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雇用を生み出せない農村に救いの手はあるか

農業に携わる30代男性のケース

  • 小林 美希

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2011年1月11日(火)

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 「農業は好きだけど、会社という意識が低すぎる・・・」

 首都圏出身の小玉祐樹さん(仮名、30代後半)は、フリーターから農業へと一念発起したが、前途多難だ。

 30歳を過ぎた頃から機会を見つけては農業研修に参加しながら、農業の経験を積み重ねた。周囲に田畑しかないような地域での農業も体験した。30代半ばで農業大学校に入学。農業大学校は全国で47校あり、授業料は年間でも十数万円。他の経費を含めても30万円程度と負担が軽く、祐樹さんは入学を決めた。寮もあり、寮生活を送りながら1年制課程のコースで学んだ。

 卒業後、ハローワークに通い首都圏での職を探した。最初はイタリアンレストラン向けの野菜を作る農家で働き始めた。月給20万円。「正式なスタッフ」とされたが、社会保険は未加入だった。朝6時頃から夜9時頃まで働いた。1日15時間労働という日々が続くが、「残業代」という概念はない。出荷が1年365日切れ目なく、日曜日も交代で勤務。休暇は月3日程度しか取れず、正月も元日しか休めなかった。

 遊びに行く暇もなければ、自分で好きな農作物を作る余裕も全くない。「これでは、何のために働いているか分からない」。そんなジレンマを抱き始め、1年あまりで転職を決めた。

アルバイトが1日と持たない激務

 祐樹さんは、「自分は、職業農業人になりたい。いつか自営で農業ができるようになった時、物流などで有利な首都圏を離れないほうがいいのではないか」と考え、再び職探しを始めた。人手不足の農業分野と言えども、「正社員」の求人や首都圏での募集はイメージするような引く手あまたというわけではなかった。

 神奈川県で見つけた仕事は、アルバイトだと時給650円からのスタート。経験のある祐樹さんは時給800円で雇われたが、ほぼ家族経営の職場ではパワーハラスメントが横行していた。ボーナスも社長の気分次第で、出るか出ないかが決まる。数カ月で辞めた。

 その後、何度もハローワークに足を運ぶと、いつも同じような法人や農家の求人がある。「前の職場もまた求人が出ている。いつも求人の出ているところは、何かしら経営者に問題がある」と悟った。そのうち、茨城県の農業法人に仕事が決まった。社長とその妻など家族3人のほか、スタッフが6人。うち3人は外国人研修生だった。

 冬場はキャベツや白菜など露地野菜を中心に作っている。フルタイムの仕事だが、社会保険はない。時給制で時給1000円。月18万~20万円になるが、雨がひどい日は休みとなるため、その分の賃金は出ない。朝7時30分頃から夕方暗くなるまでが勤務時間。1日に1000~2000ケースは出荷する。祐樹さんは以前も大型農家でキャベツやレタスなどの収穫・出荷の経験があったが「その時はもっと多い人数で1日250ケースの出荷だった」と作業内容の厳しさを感じた。

 繁忙期に臨時でアルバイトを雇っても、あまりの激務で1日と持たずに出勤しなくなる人が多いという。祐樹さん自身、働きすぎで腕が上がらなくなったり腰痛になったりもするが、それでも「前の会社に比べ、今度は勤務と勤務の間が12時間は空いているし、日曜日は必ず休めるからいい」と言う。

 そうした激務について、農業を本格的に目指す以上は覚悟のうえだった祐樹さんだが、労働条件面で疑問を感じ始めた。祐樹さんは賃金の額面に不満を感じていたわけではない。ただ、入社当初は家賃補助が家賃の半分(2万3000円)支給されていたのに、ある月、何の前触れもなく2万円に減額されていた。社長に尋ねると「あ、今月から2万円になったから」と軽い一言。祐樹さんは「これでは信用して長く勤められない」と不安が募っている。

 栃木県で独立した農業を目指す平林康弘さん(仮名、30代後半)は「農業だけで食べていくのは難しい」と痛感している。康弘さんも前述の祐樹さんと同様、就職氷河期の煽りを受けて“フリーター”生活を余儀なくされていたが、それにピリオドを打ち、農業で身を立てようと決意していた。

 農業研修などを通して一通りの農作物を育てる技術を身につけ、農家や地方での人付き合いにも自然に溶け込めるようになった。ただ、就職先を探そうにも、「社会保険にきちんと加入しているような農業法人は滅多にない。農業法人に就職できても、同族経営で労働基準法なんてまるで無視の世界」と感じていた。

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