仕事するかたわら、英国の危機管理会社で、欧米系の元軍人たちとともに、リスク・マネージメントやセキュリティの仕事にも携わってきた。海外の危険な地域で事業を行う日本企業に対し、安全対策としてさまざまなセキュリティ・サービスを提供する仕事である。民間のセキュリティの世界で「安全」を提供するサービスをセールスする際に、何よりも重要な点は、「脅威の分析」である。クライアントの会社の社員や彼らが手がけるプロジェクトに対して、どのような脅威が存在するのかについて具体的に詳細な説明をする。すべてはそこから始められなければならない。

 なぜなら、「脅威がないのであればセキュリティはいらない」という話になり、そこで商談は終わりになるからだ。もしくは、「具体的な脅威を説明できないのに、何でその警護サービスの提案が出てくるのだ?」と問い詰められ、「そんな根拠のないサービスのためにお金は払えない」と言われるのがおちだ。

 例えばクライアントがイラクで石油開発のプロジェクトを手がけているとしよう。

 このプロジェクトにおけるクライアントに対する脅威は、(1)イラク国内で移動中に爆弾テロなどにあう、(2)滞在先の施設にテロや迫撃砲などによる攻撃がある、(3)油田周辺に不発弾や地雷がある可能性がある、などが想定される。テロリストの能力や過去の事案、最近のテロの傾向、過去の戦闘のデータや地雷や不発弾の分布状況、過去の事故などを調べ、脅威を評価する。それを基にプロジェクトの脆弱性を調べ、想定される脅威を詳細かつ包括的に分析していく。

 そしてそれぞれの脅威に対して、クライアントを守るためにどのような対策を講じることができるのか、その解決策を提示する。例えば(1)の「移動中の爆弾テロの脅威」に対しては、「防護車両と身辺警護チームによる身辺警護サービス」を提案するといった具合だ。

 プロジェクトの脆弱性を詳細に分析していけば、際限なくさまざまな脅威やリスクが想定される。しかし、プロジェクトの予算は当然、限られているだろうから、優先順位をつけて対策を立てる脅威を絞り込むことになる。そして脅威の量的な評価、すなわちどれくらいの人を警護するのか、どれくらいの範囲を守るのかといった具体的な見積もりから、警護チームの人数を決め、敵対勢力の能力(武装レベル)に応じた装備類を用意する。

 危機管理会社は、このような手順を通じてクライアントに対して必要なセキュリティ・サービスを提案する。一方、クライアントは「想定される脅威」と「提供されるセキュリティ・サービス」によるメリットを比較しながら、必要なサービスを購入することになる。

 民間のセキュリティ・サービスと比べ、国家の安全保障政策はこれほど単純にはいかない。だが、少なくとも整備する防衛力の根拠となる「脅威の評価」は、国民が納得のいくよう詳細に説明するべきであろう。

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「新防衛大綱では我が国を守れない」の著者

菅原 出

菅原 出(すがわら・いずる)

ジャーナリスト/国際政治アナリスト

アムステルダム大学政治社会学部国際関係学科卒。在蘭日系企業勤務、ジャーナリスト、東京財団リサーチフェロー、英国危機管理会社役員などを経て、現在、国際政治アナリスト

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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